二百五十四A生目 射線
アヅキは全身の翼が金属のように硬い。
だがそれでも先程の爆撃は辛かっただろう。
高速で無理やり抜けてきたのだ。
直撃を避け無理やり突っ切り今メアリーをぶん殴った。
当然1度捉えたらもう離す必要はない。
なにせ相手は攻撃のために……全ての砲台とブースターをしまったのだから!
「ハッ!」
「ウッ」
「コレッ!」
「グッ」
「主の!」
「ヒッ」
「力に!」
「ウッ」
「比べたらっ!」
アヅキは殴る。蹴る。
アヅキの拳による攻撃は実のところそんなに強力な攻撃手段ではない。
接近戦での選択であってやくざ喧嘩のそれだ。
だがだからこそ。
拳には力がこもる。
足には怒りがまとう。
「まるで中身が無いっ!!」
「キャアアアッ!!」
右腕と左腕にそれぞれ風と雷撃をまとって。
手を組む。
大上段に振り上げて……
拳を叩きつける!
ダブルスレッジハンマーだ!
叩き付けられたメアリーは後頭部から沈み落とされていく。
風と雷が互いに干渉し光が破裂する。
衝撃波としてメアリーを地面までキレイにすっ飛ばした!
「はぁ、っあ、勝ったぞっ」
アヅキが翼を広げ背中で魅せる。
力を出し尽くしもはや起きているのもつらそうだが。
それでも勝てた。
「ハアァァ!!」
「ウオオォォ!!」
そして地上でも。
もはやまともに戦えるのは兄インカとスーのみ。
みんな生きてはいるが……
「パパ……」
ドラーグが斃れ付していてた。
ドラーグの欠片でしかないのでここでの死は全体としては致命的ではない。
だけれども死ぬことなんてめったになかった。
戦闘用に力をわたしていた分かなりの痛手になるだろう。
あの光の時後で知ったが……
みんなをまとめてドラーグが体を貼り守ったらしい。
その分ドラーグはみんなのダメージを肩代わりすることとなり。
今光となって消えようとしている。
あくまで分かれ身だったドラーグが元に戻るだけだが……
それでもコロロは最後までその死に寄り添っていた。
ドラーグ本体のほうも知っているからチラチラこちらを気にしている。
この分のパワーを失ったのも手痛いしコロロが明らかに沈んでいるのもつらい。
ポロポロと涙がこぼれるのも隠すようにうつむいて。
本体ドラーグは轟音をたてて叫び一気に光を放って焼き放つ。
ドラゴンロア。
竜の秘奥だ。
地上戦はドラーグに助けられた兄インカがふんじばっている。
全力を越えて顔が凄まじい迫力だ。
剣ゼロエネミーは……いける……かな。
スーも既にボロボロで片腕が下がっている。
兄インカの強烈な突撃貫きをガードしたさいに壊れたらしい。
兄インカも回復が間に合っておらずズタボロだ。
いくつも槍針折れているし血泥にまみれている。
それでも目は強く輝いていた。
絶対に折れない意思を宿すように。
「マダダ、マダッ……!」
「いいや、もう終わりだ。お前たちは、許されないことをしているんだ。そんなお前たちに負ける道理はない!」
身を固めるスー。
兄インカは足を止めない。
鋭くしっかり足元を狙って蹴りこむ。
スーは対応してしっかり下がるが……足が地面を蹴り上げた。
土をめくりあげて砂を飛ばす。
スーも目のような視界カメラで見えているから視界がふさがれないよう意識して……
インカが横に跳んだ。
その背後。
ずっと遠くから。
矢が飛来した。
「ガッ!」
「終わりだ、これで」
その矢は前の誘導矢と比較にならないほどの高速かつ大きい太矢。
その矢の目的は……城壁落とし。
撃ち込んで壁に刺さってそこから壁の登坂場所を造るような兵器。
それが雷撃を纏いすさまじい熱と共に膨大な光でスーをえぐる。
その体を吹き飛ばし。その先もねじり巻き込むように吹き飛び。
そのまま岩山すら貫いてぶっ壊して飛んで行った!
「ナ……ゼ……」
放ったのは……もちろん雷神だ。
遠い景色の向こう側。
鎧すら半壊している雷神がいた。
ロングボウがさらに展開し巨大化した弓。
重さも魔法の効果で増して弦も鋼鉄のよう。
個人の力で引くことを想定されていないそれを雷神は使いこなしていた。
……雷神は1度戦闘不能にされた。
あまりに強い光線爆発のせいだ。
ドラーグに守られるのにまにあわなかったのだ。
けれどその後すぐ小イタ吉が回収。
自動的にアノニマルースへ転送される前に高級な復活薬をぶっかけて復活。
戦闘不能ぐらいならなんとかできる薬だった。
インカたちと念話しつつ位置取り。
そうして渾身の超遠距離射撃を成功させたのだ!
「……」
「ああ、本当、なんとか……勝ったな」
背後でもがれきの山でドラーグ本体が勝鬨をあげてすぐに飛びだっていった。
追撃避けだね。