百九十二A生目 決意
終末の獣。
それが私に付与されていた謎の力。
見せられたところで私はよくわからなかったが……
見せられたみんなはすぐに顔色を変えていた。
詳しい話は聞けなかったしみんなも異様に今まで触れようとしていない。
まるで触れることが禁忌のように。
私だけぜんぜんピンとこないって点でヤクい物なんだろうなあ……
まあ所持者を蝕まないだけマシか。
今それのせいで最悪な力を振るってるんですが。
「あの、攻撃が通らないやつは、少し手応えに覚えがあった。次は準備をして、通す」
「俺も、いざとなったらやれることがある。あそこでは、そういう準備はしてこなかったけれど……今度こそ」
「うう、こういうときだと僕は何もやれない……あんなのどうすれはまいいか……で、でも! まだ終わったわけじゃない! ふたりの話と、まだ使えるツテ使って、いろいろ探ってみます! より正確な正体を!」
「ああ、やろう!」
3体ともついには立ち上がり力強く宣言する。
私がこうしていることしかできない間にもみんなは勝手に立ち直っていく。
「ローズのために!」
「「ローズ(さん)のために!」」
ちょっとその掛け声はよくわかんないけれど。
戦局は目まぐるしくうごく。
私が頼んで移動すると剣ゼロエネミーは戦いの気配へと移動してくれた。
今は空ではなく……門前。
「扉に張り付けー!!」
「門上を排除しろ-!!」
「門に近づけるなっ!」
「砲撃隊構え、ってえ!!」
たくさんの砲口が一斉に火を吹く。
射撃訓練され特化した骸骨たちによる射撃。
砲弾は当然多くを吹き飛ばす。
また小銃の連射もそんなに威力はないはずなのに的確に撃ち抜いていった。
光を込めるエネルギー量の問題で銃はあまり威力が乗らない問題がある。
結局届くのは小さい弾頭のみなので金属の塊全体にエネルギー乗っけるのとあまりに差があるのだ。
それでも特化型は凄まじい威力を誇る。
近づかれたらなんも出来ないらしいけれどね!
エネルギーが乗る範囲の大きな矢を放つ弓部隊が空を飛んで門上を狙ってくるやつらを的確に撃ち抜いていく。
「よし、ラインが見えた! 魔法部隊! 合わせて放て!」
そしてアンデッドではない部隊はエネルギー消費の大きい魔法を撃つ隊も多くいる。
私の教えを伝授され効率化を多くはかっているけれど限度はある。
というか私的には他者がそんなに魔法連打で苦しむとは思っていなかったが。
儀式をつくりあげ魔法を同時に唱え上げた10体から魔力が地面に染み渡っていく。
そして巨大な紋様が輝き空へと光が伸びていく。
1つの地点に集められ混ぜられた魔力は信じられないほどに練り込まれ渦巻きねり飴のように濃密にうねり輝く。
そして高く空へと撃ち出された!
儀式としての魔法は個人では到底なしえない何かをやり遂げるために行われる。
ゆえに起こる出来事は戦術を揺るがすもの。
空から赤熱した塊がいくつも戦場へ降り注いでいく。
光の隕石だ。
それは高高度から降り注ぐ落下エネルギーの塊。
大きさなんて大砲の砲弾1つ分あるかないかくらいだ。
しかし尾を引きながら空から降るそれは……
明らかに個々人でどうにかできる範囲を大きく超えていた。
「マズイッ、防げ防げ!」
向こうの人形が悲鳴のように咲けばれる。
空に対抗するよう輝くシールドの魔法。
防御の魔法たちはやはり準備されていたものらしく飛んでくる隕石すらも1撃無傷で防いだ。
「これなら……」
だからこそ油断した。
油断せざるを得なかったから。
人形の腹に剣ゼロエネミーがぶっ刺さるまでは。
「ハ?」
首って堅いんだよね。
だから高速ですっ飛んで刺さるには胸の方が効率よかった。
さらにゼロエネミーはココへ来るまでに多数の軌道をとおりたくさんの相手を斬り込んで来た。
魔法を行使し防ぐために無防備になったその体をだ。
しょせん通り際に斬り裂いただけ。
大打撃はではないが……
剣を抜くと共にバチバチとエネルギーの音を立てて光を再形成していく。
今度は速度より威力重視。
逃さない。
「イツノ……間ニ!?」
今度こそ重たいギロチンのような1撃が人形の首を狩った。
やっぱり人形は強くぶった切れるほどじゃないし瞬時に後ろへ下がられた。
しかししっかり入ったのは事実。
深いところへ入りきっちり吹き飛ばした!
そうしてここからだ。
人形は急いで立ち上がる。
そして自信の腕から刃を剥いて。
「ア?」
空を見る。
そこには守るための結界なんて無い。
「ハ!?」
複数の防御魔法維持者を切り払われ集中力を無くされればどうなるだろうか?
それが今の空から降り注ぐ隕石になんの天井もない状態だった。