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二百六十五A生目 両性

 ここはスタジオ内。

 普段は配信している場所。

 そのためエリアとしては少し広い。


 あくまで屋内ではという注釈がつくけれど。


「やあああー!」


 VVがバリバリと雷撃を放ちながら飛んでいく。

 浮いているから足元に電磁力を増せば急加速する。

 そのまま両性の神へ接近して。


「遅いワァ」


「ぐっ!」


 VVが拳を振り込む前に両性の神が腕のような何かを放つ。

 腕そのものではない。

 蛇のようなものだし。


 その代わり肉体が変化した。

 突如腕のようなものが生えてVVを吹き飛ばす。

 いや正確にははじめからそれは生えている。


「まったく、早いだけでは当たらないのに!」


 男側は口を開きながらそう言う。

 そう……舌だ。

 彼らの口内から巨大な拳舌が飛び出しVVをぶん殴る。


 不意打ちをくらい再度くらい。

 今食らってやっと正体がつかめた。

 なんとか片腕でガードして壁に電磁浮遊し叩き付けられるのを防ぐ。


「思ったより、厄介じゃん……」


 ヘビ人間風という見た目と違って戦闘スタイルは思いっきり物理的。

 それが両性の神の特徴だった。


 恵まれた肉体。豊富なリーチからの巧みな技。

 暗器のような舌腕の使い方。

 鍛えられている体はレベルも高いのをうかがわせる。


 相手がただシンプルに強い。

 それがVVに起こった悲劇だった。


(足はそんなに早くないから、アタシだけなら逃げようと思えば逃げられるけれど……)


 少し考えるもやはりナシだ。

 たくさんの資産もここにあり何より大事なVVの直接雇用の者たちもたくさんいる。

 つまり女性たちだが。


(何よりエイナを置いていけない!)


 結論を出せば簡単だった。

 まだVVの体は動く。

 幸い体を張った活動には慣れていた。


 そしてここはスタジオ。

 VVと関係者しかしらない道具の数々が隠されている!


「とにかく、アタシはまだ負けるわけにはいかないからねー!」


「あらあら」「おやおや」


 呆れららているがVV的には舐められているときのほうがやりやすい。

 VVは常に自分がどう見られているか客観視してきたらしい。

 自分の姿を配信するアイドルゆえに。


 何をどうすれば自分が馬鹿に見えるか。

 どうやれば侮られるか。

 ときにはそういった下に見られる時も回数を重ねていればだいたいわかる。


「ええいっ!」


 VVは思いっきり振りかぶり近くにあった小物を投げる。

 当然両性の神は軽く払って弾いた。

 それでよし。


 VVはその間にかけていく。


「こないでっ!」


 VVは両腕を突き出し雷撃を放つ。

 VVはこういった魔法は得意だ。

 目くらましになるくらいの閃光を放ち殺到する。


 両性の神はそれを尾で弾く。

 無事に雷撃を弾いていた。

 感電した程度ではあっさり流してしまうか。


「まぁったく、かわいらしい攻撃だねぇ!」


「これで抗ってるつもりなのかしら?」


 ニヤニヤニコニコ。

 2つの顔がサディスティックなかおを浮かべる。

 やはり調子にのっている。


 VVはそのあとも適当に意味のない遠隔攻撃を連発していく。

 両性の神はほとんどきいておらず弾くばかりだ。

 本来なら直接踏み込んでトドメを刺せばいいと思うけれど……両性の神は結局心を折りに来ているのだ。


「ほらほら、どれだけ無駄な抵抗しても良いのよお? 時間をかけただけ、あなたの体力がなくなると思うけれどぉ……」


「だったら、こっちへ来てみたらどうカナー!? ほうらほうら!」


 わかりやすく目の前に雷撃を体の前で放っていく。

 そしてそのまま体に雷撃を纏った。

 所詮気休めとはいえこういった気休めは相手の感情を刺激する。


「おやおや、あんなのに乗ると思われているのですかね?」


「かわいらしい電圧! 本気で勝てると思っているのかしらん?」


 このヘビ人間の神は見た目と違いかなりニンゲンくさい行動心理をみせる。

 あなどられているから殴りに行ってもいい。

 でもわざわざ感電しにいくのも嫌だな。


 そういったちょっとした心。


 それが嗜虐的な心にまざり……両性の神がゆったりと時間的猶予を保つ。


(時間を稼いでこっちの準備終わらせないと)


 VVもここはVVの神域。

 敵に悟られず様々なことを起こさせる。

 何も派手でなくて良い。


 僅かずつ。気づかないうちに。

 相手を罠へかける!


「来ないなら、こちらから行っちゃおうカナ? 絵の動きがないのはさみしいしね!」


「アハハハ! 何度でも何度でも無駄に来るといいわぁ!」


 ジリジリとゆっくり距離を詰められている。

 だからVVはあえて自分から突っ込むことにした。

 消極的戦法はやりすぎると気づかれやすい。


 VVの周りにいくつもの雷玉が浮き出した!



