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二百十二A生目 白剣

 アノニマルースが待ち望んでいたアレ。

 それは海外からの援軍。

 ワープゲートを作って軍隊の搬送をすることで一部精鋭を届けるという作戦。


 アール・グレイが立って敵に槍を構える。

 カルクックの上から振りかぶっていた。

 そのまま人形の方へ向き直る。


「マサカ援軍トハナ」


「先へ行ってください! ここはワタクシが!」


「な、え、助けてくれるのか!? じゃ、じゃあ行くぞ!」


 イタ吉に言葉が通じないので気持ちでなんとか伝える。

 イタ吉は素早く駆けて行った。

 アール・グレイは油断なく構え人形もスキをうかがい射撃したが弾かれる。


 アール・グレイが素早く弾いた。


「何語カハワカランガ、邪魔スルナラ容赦ハシナイ」


「む、本当に言語が翻訳されないんだなあ。困った、これでは……相手に情報を吐かせるのに苦労しそうじゃないか」


 カルクックが突如高速で駆ける。

 人形に向かって蹴り込み。

 人形はなんとか避けるものの追撃の槍に引っかかる。


「チイッ、コンナ神力ドコロカタダノ神秘スラナイ力ニ!」


「手ごたえが浅い、か」


 確かに切断面で足を薙いだ。

 それなのに人形はひっかかる程度ですぐに蹴り飛ばす。

 傷1つついていない。


 人形たちは全員神力を身にまとっている。

 その力が次元の違う壁となって敵からの攻めを理不尽に防いでいた。


 だったら剣ゼロエネミーである。

 こちとら対魔王剣である勇者の剣のきょうだいぞ。

 大前提の作りが神ころしである上私の神力も上乗せされ常に芯まで力を帯びている。


 だから……ふたりの間に飛び込み人形の手先から出た刃とかち合った!

 (エフェクト)同士が激しく火花を散らす。

 その間にアール・グレイはステップで下がった。


「助かりました!」


「邪魔ヲスルナ、主人ナキ剣ヨ!」


「……あ、あれはローズオーラさんの! あなたのご主人の助けにワタクシも微力ながら尽くします!」


 アール・グレイは槍やカルクックので何度か攻める。

 しかし人形はうっとおしそうに振るだけであっさりはねのける。

 差は力量じゃない。それを伝えられたらいいのだけれど!


「むむ、これは力負けしているわけではありませんね」


「口惜シミヲ」


 剣ゼロエネミーは通りカルクックと槍は通らない。

 そのことをはっきり理解したアール・グレイは……

 飛び降りた。


「先に行ってくれ!」


「お、良いのか主人、コイツ倒さなくても大丈夫か? 任せられた!」


 言葉は通じずとも元々ニンゲンとカルクックの歴史は長い。

 合図と行動が決まっているため言葉が通ってなくてもカルクックは走り出した。


 人形が離れないのはきっと相手の雰囲気だ。

 アール・グレイを鏖殺できるなら最初からしている。

 矢の援護も周囲の戦いに飛び交っているだけでさっさとイタ吉を追えるはずだから。


 けれどしなかった。

 人形は分の悪い賭け方はしない。

 頭がニンゲンよりもこういう緊急時だろうが回るために。


 いくらなんでもこの状況で槍すら地面に立てた男がなんの無策だと考えるほどに安易ではなかった。


「我が家宝、フィランギ」


 そして名を呼ぶ。

 鞘にさしてある剣が……震えた。

 それを握ると途端に震えが止まる。


 それは待望だとも取れるような。

 あっ実際そうなの?

 剣ゼロエネミーが言うにはそうらしいです。


 剣が引き抜かれる。

 フィランギ。

 そういう名の剣は……白だった。


 良質の剣は鋼の色で白銀だ。

 剣ゼロエネミーは澄んだ青。

 そしてフィランギは純白。


 それだけでも特殊だがよく見ると紋様が彫られ石が埋め込まれている。

 それらも全て純白なので一体化しているが……

 宝剣といっても間違いないような品だ。


 剣は軽い仕上がりなのか片手で構え振り抜く。


「持ッテイタカ……」


「これも多少はいわれのある剣でね。神の水で育った金属を、神匠が打ったとされている。ワタクシには力の差異はわからないけれど……!」


 駆けて距離を詰める。

 アール・グレイは実直な縦振り。

 今度は人形もしっかり手から出る暗記のような刃に(エフェクト)をまとわせ振るう。


 するとさっきまでとは違って互いの(エフェクト)が弾かれた!

 わずかずつ押され足で踏ん張り耐えるふたり。


「使イコナシテイルカ……!」


「この剣は我が家が戦いに赴く際へ持っていく、我が家の者のみに振るえる剣。存分に味わってもらう!」


 ヂランギから神力のエネルギーがほとばしり使い手の全身を覆って見える。

 あれはもはや超殻者(エクシーダー)……神力の使い手だ!

 前の時はあんな武器も持っていなかったしそもそもそんなに慣れているようには見えなかった。


 あれから成長している……彼も!


 人形は狭い足場を跳んで直接斬撃を避ける。

 アール・グレイは追いかけ剣を振るっていく。

 実直だがかなり鋭い連撃。型通りなのにそれを感じさせない自然さ。

 

 自然に振るわれる刃は時として避けたはずの人形の体を斬って吹き飛ばす。

 足場がどんどん悪くなろうと関係ない。

 まるで斬った先に人形が来ているかのような斬撃。


「ソウカ……大河王国カ」


 それは型を理解したがゆえに振るわれる斬撃。

 相手を討つための型がはっきりと形になっていた!


「たたみかけます」

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