二百一A生目 創造
ローズクオーツはやれると力強く言い放つ。
疲れ果てたものしかいないこの場においてローズクオーツの放つ気迫は凄まじいものがあった。
みんな作業を思わず止めてローズクオーツを見てしまうほどに。
「え?」
「わたくしは、錬金術師です! み、みならいだけれど……それでも! 見せてください。錬金術師からの観点なら、間違いなく見えることがあります。それにゴーレム同士だからわかることもあります!」
「ま、待って!? ワタシのゴーレムとはいえ特殊なもの、アンデッドなのよ!? そんな簡単には……!」
「やってみなきゃわかりません!」
「っ!」
「それに、わたくしだって、無策では来ていませんから! もしかしてと思って、ここに来たんです!」
ローズクオーツはユウレンの前にでてその石でできた手を伸ばす。
普段はほぼ棒にちかい腕でぴとりとユウレンの腕に触れた。
そしてローズクオーツが驚き遅れてユウレンが遅れる。
「な、なに!?」
「熱い……発熱するほどに作業没頭を?」
「え? あ、ああ、これね。人間は全力で集中しつづけると、どうしてもどんどん熱が高まるのよ。これは風邪ではないわよ」
ユウレンのいうこと自体は本当だ。
たとえ激しい運動をしなくても脳や精神を全力でぶん回せば体が過熱していく。
ニンゲンによっては確か37度や38度くらいに体温が上がっていく……一時的に。
「そ、そうなんですか? でも、もしかしてずっとなのでは……!?」
「それは……よくわかないわね。ずっとやっていたし」
「ユウレン様はもう半日以上異常な熱を持っておられます!」
「ちょっと……」
ユウレンが濁そうとしたが周囲の面倒を見ている従者係のものが代わりに答えた。
その表情はとても心配しているそれである。
そうか……やはりユウレンは……だから心配で見に来たんだけれど。
「そ、そんな細身の体でずっと高熱を!?」
「不安がることじゃあないわよ。今はこいつを動かさなきゃ、きっとこの先の戦いで誰かが死んでいく。ワタシは死霊術師だからわかるの、死のにおいが近いって」
「ユウレン様……」
「それでも、あなたが死んじゃうような無理を」「今みんな命懸けて無理してるのよ!」
悲鳴に近い喉から振るわれた声が場を支配する。
言ったユウレンすら言ってしまったあとに驚いて。
私もユウレンの心の奥にあった想いを今初めて垣間見た気がした。
「……今、ここで命を懸けていないやつなんて、いないのよ。ワタシも、ここが今はすべてがある場所だから、ここの全てを守りたいと思っている。でも、ワタシは直接的な戦いとしては役立たず、戦争なんてそんな、軍属のような心は無い……今も、無駄に心を散らして、街が戦火に襲われているというだけで、ずっとすごく不安なの。もう……目をつむっても眠くないのよ」
そこまで言葉を一気に言いきって息を吐く。
ユウレンの心は重い。
ユウレンが暮らしつくり生み出してきた。
アンデッドの量産はそのままアノニマルースの都市構造製造につながる。
工事するアンデッドたちの姿はアノニマルースではまったく珍しくない光景。
そしてアノニマルースを守るための兵士も骸骨たちアンデッドだ。
そう……それは同時にアンデッドたちを管轄するユウレンこそがアノニマルースを創り出したとも言える。
だからユウレンのここに関する想いはもはや故郷といっても過言ではなく。
「だからこそ! わたくしにも荷をおわせてくださいっ!」
その上でローズクオーツは断言する。
ローズクオーツにとってアノニマルースは……間違いなく故郷だから。
「ローズクオーツ……!」
ローズクオーツはそう宣言するとアンデッドのほうに寄っていく。
あちこちを見回りすぐにチェックを始めた……
「これが動かない筐体……見た目は出来上がっているけれど……確かに何か無理を……ココは補強できる……」
「ちょ、ちょっと! 勝手に弄らないで!」
「だったら一緒にやりましょう! わたくしにも賭けさせてください、命を!」
「それは……!」
ゴーレムにおいて命などたいしたものではない。
彼らは完全に破損してもベースさえあれば修復できるからだ。
しかしユウレンはそうではないことをしっている。
ユウレンにとってゴーレムとは、アンデッドとはかけがえのないものだ。
ニンゲンよりも密接にいた存在で。
集団生活のためにつらく苦しいという感情も持っていると知っている。
造った主は記憶を直接のぞくことも出来るのだから。
「……いい!? この子、本来は動くはずなの。一緒にやるわよ」
「ユウレンさん……! はい!」