 雷玉はVVの周囲をまわる。

 そして雷玉の間には雷撃が走る。

 つまり。


「そうれいっ!」


 VVの力で雷玉を一気に放つ。

 速度はかなりのもので雷のよう。

 スタジオ中に散らばっていく。


 そして間を雷撃が通り抜ける!


「おお、少しは考えたねえ」


 だがそれを目で見て避ける両性の神。

 ぐねりと明らかに器用な度を超えて雷撃ごとの軌跡を見破り体を捻じ曲げる。

 そう……ヘビなので。


「まったく、チカチカして眩しいねえ。おや?」


 そして魔法は閃光能力に割り振ってある。

 VVにとっては威力を上げるよりも楽な操作であり……

 そして閃光の中隠れ動くことはよくあることらしい!


(足音のしないアタシの移動は想像以上に厄介でしょ!)


「あ、いた! あれ? どこへ……」


「むむっ、見えづらいねえ!」


 しかも注視してVVを見れるわけじゃない。

 雷撃は避けないと体が痺れる可能性が残る。

 それにわざわざ食らうというのもシャクと感じるだろうこのタイプは。


 VVがぶん投げた物を振り返りざまに舌拳で割る。

 すると中身の液体が全身へとかけられた!


「ヒャッ、なあにこれ、もうう」


「酷いことするじゃないかぁ」


 嫌がってはいるがそれにたいしてなんのダメージもない。

 なぜなら……


「そこだぁ!」


 VVが真正面にあらわれて雷撃をバチバチと浴びせる。

 今度はちゃんと威力を上げたものだ。

 両性の神を雷撃が襲う……


「こんなも……」


 舌拳で弾こうとして。

 火花が燃え移る。

 そう……アルコールだ。


「「おわっ!?」」


 一気に燃え盛る。

 だがVVは知っている。

 これはしょせん大道芸。


 わずかな時間酸素は枯渇するものの神の体を焼くには足りない。

 なにせアルコールの燃えている温度は……低すぎる!


「まだまだ!」


 だけれども驚かすには十分。

 あたりにちらしてあった雷玉を集めVVの手へ。

 その手には先程まではなかった派手な杖が握られている。


 この世界で一般的なデザインの杖とはかけ離れていて……

 実用性というよりはまるで地球のアニメ(どこかの創作)


 更に魔法を使ったのか雷撃を増して振ると一気に砲撃のように放った!


「ぬおっ」「きゃっ」


「吹き飛べーっ!!」


 スタジオが壊れるので普段は使わない大技。

 VVは魔物が闊歩するあらゆる地域を移動している。

 しかも不死旅団と違って大型の施設でたくさんのニンゲンを抱える。


 自分だけ戦えませんではやっていけないのだ。


 雷撃の奔流で両性の神は吹き飛ぶ。

 その巨大な体が明らかに押されていた。

 電撃が収まったあとVVはまだ杖を手に身構えている。


 手応えが浅い。


「あらあら、痛いじゃないの」


「ますます手下に欲しくなった! 良いじゃないか、暴れる子犬はかわいいものさ」


 色々と手早く必要なものは拾ってきた。

 備品として置いてあった傷を癒やす治療薬を飲んでVVは自分を回復させる。

 ちなみに顔に傷が残ったりしたら困るため無駄に品質が良いらしい。


(あの時はこんなのいらないって話していたっけ……!)


 みんなの過剰な世話が役に立った。

 他にも無駄に……まさしくいつ使うんだというものがある。

 全部フル稼働させて追い払うとVVは思ったらしい。


 今のもまったく効かなかったらかなりまずいという判断だったけれど少しは効いた。

 攻撃が通る。

 ならば……


(ぶっ倒せる!)


 回復を終えたVVは杖を回していく。

 この杖を手に入れるまでが大変だった。

 見た目は高級なおもちゃだがもちろん中身はまるで違う。


 VVは神だ。だがその根っこはニンゲンでもある。

 ニンゲンは概念として武装の力を最大限活かすことができるのだ。

 服1つ武器1つ大きな変化がある。


「ここからが本番だよー! さあ、悪い子はどんどんビリビリさせちゃおうね!」


「アハハ、さっきの攻撃ならもう喰らわないわよお?」


「あんな大ぶりはもう……」


 VVが杖を両性の神に突きつけ宣言する。

 両性の神が身構えVVの方へ飛び込み……

 すわまた殴打かといった瞬間に。


 両性の神が横から来た何かに大きく吹き飛ばされた!

 

「「えっ」」


 スコーンと体が大きく吹き飛ぶ。

 それ自体は大した痛みはない。

 なにせクッション性の高い布の塊みたいなものだったから。


 もちろん罠ではない。

 昔の企画で使ったっきり死蔵(しぞう)していたおもちゃだ。


(昔にエイナから体を張った企画をって色々やらされたからなあ)


 飛んでいく両性の神へ向けさらに雷撃を放っていく。

 両性の神は圧倒的な機敏さでその雷撃を尻尾で弾くが……

 すぐ背中側が板張り壁につく。


 あくまでここはスタジオ内。

 そんなに広大ではないからだ。

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