二百五十七A生目 改築
「イーーーヤッホーー!」
ローズクオーツが叫ぶほどに勢い良いジャンプ。
今ノーツは空へ飛んでいた。
「1度に使えるブースター残量に注意。地上にいる間や落下時に回復」
「ああ、これかあ、わかった。ゆっくり飛んでいればそんなに使わないね?」
「戦闘時は全駆動系に多くエネルギーを配分するため急速に枯渇。生物の呼吸からヒントを着想した構築」
「トランス時に色々理想的になるように、いじってもらっていたもんねえ……」
ローズクオーツがしみじみと語る。
どうやらそこそこちゃんと互いに見ていたらしい。
ふたりとも今回でトランスしたからね。
ノーツが空を高速で飛んでいく。
こうやってみると結構戦場も様変わりしたものだ。
敵軍の心配をする程度には盛り返せている。
戦場での死は避けられない。
あとで浄化も大変そうだなあ……
敵側にまともな医療なんてなさそうだから余計に。
なんとか彼らの魂がまたどこか楽しい場所へ転生しますように……
お祈りを簡易的に済ませつつ今の戦いの場へ。
そこで蠢く熱気は凄まじいものを感じた。
「うわあ……みなさん押し込んでますね!」
「戦況分析優勢。援護の必要なし」
今までの戦いが静かだったんじゃないかというくらい声と音が鳴り響いている。
多分メチャクチャにおいが強そうな気配も。
血と泥と金属と魔法による起こされた様々なにおいたちの入り乱れ。
しかしノーツによると参戦する必要はとくにないらしい。
……良く見ているとこっちの魔物や骸骨兵たちが腰の引けている相手たちをボンボン吹き飛ばしている。
骸骨兵たちも意欲が高いようでなにより。
前線から更に進むと遠く向こう側に皇国軍もみえる。
「あ、こっちがわもいましたね! ええっと……苦戦、している?」
「戦況分析。コマンダーの存在を確認。人形兵2体。皇国軍は数的有利のため、均衡中。最終的に勝ちうる可能性は高いが、同時に被害拡大も懸念」
「よし、助けましょう!」
「了解。武装ロック解除」
ノーツが話すことが本当ならなかなか大変だろう。
敵の数を減らすのに味方の数を減らすのはよくない。
限度があるとはいえただ勝てばいいわけではないはずだ。
というわけでノーツはその場でホバリングする。
ノーツの肩から生えている武装がきらめいた。
「よーーし、やろうやろうやりましょう!」
「戦闘情報処理開始」
「わぁ、このマークのところを狙えば、そこに、やってくれるんですね! いきまーす!」
ローズクオーツがなにやら操作するとノーツの肩にある武装からミサイルが放たれた!
曲線を描いて小型ミサイルが各地に飛んでいく。
「「ぎゃあああっ!?」」
彼らは目の前の敵へ夢中になっていたら突然上から攻撃された形になる。
結構高いところ飛んでいたからねえ。
やられたほうはたまったものじゃないだろう。
爆発の半径をノーツ側が意識してロックオンしたのかきれいに区間でわかれるようにばらまかれている。
別にきれいな全滅をするわけじゃない。
広く浅く爆風で吹き飛ばしていくだけだ。
そしてミサイルって一見なんなのかわからないのも奇襲として役立っている。
よくわからない間に着弾して爆発。
火魔力が拡散し一気に爆風で焼いていく。
「うわわああああ!!」
「おい、逃げるな! 上へ盾を張れ!!」
周囲の面々をひととおり狩り払うとノーツが急加速した。
「コマンダー確定」
「よし、あとは……」
「敵性反応急速接近。人形型敵2体エンカウント」
「うわっ、そっちのほうが危険です か!」
ノーツの指示に従いローズクオーツが操縦していく。
ノーツの背後にふたりの人形がくっついてきた。
高速で飛んでいるのに一緒にきている。
「わっ、ブーストエネルギーが……着地!」
そして戦闘状態になりノーツの全身が機敏に動き出す。
人形の乱射を身のこなしで避けてから地面に降り立つ。
ぐるっと円を描くようにまわりながら地面を勢いのまま滑っていった。
そのまま足を止めず地上でブーストをかけていく。
ただ巨体を空に浮かすのと走りの補助をするのではまるで消費が違うのだろう。
ローズクオーツは安心のため息っぽい声をもらした。
「危なかったあ」
「コラー! 待てー!」
「破壊シマス!」
人形もきて乱射してくる。
ゼロエネミーを変形させて大盾化。
ノーツは軽々と扱い銃弾を弾く。
どうやらふたりとも戦闘長ではなく一般人形らしい。
「敵性戦力分析完了。戦闘開始」
「行こう!」
ノーツが軽くジャンプすれば勢いのまま宙に浮く。
当然ブーストをかけてしている力だ。
人形は巨体が急速に浮いてびっくりしている。