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二十一生目 過重

痛いのが苦手な人は深呼吸してからごらんください

[スライムLv.15 状態:ビッグ 異常化攻撃:拘束]

 格上か!

 頭数は有利だし最悪ハートペアもいる。

 問題はインカとハックが即死しかねない事か。

 やはり私が身体を張るしかない!


 逃さないように追撃をかける。

 爪を差し込む。

 ッ!? 身体から水を出して反動で避けた!?

 魔法じゃなく元々自分が含んでいた水を出したのか!

 くっ、さらに水鉄砲が飛んできた。

 直撃を避けながら退避。

 小川は流れがあるためすぐに水は戻る。

 また水の中に潜られたら厄介だ。

「ふたりとも、また潜らせないように追い込んで!」

「もちろんだ!」

 インカが先に走り込みハックが続く。

 うわ、水を足元に出して素早く移動しだした。

 あれは魚も使っていた水の魔法か!

 しかも実にうまく使っていて機敏で厄介。

 二匹がうまく小川に近づけさせないように立ち回っていてかなり助かっている。

 何とかスキをつけば致命傷のチャンスをつくれるかもしれない。


「何とか直撃だけは避けて!」

 あのスライムは正直言って他のスライムより数段賢い。

 私があいつに触れようとした時に避けたのもそうだ。

 身体くらいなら切らせても本来ならダメージはない。

 しかし私が何か仕掛けてくると直感して避けたんだ。

 それの正体さえバレなければいける。

 流石に同時にいくつも魔法を展開するのは大変らしく水鉄砲の頻度が下がっている。

 これならインカたちは比較的安全に立ち回れそうだ。

 問題は膠着しかけている事。

 水に潜れないスライム。

 近づけない私達。

 今、変化を起こせるとしたら私の土魔法。

 しかしE・スピアは唱えてから発動まで5秒ほど開きがある。

「お兄ちゃんそっち行った!」

 あの速度で動く物体を捉えるのは困難だ。

「今度こそ捕らえてっ……くそっ」

 いや……ならばやつが向かうポイントに仕掛ければ?

 よし。

「らちがあかない、誘い猟! ポイントは今の私の場所!」

 私が川の側面に移動し場所を指定する。

 ここに誘いこむための猟。

 言葉が通じ合っていたらこんなにべらべら話していたら無意味だが幸い相手はスライムだ。

 E・アース詠唱、場所、向きよし。

「お姉ちゃん!」

 よし、来てる。

 発動し時間を合わせる。

 5、4、3。

 水鉄砲か! 回避、しない!

 防御で一瞬耐える。

 2。

 痛ッ!

 1。

 今!

 後ろに吹き飛ばされたように跳ぶ!

 スライムが続いてやってきて水へ飛び込もうとする。

 0!

 川の中から鋭い土槍が斜めに生えてスライムを突き刺す!

 スライムは水を吐き出し間一髪身体を裂きながらも内臓は避ける!

 しかし。

 そこまでは読んでいた!

 私は跳ばされたようで後ろに跳んだだけ。

 しっかり着地してからスライムに向かって跳ぶ!

 スライムは空中で水鉄砲を使おうとするがもう遅い!

 私の爪先が身体に触れる瞬間にスライムの身体が揺れる。

 そして大きく変形し私を包み込むように……!?

 まさかこの状況で攻撃を!?

 異常化攻撃欄に拘束とあったが、まさか。

 息する間もなく私はスライムの中に取り込まれた。


 ぎゃああああぁ!!

 息はもちろん目も開けられない。

 何故なら。

 体中が焼けるように痛い!!

 耳の中にも液が入ってくる!!

 音すら消化液に押し潰され代わりに痛みを訴えかける。

 頭の中から溶ける!

 死んでしまう!!

 痛さが全身を支配して意識を奪おうとする。

 痛い痛い、熱い、燃えるッ!

 酸欠にさせ鼻からも口にも入る穴には全てねじ込もうと消化液が焼いてくる。

 この一瞬で全身大やけどを負っているかのような衝撃。

 目と気管支がやられたら終わる!

 毛皮がほんの僅かな猶予を与えてくれている今が最後!

 私が、私で無くなるほどに全て溶かし消さんとねじ込んでくる!

 内側に圧倒的な力で締め上げ身体が動かないッ!

 筋肉と骨が悲鳴を上げ皮膚が死を覚悟する。

 死にたくない怖い生きたい生きたい恐い死にたくない死にたくない。

 人の身ならば不用意に叫んで内臓に嫌と言うほど消化液をぶち込まれていただろう。

 薄い部位と身体の穴が早くも感覚ごと存在そのものをなくしかけている。

 消える五感は痛みという最後の砦のみで曖昧に溶けかけている。

 だけど私だって勝敗決めるために飛び込んできたんだ。

 今からでも遅くはない。

 痛みの中でわめく私をよそに"私"は冷静にそのスキルを選んだ。


 スライムの身体が途端に震えだす。

 そしてその震えは巨大化し荒れ狂う!

 スキルのウォーターリップルを使った!

 ビッグ化するためにしこたま溜め込んでいた水が災いしスライムの身体が乱れに乱れる。

 そして形状維持出来なくなった途端に爆散した。

 その内臓を除いて。

「兄さん!」

 インカに追撃を頼み私は着地して次へ備える。

 声はサウンドウェーブで代用。

 兄さん、くらいならホエハリの発音語がある。

 サウンドウェーブで声の練習した成果が出たようだ。

 まだこのぐらい簡単なのが精一杯だ。

 ゲホゲホ、息がやっと出来た、体中が焼けるように熱い。

 ヒーリング! かつブルブル震えて耳の中も外のも消化液を出す!

