二百二十五A生目 吹雪
アカネがあちこちに現れ攻撃を好きかって初めたことで明らかに人形は面倒そうな顔をした。
「面倒ダガネ」
「さっきまでと違って!」
「攻撃にアラがあるなあ!」
7体のアカネ一斉攻撃で結界妨害のほうに気をまわし魔法で迎撃してとなると手がたらない。
明らかに弾幕の密度が下がった。
ダカシも的確に強化を回しているから人形からしたら厄介すぎるだろう。
「追い詰めたカト思ってイルノカネ?」
人形も厄介さを感じているのだろう。
一度ほどほどの距離に転移した。
遠すぎなければ反応はないとみての行動。
そして魔力の雰囲気が変化する。
魔法の規模が大きくなる時の予兆だ。
「何かしてくるぞ!」
「止める!」
ダカシはアカネに高速化の魔法をかける。
アカネが背の翼を4つにして轟音を立て素早く飛んだ。
そしてポイントは……アカネの分身は変身していないということ。
「フム」
再び結界たちが6体を止める。
その間を縫うようにアカネ自体が本体へ肉薄し。
多腕に変化して連続で殴りつける!
「分かれ身ハ後デ変身デキンノカネ」
人形自身に貼られた結界がゴリゴリ音をたてて割られていく。
腕で殴っているというよりまるでドリルで採掘しているかのような轟音。
それでもわずかに新たな結界発生のほうが早い!
あたりにおぞけの走るような魔力の気配が満ちる。
「デハ、コレハ防げるカネ」
「アカネ!」
「くっ!」
アカネは結界を最後にけりとばしすぐその場を離れる。
だが恐ろしい魔力は今魔法として満ちた。
場の天候が一気に狂ったかと思われるような天変地異。
空の空間が氷雪の零点下に落ちた!
「これ、は」
「ダカシ!」
アカネがすぐにダカシのそばへ行き巨獣に形態変化。
ほかの分身アカネは各々本体へととびかかり。
吹雪が来る。
「「きゃああああっ!!」
分身たちから年相応の悲鳴があがる。
吹雪は一瞬にして分身たちの肉体から自由を奪う。
あれほど強そうな見た目だった体たちが次々と凍てついた。
「くっ……」
「外はどうなっているんだ……!?」
アカネ本体の体は大きな獣としてダカシをすっぽり覆ったあと毛皮と体の一部から生えた穴で炎を巻き散らし温める。
ただ明らかに形勢不利だ。
アカネの全身がたとえ南極にいそうなほどもこもこだとしても。
攻撃である魔法は確実に体を凍てつかせていく。
「……やんだ?」
ダカシはアカネから解放される。
空間の悪意は時間にしてはほんの数秒だった。
しかして。
ダカシが見たのは落下していく分身たちと氷が全身にまとってしまっているアカネだった。
「アカネ!?」
「ダカシ……来る!」
「っ!」
ダカシは急速に速度を上げる。
するといた場所に風の刃が四方八方から飛んできていた。
「……!」
「ホウ、避けたカネ。モウヒトリは苦しソウダガネ」
ダカシは避けた。
しかしほぼ同じ位置にいたアカネはまともに食らう。
全身氷雪耐性以外そんなにない姿だったため血が分かりやすく噴き出た。
ダカシはすぐに攻勢に出る。
ゼロエネミーももともと金属だ。
ダメージは入ったが多少だからすでに雪を払って向かっている。
ダカシの目から抑えきれない殺意がほとばしる。
ゼロエネミーが先に結界をかいくぐり人形の前まで来て結界に傷を入れていく。
効果的に与える形がまだわからないんだよな。
ダカシは全身のみなぎっていたエネルギーをついに人形の結界へと初めて叩き込む。
全身をバネにして飛んだ高速からの剣突き!
結界に突き刺さるように深く入り込んで行く。
おや? 結界がさっきまでの感触と違う?
「近寄らんデ、欲しいガネ!」
人形が氷結のつぶてを魔法で放つ。
しかしダカシは避けない。
代わりにゼロエネミーが斬りはらった。
「はぁっ!」
そして変化が起こる。
先ほどまで様々な事をして結果的に破壊困難だとしかわからかなかった結界。
それが今粉々に砕けちり人形の体へと振り下ろされる。
人形ははたして焦ったのか。
斬られながらも本を持つ腕でダカシを殴る。
ダカシもまけじと何度も剣閃をきらめかせる。
結界が修復するにしてもダカシが近すぎて直せないのだろう。
結局数回まともに斬られてから蹴ってダカシから距離をとりワープした。
ダカシは剣を振りさっきの感触を確かめるように握り。
「だあああああぁ!!」
大きな砕氷音と共にアカネ本体が吹き飛んだ!
ただあれは明らかに自爆に近いことをした。
ごっそり毛を落とし中から小柄なアカネ自身が出てきた。
肉と血にまみれてちょっとこわい。