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二百四十一A生目 病院

 クライブとグレンくんの戦闘結果はすさまじい衝撃を与えた。

 勝利という朗報。重症という驚愕。それを確実に倒したという安堵。

 当然彼らは治療室に逆戻りだ。


 夜が来る。

 戦闘長を倒した結果いくつかの部隊が揺れたがそんなことよりも。

 あんな戦闘長が強襲仕掛けに来ていたら終わっていたかもしれないという安堵のほうが大きい。


 未来視を使いこなしているせいで数によって押すことできないからね……


 ただそのころアノニマルースでも大きな変化が訪れていた。


「けが魔物搬送するぞ!」


「またか……! 今日は多いな!」


「前線が反撃するようになったから、被害も大きくなりだしたらしい」


「手が足りない……! 忙しいにも限度がある!」


「ホルヴィロス先生がいてくれたら……」


 戦闘が激化することによる大打撃は双方増えていた。

 ニンゲンたちも魔物たちもみんな治療するために廊下へずらずらと並んで寝かされている状態。

 治療室にわざわざ案内するのは間に合っていない。


 電撃をもらった剣ゼロエネミーにここまで来てもらった。

 自己修復も終えている。

 どこもかしこもひどいありさまだが……


 普通の軍医療施設に行くのはもっとひどい患者で病院に来るのはなんというか普通の患者だ。

 軍施設では鎧の強制送還システム発動瀕死の時もどったりした者達が。

 病院ではニンゲンたち含む多くの者達を診ている。


 優先順位というやつだ。

 とはいえ当然瀕死の数より意識はあるけれど戦闘続行不能ぐらい者の方が多く出る。

 最悪まとめて回復魔法かけて再度戦場に走らせるのすら仕事扱いだ。


 病院はホルヴィロスがいなくても回る。

 とはいえ緊急時なのだ。

 手が1でも10でも100でも欲しい。


 そこに名医たる犬っぽい神の手とくればとっても欲しい。

 ホルヴィロスはこの世界で珍しく医者と言っても過言じゃない存在だ。

 医療従事者は数あれど魔法と技術を用いて患者を治そうとする珍しい存在。


 ふつうは薬を錬金……錬金はあのローズクオーツの使うものではなく調合に近いものをして。

 患者の容体を見て使用したり回復魔法を使ってもらうのものだ。

 そうでなくホルヴィロスはもともと明らかに医学の能力を持っていた。


 果たしてその発想はどこから来たのかはよく知らないが……

 ホルヴィロスのおかげでアノニマルースは標準医療を数世紀先取りで受けられる。

 しかも腕が切れてもくっつけて元のように動くのだからね。


 普通の治療師ではなかなか難しいともきいた。

 ……私は……まあ……出来るんだけど。

 私基準で物事考えてたら進まないのはいつもどおり。


 大量の病院患者たちを小さくなりながらスススと進んでいく。

 おもちゃくらいのサイズと丸い刃になればさやがない今でもなんとかこういう場所でも動ける。

 なお斬撃威力は下がっていないのでうっかり振ると惨事である。


 ふよふよ移動してあまり魔物たちがいないエリアまで来た。

 こっちは患者を呼ぶ場所ではないのだ。

 いわゆるスタッフオンリーの場。


 ここを抜ければ従業員用仮眠室へとたどり着く。

 つまるところ……ホルヴィロスがいるはずのところに。






 仮眠室は死屍累々という様子だった。

 医療の前線で働いてくれている面々が稼ぐわずかな時間全力で回復につとめているわけだ。

 スキル構成にもよるけれどたいていは寝なきゃ倒れる。


 そもそも激務なのだ。

 スキル構成が良かろうと疲れるし寝るしかないときもある。

 それでもこの部屋はガンガンに回復効果の高める香が焚かれているが。


 私……というか剣ゼロエネミーに頼んでその奥一角にたどり着く。

 1つのベッドが占拠されている。

 魔物ではなく……何? 植木鉢?


 いや植木鉢ではないな。土とか鉢植えとかないし。

 その代わり白い植物でもっさりしている。

 多い多い。絡まりすぎてまるで繭のようになっていた。


 なんでこんなんなつまてるんだ。

 心配になってここにきたんだが。


 ホルヴィロスの正体は植物の束だ。

 ……そう書くと語弊があるけれど植物の魔物が獣のような姿をとっているということ。

 そして魔物というより生まれついての半神だ。


 彼の中にある内臓と呼んでいるコアにあたる部分。

 そこは魔物としての部分……らしい。


 生粋の半神とはいえ中身は9割神だ。

 多少神らしくない部分……恋愛観が独特なこと以外は。

 そのことで彼自身もなんとなく悩んでいるフシを見せていた。


 植物で魔物をまねるような状態になっているのが良くないというか……本神のコンプレックスとなっていたのは間違いない。

 あの時から何度も会話を繰り返してきたがその後どうなったかまでは……

 そんなホルヴィロスが今植物の塊らしさを押し出している。うん?


 これって異常事態なのか?

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