二百三十A生目 反撃
ダカシとアカネのコンビは勝利した。
だが互いに『え? これ大丈夫なの? なんか大丈夫な体している?』みたいなしこりが増えたきがするが。
なんというか神の力のってそういう無茶苦茶なところ前提みたいなフシがあるからね……
悪魔とは月の神の分神が地上に降りてきたもの。
今月から本体たちが来ようとしている。
ホルヴィロスの母であるケルベロスが門を塞いでいるとはいえ……なんでもできるわけじゃない。
月の神がどれだけいるかはわからないが……
封じなければいかなかった相手を全員相手に立ち回れるはずもない。
もちろん味方は他にもいるだろう。
5大竜は間違いなく月への対処をする。
だが全員の体は今動けない。
分神による超強力なパワーを出せるとしても……全力じゃない。
つまるところうっかりすると負ける。
ただしそんなやらかしをするかといえばノーだ。
彼らは絶対に対策を講じる。
だけれども限度はあるというのは同じ。
今までの比ではないくらい……漏れ出す可能性。
分神どころか本体が月から抜けてくる可能性の高さ。
9割防いでも1割の神が
ほんのわずかな時間に地上をメチャクチャにできてしまう。
人形の神の動向も気になる。
私の体返せや。
人形の神はアノニマルースおよび私を1つの大きな障害として捉えて大軍勢をよこしている。
そしてそれらは考えとしてただしい。
ここは世界で反撃する要として必ず重要となる。
きっとそのために予備策の予備策すらあったのだろうが……
実はこの時それが潰えた。
ウォイズ撃破後しばらくは大した変化が起きなかった。
ウォイズは戦闘長とはいえまったく前線に出てこず何かをしていてそれが不明だったからだ。
誰かを従えて動いていたとも思えない。
だがそれは戦闘が長引けば徐々に表立ってくる。
エレメントパニックの頻発をはじめ敵軍全体の動きが精彩をかきだした。
軍は戦略的にたくさんの戦術をもってしてことに当たらねばどこかで無理が生じる。
1作戦だけで押し切れるほど甘くない戦いならば特にだ。
それが破綻しだす。
戦場でカバーが遅れる。
達成困難と判断されたあと面々が迷子のようにさまよう。
本来仲間として立ち回るはずの2部隊がなぜか正面衝突。
それらが巻き起こる原因。
ウォイズの仕事は頭脳だった。
たまたまやらなければならないことをするため前に出てきた。負ける要素のない凶悪な力の持ち主が。
それが運悪く刈り取られたことで敵軍は裏で本格的な悪夢を見始めることとなる。
後で判明したことだがウォイズが生きていたらとある大破壊の構築によりアノニマルースは潰されていた。
「だいぶ、やっと戦いになってきたな……」
ジャグナーがため息を吐くようにそうつぶやく。
今の戦況はやっとトントンと言えるものだった。
今までの戦いがあまりにうますぎてそう大局に思わせてはいなかっただけで……アノニマルースは末恐ろしいほどに追い込まれていた。
全体が見えるからこそ『とても危ない状況』とわかるが逆に局所的な部分だけ各々見えていない状況だとむしろ勝っているとさえ思っていたのじゃないだろうか。
こっちがやっていたのは防御戦略の遅延戦術だ。
長々と持たせる戦いであってかつものじゃない。
勝つにはどこかで戦況打破しなくてはならなかった。
それが増援ということ。
シンプルでわかりやすい戦力増加だ。
現在皇国の軍が超特急で荒野の迷宮へと編成し移動している。
転移魔法では重すぎて困難なほどに。
私ができない今転移魔法系統は比較的まっとうな扱いしかできない。
大河王国や帝国が送ったのもあれで1回の全力。
本来はそれほどに転移系の魔法は負担が大きい。
その中でも比較的負担の軽い地点ごとを穴で結ぶ転移でもだ。
こればっかりは誰も悪くない。
皇国もナメられるわけにいかず総動員して向かわせている話を聞いている。
またアノニマルース自体も皇国にとって大きな要として機能しているのは確実。
何せ2国も来ているんだから、ねえ?
さてきっちり倒せるほどの軍を率いているため到着はもう少しかかる。
魔法のない世界ならば展開速度はめちゃくちゃ早いと言えるが……
残念ながらこの世界は魔法前提。相手もその速度で踏み潰しに来る。
だから戦いがここまで濃密で速いのだ。
一瞬でアノニマルースがつぶれる可能性もなくはなかった。
「今ならもう少し、やれることができたか……」
ジャグナーが向き合う大量に書き込まれた作戦用黒板。
次は攻める。
明確にその意思を持って1つのものに注目しだした……
「あいつらの出番だ」