二百五十六A生目 工作
「なあ、これ、勝てるん……だよな」
「そ、そりゃあ……勝てるだろ、勝てるって言うからここまできたんだぞ?」
「で、でもよ……なんか空気おかしくねえか、なんか怪我したやつがメチャクチャ多くなってるような……」
「つうか、なんで、怪我したら治す場所がねえんだよここ……」
「そ、そりゃあ怪我したら……おお、そうか? 数が多いから、怪我したら治す場所が居るのか本来」
「各々治せるやつが治してたな。あれ? どこ行った?」
「さっきぶっ倒れてるのがいたぞ、一匹は」
「え、大丈夫なのか、この戦い……」
「いやでもよお! お前たちも来たんだろ、あの人形共の強さを見てさあ!」
「そりゃ、つええけど……」
「俺達よりは強いだけで、向こうより強いわけでは、なかった?」
「エヘヘ、いやぁ、まさか……あまりに天上の戦いでわかんねえや」
「なあ……もしかしてさ……」
誰かがつぶやく。
「俺達ってヤバくね?」
「というように戦場では不安が伝播中。我々はその手伝いをしておきました」
「諜報ご苦労。ってかなんでそんな話し方なんだよ毎回……」
ドラーグと影の中にいるコウモリ魔物が話す。
コウモリ魔物はアノニマルースの裏である工作や諜報を担当くる影の者たち。
マジで組織名そろそろ決めてほしい。組織名があると『形』がはっきりしてしまって影に潜めないってのはわかるけどさあ。
「何をおっしゃいますか、これが我々のアイデンティティ、そして生まれつきの美しさですので」
「嘘つけニンゲン界へ潜るさいに猛勉強していただけじゃねえか」
余談だが魔物はあまり敬語らしきものは使わない。
一応上への態度とかはあるもののそんなに複雑ではないのだ。
私がニュアンスでそれなりに訳すことはあるが。
漫才はともかくもたらされた話は大事だ。
ジャグナーはもう作戦会議室ではなく別のところへ歩いている。
やるべきことはギリギリを詰める作業ではないからだ。
受信機である腕輪がある以上無線機能で情報はどこでも共有できる。
「それで、なぜゴーレム整備所へ? ここは戦時の今、そこまでのものはないはずですが」
「まあうちは大半アンデッド兵だからな……だがな」
ジャグナーは1つレバーを倒す。
するとゲートがゆっくり上へ開いていく。
「ここにはあるんだよ。秘密兵器が」
扉の奥にあるものにコウモリくんが息をのむ。
それは圧倒的な雰囲気に美しさを感じる品で。
「おお……これはこれは、ノーツ殿ではないですか」
そこにいたのは私のゴーレムである1体。
巨大なロボみたいな姿のノーツだった。
……トランスしたらしく前より大きい。
その巨体は昔より強化されている。
ひと回り大きい。
それなのに全体に受ける印象は前よりもスタイリッシュだ。
「こんにちは、おふたり方」
「おう、もう調整は終わったんだよな?」
「調整タスク完了。新型機体の調整は完全。戦場状況把握リアルタイム進行。ネットワーク受診がここ2日オフラインだったのが復旧済み。出撃指示待ち」
「ローズクオーツもここで体を癒やしているはずだ。一緒に戦場へ出てくれ」
「了解」
ノーツの内部燃料が可燃しエネルギーが満ちて目にあたるカメラが光った。
さて私というか剣ゼロエネミーも遊びでついてきたわけではないのだ。
今外への搬入口でノーツにローズクオーツが乗り込んでいる。
「接続完了! ノーツ、飛び出したら一気に進んで蹴散らそう!」
「了解。全兵装スタンバイ。いつでも行動可能」
「はーい!」
ローズクオーツの快活な声が響く。
そしてノーツが左腕に持つものは……ノーツの武装ではない。
美しい青の澄んだ剣身を持つ刃はノーツのサイズにちょうどよくあっていた。
「オプションパーツチェック完了。剣ゼロエネミーによる戦闘データは製作者ローズクオーツから獲得済み」
「ゼロエネミーさん、一緒にローズオーラさんを取り返そう!」
特大剣となった剣ゼロエネミーだ。
とてもでかく普段ではほとんど使用することがない。
剣ゼロエネミーに任せて振るとすんごい大振りになる。
すさまじい体躯を持つノーツなら扱える。
基本遠隔攻撃が多いとは言え結構役立つからね。
『よし、出撃準備が終わった。行ってこい、秘密兵器!』
「了解」
ジャグナーの声が受信機を通してノーツの中に響く。
外への道が開き明るい光が差し込んでくる。
金属のボディが光沢を纏っていた。
「ノーツ、発信!」
ローズクオーツが内部から操作するとノーツが身構え一気に加速する。
歩くのではなく足裏のローラーと……
新たについた多数のブースターから光の火を噴いて。
そして表へ飛び出すと。
空へと浮いた!




