二百十八A生目 権力
たまにおっそろしく疲れた様子で大長文で愚痴ってチャットルームをログアウトしていった時があり半分読み飛ばしていたが……
簡単に言えば『権力を振るう姿勢や冷徹かつ尊大な王としての姿勢こそ王により加護が働く。しかしあいつは才能は恐ろしくあるが全く持ってこっちにすら1歩も引かない。成り立っているからこそ、よりひどい。出来すぎていて神すら食おうとしてくる』ということだった。
まったくもってどういう意味かはよくわからなかったので読み飛ばしていたが……
それがこのオウサマの姿らしい。
王の名をキサラギと呼ぶ。
「蹂躙せよ! 敵に誰へ牙を向けたか思い知らせ! 笑え! 戦場で笑いを響かせろ! 鋭き牙を見せろ!!」
「「キサラギ王バンザイ!!」」
号令と共に大河王国軍に強化が入る。
大河王国軍はワープゲートを通る関係で先発隊として少数気鋭のメンバーが来ている。
人数は少ないが士気と能力が凄まじく高い。
その数約1000。
いや多いな!?
パッと1日で出す兵力じゃない。
これはあとでわかったが世界中で人形が都市を襲った際に大河王国も襲われていた。
ゆえに次回対策でフル装備して待機させる兵力が結構あったらしい。
しかも衛兵クラスではなく騎士クラスだ。
アノニマルースや皇国に騎士級というものは存在しない。
ある意味階級制度ゆえにうまれた立場だ。
騎士は衛兵よりはるかに高度な教育をうけたものたちだ。
教養もそうだが特に戦闘面の差が大きい。
騎士の槍は鋭く騎士の盾は何者も通さない。
兵装も当然そのクラスまで引き上げられている。
なので純粋につよい。
兵站系の担保さえできれば兵10人より働くだろう。
しかもそれだけじゃない。
「わが軍の『戦車』、搬送完了しました!」
「戦車、搬送完了!!」
「良し!! 我が力よ! 我が戦車たちよ!」
キサラギが満面の笑みで……
そして笑顔というには凶悪すぎる歯の剥きだした顔で指示する。
「踏み潰せ」
「「パオオオオォォン!!」」
それは戦車というにはなんとんも有機的だった。
全身を覆う装甲は自走する鉄鋼よりも分厚い。
そして表出する爪は地面を深くえぐり取っていた。
ゾウ、である。
像じゃない。象だ。魔物のゾウ。
はっきり言って大きい。
少なくとも地面からの高さ5メートル以上。
一番大きいのは20メートル近くある。
牙があまりに巨大でおそらく軽くつつかれただけで家屋の外壁は壊れる。
そんなただものじゃない部隊こそ戦車部隊。
見るだけでわかるが乗り込んだニンゲンはあくまで砲手だ。
その巨躯で備える兵装はどれも大きな筒をしていた。
それが合計10頭。
アノニマルース内をところ狭しと駆けていった。
あれは明らかに小回りが利かない。ゆえにまさしく蹂躙するがごとく使うのだろう。
「はぁ、赤字だな」
そして戦術塔から変わって降り立ち裏に回ったのは小柄なニンゲン。
さっきの現王グーラ・カー・ラジャ・キサラギ陛下そのものである。
ごてごてと飾り付けられおもっくるしい鎧のような服ははっきり言ってまるで似合っていなかった。
そのままそそくさと宰相にジャグナーというメンツで裏手に回り誰もいない部屋につき。
部屋をしっかり閉じて初めて深くため息をついた。
「赤字だああ~!」
「さっきも少し漏らしていましたが、外ではご勘弁を」
「仕方ないだろう!? 今回の遠征費用予算でどれだけほかの設備費に回せたと思っている!?」
「地元でお小遣いをやりくりして事業を行っていた時と違い、国家予算配分のため、たらればです」
「特別予算編成だからムダ金ではあるんだが!?」
重っくるしい帽子を机に投げ捨て服装の一部を緩め腰の武装を一部おろし。
それでやっとドカリとそこらへんの雑多な椅子に座った。
そこに『王』はいなかったのだ。
不満を隠そうともせず幼い顔立ちで唇を尖らせているのが王だと知るものはごく一部しかいない。
普段の王はそもそもパレード以外では姿の幻も見れないのだ。
そう彼が身に着けていたものはきらびやかなだけじゃない……
「認識阻害一式をここまで豪華にしたてるたあねえ、考えもしたことねえや」
「これも王に必要故。なにせ、新王としての威厳は当然まだ見た目では持ち合わせてはおりませんから」
「ほぼ詐欺だ! 加工修正にもほどがある! 見た者の中で権威を持つ雰囲気補正されるからな!」
手紙で見たことがある。
彼がフル装備で絵を描いてもらったときのものを。
簡易的にコピーしたのも同封してあった。
まず足がとんでもなく長い。
それだけで何か言いたくなったがまだこらえた。
次に威厳たっぷりの全身筋肉質な見た目。
同時に余裕の感じられる雰囲気がある骨格。
自慢をたたえるような整えられた髭。
見識の深さを表すしわ。
どこまでも見通すような澄んだ瞳。
そして輝きをたたえる髪。
はっきり言おう。めちゃくちゃウケた。