二百三十七A生目 未来
クライブの振るった大剣は吸い込まれるように十三改式へと振られていく。
そのままでは直撃するといったところで。
すり抜けた。
「何!?」
「喝ッ」
「ぐっ!?」
クライブが思わずふきとぶ。
大太刀が振られモロに受けたのだ。
衝撃破と斬撃同時に食らい地へと叩きつけられる。
剣ゼロエネミーがすぐカバーに入るが斬る直前でそらされまたぬるりと外れる。
「クライブ!? なんでよけられたんだ今の!?」
「何……? 避けたのか、相手は」
「あ、ああ」
グレンくんの言葉はおそらく見る角度が違ったから。
だからこそ真実へのひとつをつかみ取れた。
グレンくんも話しつつ十三改式へ雷の魔法を放つ。
着弾までが早く枝分かれして捉える魔法を……
全てすり抜ける。
「はあっ!?」
グレンくんのわが目を疑うようだった。
ただ今のって……
十三改式は力をこめず軽く駆けてすべてをすり抜けたあと。
直接グレンくんへと斬りかかる。
「うっぐぁっ!?」
まともに刀で受けられず衝撃波により吹き飛ばされる。
「なんだ……? 雷を、見て避けていた? 馬鹿な……」
そして立ち上がるクライブは真実の光景を見ていた。
全部目で追って揺れるように避けていたと。
避けられないものも全て鎧の曲面に当て叩き落す。
当たり前だがそんな動きさっきまではできていなかった。
出来ていたらコンボは当たらないのだ。
つまるところ。
「くっ……まさか、見えているのか、攻撃が全て!」
「嗚呼、吾モココヘキテ隠し立てル気モナシ」
そして彼ははっきりとその名を告げる。
その片目を赤く輝かせながら。
「吾が力、未来視と言う」
……最悪が形になった最強の戦闘長。
それがこの敵十三改式だった。
「ぐうう!!」
「まずいな……」
攻撃の応酬は激しくなる一方だ。
だがそれはふたりの果敢な攻めが功をせいしているわけじゃない。
むしろ逆。
「吾ヲモット楽しませろ、ツワモノ共ヨ」
グレンくんのエフェクトラッシュを全て弾き避けてグレンくんの鎧を切り裂き。
クライブの大剣をスレスレで避けきって不意打ちの爆裂魔法すら知っているように防ぎ返す刀でクライブの鎧を斬っていく。
否知っているのだ。
その目に輝く未来視。
使いこなしているが故に手のうちようがない。
あまりにシンプルかつ凶悪。
「何かわかったか……!」
「一応わかったかもしれない、けれど、だからなんなんだって感じがある……!」
「良いから言ってくれ!」
クライブガ急かすのもわかるほどに状況が悪い。
回復薬を必死に体にかけ命を繋いでいるがはたしていつまで持つか。
「まず第一に、赤い方の目で見た範囲の予知しかできない!」
十三改式の見ている方向は簡単にわかる。
ただし常にこちらを視界に入れて俯瞰して戦場を見ようと立ち回ってくるせいであまりいい情報ではないが。
「そうか、一挙一動全部見られているがな。それで次は?」
「その2は時間だ。おそらく10秒前後の未来を見ている」
「なるほど、それは裏をつけそうだが?」
「……その3。行動を意図的に変化させた場合それも見直せる」
「さすがにズルいな」
クライブが苦笑する。
あまりに強すぎた。
「だが幸いな点も見つかったぞ」
「本当!?」
「ああ。あの未来視は相手の攻撃しか視えていない。でなければ、俺達の首がまだ繋がっているのは異常だろう?」
「……ああ、なるほど。確かにガードは出来ている」
言われてみればの話である。
明らかに相手はもてあそぶタイプの敵ではなく武人気質。
事実攻撃を未来視してすり抜けた後何度も首を取りにきている。
それでも傷が多少増えるだけなのはそういうことだ。
それに直前の位置は防衛の考えてどんどん変わる。
さすがにコンマ1秒の間に大太刀の振り方を変えるのは難しい。
だから頼っているのはあくまで防御面と考えて良いだろう。
向こうの動きは確かに的確な動きであらゆる攻撃を避けるが……
今も剣ゼロエネミーには攻撃を外しグレンくんと刀を合わせている。
グレンくんがどう構えるか未来を視ていたらその刀すら避けて頭を割っていてもおかしくないからだ。
グレンくんが必死に受けている間に剣ゼロエネミーとクライブが横やりを入れ剣を振るうがあっさり抜けられる。
結構前から見えていたということか……
「だったら、やってみたいことが出てきた」
「奇遇だな。念話でまとめるぞ」
私も会議に参加したいが無理。
その気持ちをかかえつつゼロエネミーに頼み時間を作ってもらう。
見えているからこそがっちり近距離詰められるのは嫌じゃろうて!