百八十七A生目 戦力
大量の作戦とリアルタイムの映像が各地から送られている。
通信兵という概念らしい。
私がどうこういう前に映像装置をアノニマルース防壁のあちこちに仕掛けてあった。
正確には映像ではない。
この世界の映像はまだすごく高級か近くまでを映せる立体映像のどちらか。
ただし軍事的にはどちらも利用用途にあわない。
帝国の最新式装置。
帝都奪還戦でも使われていたらしいそれを驚きのやすさで譲ってくれたらしい。
当たり前だけれど他国の最新軍事兵器を譲ってもらうなんて普通は出来ない。軍事的優位性がなくなるからだ。
さてこいつが映し出しているのは黒い背景に白い線が地形をえがき赤い点や緑の点がたくさん並んでいる。
……レーダーだ。
私もスキルで似たようなことはやるけれど魔法軍事機材でも高精度なそれがしっかり描かれていた。
……おびただしい数の赤点が。
『さて、これが今押し寄せてきている敵の状況だ。まあまあだな』
「えっ、いや、これパッと見ただけでも……」
グレンくんが書かず小声でもらす。
それにジャグナーが察して肩をすくめた。
『まあ、数はな。今ところ起動させた罠に手間取っているようだから全体の進軍速度と統一性はそこまでじゃないが、逆に言えば敵はまだまだ増える」
「魔王戦のときほどいるじゃないか!? あ、書かないと!」
グレンくんが思わず声をはる。
いや……本当にそう。
アノニマルースみたいな小規模な都市がいまだ押しつぶされていないのはほぼ奇跡だった。
もちろんそれは彼ら軍部が叩き出した奇跡そのものなんだけれど。
『魔王戦並の規模で兵が展開されていても、幸いゾンビというわけでもない。当然アノニマルースは皇国に軍事申請を出してあるから、ここからは防衛戦だ。最終的に挟撃することで話がついている』
『10万のアンデッド兵ですか』
『そうだが、まだたくさんある。そこが主力じゃないのはわかってるだろう?』
『アレですか。それと……魔物軍も』
『魔物軍は常時戦闘出来ないだけで、戦力としては最高だからな』
『俺たちも、時間になったら戦います』
『期待している、ただ、ローズ奪還チームは必須だから、疲れすぎないようにな。ローズが帰ってこなければ、意味がない』
ふたりが私の方……あっ違った。
剣ゼロエネミーの方を見る。
意図的に浮いている剣はなんらかの意思を感じるだろう。
『もちろん、この剣のためにもローズは絶対取り返そう!』
『この剣、普段はこんな風に浮いてはいないんだがなんなんだろうな』
私がいますとは言えない。
ちょっと筆記をやってみようと影で練習したらあらゆるものがズバズバ斬れて大胆な線たちが生まれた。
そのあとゼロエネミーがひどく落ち込んだのでなぐさめつつもうやれないなと判断した。
それができないなら戦場働きするだけだ。
結局これ私が意識を付属させているだけであって動作そのものはゼロエネミー頼りだからね……
ちなみにうなずくと机が斬れる素敵な剣だよ!
『ローズが何かをした、と思う。少なくともローズが大事にしていた剣が持ち主のために動くうちは、ローズは無事だと思う』
無事じゃない方がよかったんだよねえ。
死んでいれば脱出できたから。
神相手にそういうの抜かりなく対策されて封印されているような状態なの本当にだめだったな自分。
『なら俺たちはあいつの戻る場所を死守するだけだ。今回敵は正門方面に集中している。ほかの方面は、こちらの出方を探るための要因がちらほらいるがそれだけだな。一極集中だ』
『これは、戦術的にはどうなんだろう?』
『やられる側としてはキツイな。向こうが薄くなる包囲のほうが、強固な壁に覆われているこちらとしては守るに易くなる。今回は、先が見えない戦力を1つの門突破にぶつけられているから、間違いなく抜けられる
その時々で戦術評価というものは変わるらしい。
帝都戦の時に包囲したのはアンデッドがあるゆるところから溢れ出していたからだ。
封殺し外部に漏れないよう抑えきれなければ一瞬で味方が横から食われるためだとか。
今回はコチラは閉じこもっている。
向こうは無理やり開門捺せなくてはいけないので他に回して罠にかかっている場合じゃない。
一番門が大きく交通量が大きい門を狙うのがベターだ。
『だが、アノニマルースが今悩んでるのはそこじゃない』
新たな資料がはられる。
それはスケッチのようなものだ。
……高速で門を飛び越える何かがかかれている。
『敵の航空部隊だ。時折揺れているのは、こいつらが上空から爆撃するからだな』
『こっちも航空戦力はあるけれど、足りてないということか』
『ああ。遠隔砲撃は結界で落とせるがコイツラは直接来る分結界では防ぎきれない。アノニマルース上空で戦う部隊は限られているんだ』