 恐らく全身の毛皮がとけだしそうだったり、それがいきなり生え治ったりで私はグロテスクだったろうが私は見ないので問題ありません。

 うう……耳の聴こえがおかしい。

 鼓膜が焼けたかもしれないし外耳も一部欠けたかも。

 ただおそらくソレぐらいならヒーリング回復の範囲だ。

 祈るようにヒーリング。

 よし、全身の感覚が少しずつ戻ってきてきている。


 放り出された小さな脳のような内臓はやすやすとインカの口がキャッチした。

 そして噛み砕く。

 ガリッ。

「痛かてえっ!?」

 思わずインカが内臓を吐き出す。

 何か今凄い音がしたよ?

 石でも噛んだの? ってくらいの音だ。

 しかしここまで追い詰めれば後は煮るなり焼くなりするだけ……

「うわ、魔法!?」

 ひえっ、あの状態になっても何かしてきた!?

 あの内臓周りを球状に水が流れ出した!

 地面についているので半円形か。

 しかも水の流れの奥で地道に身体が治ってきているのが見える。

 その部分に水を這わせる魔法で滑り動き出していた!

 マズい、こんなに強いとは!

 ならばあの水の守りがなんなのか調べている時間はない。

 私は内臓の真上に跳び方角を合わせる。

 サウンドウェーブ!!

 地面すら穿つ音波よいけぇ!

 音波により地面に叩きつけられ相手の動きが止まった。

 水の守りも薄くなっている!

 だが決め手にかける。

 サウンドウェーブを固定したままもう一度跳び上がる。

 ……やりたくないが仕方ない。

 背中を向け私は唱えた。

 ヘビィ。

 跳んだ軌道にそって私は背中の針をスライムに向けたまま飛んでいく。

 サウンドウェーブを落下に合わせ私が喰らわないように発生位置を低くしていく。

 今私は空だから重さはあまり感じない。

 だがかなり怖い空中落下にヘビィをプラスしてとても怖い。

 どうなるのかわからないがこれで決めたい。

 当たれぇ!

 ヒット直前水の守りが消える。

 私のサウンドウェーブも消した。

 スライムとの間には何もない。

 そして無情な針が貫いた。




 一瞬気が飛んだ!?

 あんまりの衝撃に脳が揺れたらしい。

 私は仰向けのままなぜか動けない。

 ヘビィを解除し状況を確認。

 ひえっ、私の周り地面が少しへこんでる!?

 針が緩和材にならなかったら骨がやられていたかもしれない。

 完全に地面に接してるみたいだし針が深く刺さっているのだろう。

 そして恐らく折れ曲がっていて楽には抜けない。

 あー、衝撃でのダメージが全身にジンジンしてきた。

 骨が軋む〜。

「大丈夫!? 妹!」

「おーい、抜くの手伝おうか?」

 インカやハート姉の声が聴こえる。

「スライムはどうなりました?」

「お姉ちゃんの下敷きだよ」

 ハートに聞いたつもりだがハックが代わりに答えてくれた。

 よかった、倒せたようだ。

 よっこいせーヒーリング!

 何度かヒーリングをし続けるうちに全身への振動や骨へのダメージ、脳の揺れが収まってきた。

 それに背の針が新しく生え変わる。

 その力でついに私は地面から離れられた。

 いやあ、凄く大変だった……

 ログを見てみよう。

[スライムをキル +経験]

[経験値累積 +レベル]

 うわ、ほぼ1匹でレベルが上がった。

 流石格上だ。

「うんうん、十分強い相手ともやりあえるようではなまる! 一時はどうなることかと思ったけれど、お姉ちゃんは何かしてうまく直ぐに逃げたみたいだね。」

「手強いスライムだったね、ああやって見た目は似ていてもたまに恐ろしいやつがいるから気をつけてね」

 ハート隊がそう締め今回の狩りは終了となった。

「「「はーい!」」」

 ……あ、食べる部位一つ残らず吹き飛ばしちゃった。

 狩りとしては、失敗だなぁ。

 ……水浴びしておこう。



冒険者ギルド報告書


 【透過】のスライム

 状況:推定撃退

 水の中から水魔法を撃ち込み、また水魔法を大量に使っても疲れ知らず。

 水の中に要る時は視界に捉える事が困難な事から危険なネームドとして問題視され冒険者ギルドによる監視が行なわれていた。


 ギルドはネームドに対して魔物が自然と放つ個別で違う魔力の反応である魔力紋様を保存している。

 討伐冒険者たちが写しを持ってゆき、魔力紋様……つまり魔紋を使って捜していた。

 魔紋は対象が近くに棲息したあとが近いほど光って反応する仕組みになっている。

 なぜなら魔物は自然と自身の魔力を放ちながら生きているためその名残りがあるからだ。

 そして最も濃く反応した川辺にて冒険者たちは戦闘跡を発見。

 激しい戦いの跡には地面が凹むほどの衝撃が与えられたものもあったとか。

 そして肝心のスライムは川中をスキル等で探しても見つからず冒険者たちは誰かに討伐されたと判断した。

 なぜかその凹み穴に針が埋まっていたためホエハリとの戦闘があったかもしれないと調査報告書に記されてあった。

 そのため冒険者ギルドは本件を推定撃破とする。

 冒険者たちには調査分の報酬を譲渡。

 もし再び発見されるまで本件は依頼欄かは保留欄に移行。

 備考:ホエハリの針と穴が小さいものだったらしい。子どもが撃破した? だとすればもしかするとネームドの危険性もある。要調査?


↑新人へ 別に自然界ではよくあることだからこんなので調査派遣してたらいくら資金あっても足りないからな

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