二百四十二A生目 愛化
話によるとホルヴィロスはかなり落ち込んでいたらしい。
私に対しての負い目だろう。
普段からあれだけ私に対して愛を告白していたし。
私自身はもちろんそっけなく返したが。
ホルヴィロスをそういう目で見る感覚はまったくない。
これはホルヴィロスが獣でも神でも植物でも同じだ。
ただそれとは別にちゃんと友情的好意はある。
さすがにあれだけ長い間家で付き合いあればね。
だから今彼が本気で異常なのもわかる。
もちろん世はそれどころではない。
私(肉体)はさらわれアノニマルースも襲撃を受けて大戦争。
医療従事者たちは必死の中こうだから。
だけれども……
あくまで彼らは神であり部外者だ。
神頼みの前に我々が動かなくては。
グルシムもナブシウも……つまりほかの神たちも一線引いて今回の戦いを見守っている。
とはいえ色々協力はしてくれているが。
彼らは彼らでその時を待っている。
神と神のしのぎあいが訪れるかもしれない。
そんな時を。
月の神たちはほんのわずかな打ち漏らしも許されないはずだ。
はっきりいってそっちの戦いに負けても地上はめちゃくちゃになる。
どの戦いも気が抜けないだけだ。
我々は我々の事情で戦い抜くからね。
私はどっちの戦いにも加われない残念さなんだけれど……
だからこそもどかしい。
ホルヴィロスがこうなってもひとこと声をかけることすらできないなんて。
大丈夫だと。心配はないと。私たちは私たちの4つの足で地上に立つと。
ホルヴィロスのやりようにやればいいと。
そう伝える方法がない!
剣ゼロエネミーが近づいていく。
せめて寄り添うように……
ん? なんなんだろうこの気配。
剣ゼロエネミー越しだからよくわからないけれど……
白い草の中から強い力を感じる。
『その気持ち、届いたよ』
どこからか声が聞こえた気がした。
草が割れだしている……!?
慌てて植物たちから離れる。
次々と植物たちが割れて……中からさらにツルなんかが伸びてくる。
あたりがわさわさととんでもない量になってきた!
な、なにもしてないのに壊れた!
「え、何? ホルヴィロス先生のツル!?」
「わわっ、何!? 何!?」
寝ていたみんなもワサワサしだしたのにすぐ気づく。
もはやちょっとした騒動だ。
、ワチャワチャしたまわりとは違って白い植物タチからはなんだか神聖な気配を感じる。
ここだけ雰囲気が違う。
いや……その雰囲気が広がっていっている?
……その瞬間。
グンとツタたちが一斉に伸びた!
同時に神聖な気配が広がっていく。
そうこれは……神域だ!
ホルヴィロスがうごきだしている!
一斉に伸びたツルたちは不可思議に壁を侵食しだす。
まるで一体化するかのように場を白に染めていく……
「ホルヴィロス先生が起きたのか!?」
「いや、それにしてもこれは!?」
「……雪? 屋内に?」
空から白が降る。
いや空なんてものはない。
天井から……どこからか。
いや毒じゃんこの白って!
ホルヴィロスの住まうエリアに降る猛毒。
何もかもを白く溶かす降り積もる腐毒。
ホルヴィロスローーース!!
寝ぼけないで!!
コレまずいから!!
……ん?
「な、なんだ!? 急に元気が出てきた……っ!」
「うわあ……キレイ」
え? 毒じゃない?
みんなが上を見上げ毒の白を受け入れている。
いや……剣ゼロエネミーにも効果が何もない。
ただキレイで……同時に魔物たちに活力をもたらしている。
これがなんなのかは……は実はよくわからない。
こんなものホルヴィロスから聴いたことはない。
ホルヴィロスはこんなこと話していなかった。
あの私には聞いてないことも全部答えていそうなホルヴィロスが!
だとすると怖いのはこれがホルヴィロスにも把握できていな現象の場合だが。
それはもはや考慮してもしかたない。
私としてはいまだ成長やまないツルたちの動向がきになる。
あとだんだん繭みたいになっている植物たちがほどけだしている。
ほかのツルたちが絡まりだし1つずつ折り重なっていく。
それは複雑にかつ濃密な。
普通ではありえない形で。
やがてそれらは白き獣を生み出した。
ホルヴィロスだ!
なんともいきなりホルヴィロス復活。
一体なぜか。なんなのかと思う間にホルヴィロスは目をあけて。
「さあみんな」
「後れを取り戻す」
「私の力で病院全体を癒している」
「担当患者いくいくらか回してもらえる?」
「ローズにあいたーい!」
……ホルヴィロスが次々と発生しだした!
また知らないことやっている!?
最近増えるのブームなの?