二百二十七A生目 竜種
水弾は攻撃の圧力がある。
なので結界により弾かれるのは想定どおりだ。
結界が壊れる様子もない。
気にせずどんどん撃つ。
連射そのものはできないがためて、うつ、ためて、うつと秒間隔くらいで当てられる。
結界に次々と当たって大量の水を撒き散らしている。
「鬱陶しいガネ」
多分という感じでバックしつつさらに撃つ。
どうやら前にゼロエネミーがいたところへ振るったらしく手に当たった。
「ダカシ、これって……!」
「あ、ああ! よし! 追加だ!」
ダカシは水魔法と氷魔法を交互に使っていく。
アカネは体をもりもり膨らまして盾にしつつ魚みたいになった頭から大量の水を吐き出した。
こうしてしまえばついには狙いがわかる。
……全身水浸しの結界。
水も多少ならば弾かれて終わりだっただろう。
しかして量が多い。
結界は攻撃を弾くが攻撃の後の残りは関与しない。
氷も結界の表皮が凍てついていくが肝心の氷ダメージは通さずとも水が凍ったものは残る。
直立しているドラゴンの全体像がやっと見えたのだ。
こうして見ればなんとも不格好に見えた。
下半身は全体的にこぢんまりとしており浮いている。
両前脚がやたら太く大きく。
そして翼も鋭利に広くひろがっていて。
立派な頭がありウォイズはドラゴンの首下あたりにいて1番安全な箇所だ。
「見えればっ、避けれる!」
ダカシが今度こそ太い足や首の頭突きを回避し剣ですべらせていく。
当然剣で受けたり弾く関係上凄まじく肩や腕に響いているはずだ。
それでも直撃よりはずっとマシだと丁寧にさばいていく。
「ダカシ!」
「ああ!」
「しのいで!」
「えあっ!? や……ってやるよ!」
アカネからまさかの提案でダカシは思わず声が裏返っていた。
だがアカネが下がって明らかに集中しだした。
無防備だ。
ダカシがアカネに殺到する爪をはじき魔法はゼロエネミーが大盾になってなんとか防ぐ。
ウォイズがフリーだから魔法も間髪入れず襲ってきてキツイ。
ゼロエネミー的にはそこまでの威力じゃないが。
手数が多いのというのはそれだけで脅威だ。
太い腕と伸びる首頭は予想以上に機敏な動きをしていた。
物理的なそれらに気を取られると不意に魔法がアカネを凍らせようとしているのでダカシが運んだりもする。
背中の翼は見た目よりだいぶ力があるのかアカネを掴んで素早く飛んだ。
アカネはそれだけやるのにまったく動じていない。
それだけ集中しなくてはいけない事をしているのだ。
傍目から見てもアカネの内側にエネルギーが集まっているのはわかる。
それは逆に言えばウォイズもわかっているということだ。
「何ヲシヨウトイウノカネ、先ニ叩き潰すダケダガネ」
ウォイズは明らかにアカネへ集中砲火しだす。
ダカシも反撃で爪先に剣をねじこんだりしているが爆破する前に抜かれてしまう。
有機的に動く結界がここまで面倒だったとは!
「うおおおっ!」
ダカシの剣技はまさしく冒険者のそれだ。
基本は習っていて変なクセはないものの実戦向きで泥臭い。
剣は相手の攻撃をはねつつも何より明確に切り崩そうとしている。
水がしたたり凍っている部位もある体は一見して攻めを甘んじているように見えるが。
防ぐ必要がないだけだ。
それほどまで圧倒的に硬い。
刺そうとしてもすぐ腕や体を振って抜いてしまうためはた目から見てもかなりひどい。
もうちょい取り付く島がないものか。
そろそろ1分たとうというのにアカネは応答がない。
「ま、まだか……!」
当然大盾ゼロエネミーはアカネをとにかく守る。
ということはダカシがもうものすごい勢いで殴られ魔法をぶち込まれされているわけで。
アカネの前からどかないがゆえに全身ズタボロを必死にごまかして生き延びているとしか言いようがない。
「し、死ぬ……!」
殴られ急速に回復しまた殴られる。
治っているのは悪魔の力だろう。
だけれどもエネルギーを浪費しているのははたからみても明らかだ。
それでも1つともアカネに攻撃を通していない。
もはや意地だ。
大盾ゼロエネミーが防いでいるとはいえダカシの献身は誰が見ても明らかだ。
だから。
「……できた」
アカネのひとことで情勢がかわった。
それはやっと戦いになるという合図。
そして戦いを終わらせるという意思。
アカネが開いた目に強い意志をやどらせていた。
「いけるか!?」
アカネの内側からすさまじいエネルギーがあふれてくる。
さっきまでとは違う……これは。
「まだ慣れてなくて、時間かかった。でも、もういける!」
アカネを中心にすさまじいエネルギーがあふれる!