百八十五A生目 表塔
スキャン。
それが人形たちの隠された目的。
私の中のあかしひとつ見つけるためにここまでやるか!?
根本的に優しげな神たちと立場が違うのがわかる。
この人形神は下々に興味がないからこそ……
徹底的に利用し目的を果たす方向に舵を切ったんだ。
「そこまで大規模な作戦で、世界を滅ぼしたいでもなく、なにをする気だ……!?」
クライブが当然の疑問を投げかける。
遠いから叫んでいるのがよくわかる。
そして……どうせろくでも無い目的なのもわかる。
「私は、高貴復権のためにここで宣言しよう」
指がゆっくりと高く持ち上げられていく。
「じつに、よくここまで来てくれた……道中や、ほかの妨害でもっとけずれるかと思っていたが、みな無事なのはいただけなかったが……終末の獣をここにこさせるのは成功した。だから、計画の最終段階を、宣言する」
周囲が突如うなりだす。
それと同時に私の全身からパワーが吸われるような感覚が!
「クッ……カハッ……!」
「ローズ!」
い、意識がとぶ!
ギリギリこらえている中で全体の振動は続く。
上から光が?
見上げてみると……
「空が……あいた?」
「どんな空間のねじれが起こっているんだ、ここは……」
空の景色が変わっていく。
空間の振動がおさまりると空には輝く空が。
……夜空が。
これは外だ。
「な、なんで……外が……!」
「時間が来た。もう動き出したものは、誰にも止められない」
空が白みだす。
いや……このモニュメントの上側から輝きだしている!?
凄まじい光量だ。
「まぶしっ……!」
「なんだ? これは、塔のある空間の外……?」
「通常の世界では『門番』が見張っている。必ず発覚するし、何より閉じられた門が厄介だ。通常では視認すらできず、迷宮世界でのみ見える」
「2つめの月……昔の神が封じられている、監獄……?」
「やはり、お前は知っているか。そうだ、あそこは腹ただしいことに、昔の神々が封じられてしまった。今ではほとんどの者は、月だとしか信じてはいない」
「封じられた神々……ちょ、ちょっと待った! まさか地獄の門を開く気なの!? そんなことをしたらどうなるか、わかってるだろう!?」
ホルヴィロスが焦って単身こちらへ飛んでこようとする。
ただいかんせん距離がある。
そう簡単にはこれない。
それにあの焦りようはまさにホルヴィロスの親が関係する。
地獄の門番……ケルベロス。
最近彼女が忙しそうにしていたのは知っていたが……絶対この人形神が何かしたんだ。
私は封じられた向こう側はよくしらない。
ただ召喚された悪魔……月の神たちですらかなり変で恐ろしいものが多かった。
地上に直接きたら……どうなってしまうのだ。
そんなこと絶対させられない。
だけど……私はもう暴れる元気すら取られている。
まずい……どうにか……あの手段を……!
「さあ、今甘いパンを食べさせてやろう。遅くなったが……また、地上に高貴を取り戻そう。神々の時代の、再閹だ」
空の光量が増していく!
「くっ、俺たちも行くぞ!」
それは月へ向かって伸びる塔が。
「こ、これどうやって止めるんですか!?」
天に住まう神へと手を触れんとする所業。
「あそこに封じられているやつらは! まるで制御がきかないのに……! いや、それよりも、ローズ! ローーズ!!」
ホルヴィロスが必死にツルを伸ばしてきたが……
……空間が震えた!
あまりに重々しい音は何かが射出されたとすぐに理解できる。
「ぐわーーっ!?」
「ホルヴィロス……!」
ホルヴィロスが衝撃に巻き込まれ吹き飛ばされ落ちていく。
月まで届く塔の光。
異次元から無理やり繋げた道が。
きっと今届いた。
ここからではしっかりそれを見ることはかなわない。
ただ感覚的に向こうと繋がったのがわかる。
これは私がこの装置に繋がって……装置と証が一体だと認識されているから。
それを通して私もわかるのか。
私自身の意識はこんなにも薄れているのに。
「な、なんだ!? 揺れている!?」
「さて、邪魔者には出ていってもらおう。というよりも、早めに帰ったほうがいいぞ? この合図を見たら、お前たちの大事な拠点は、もう襲われているだろうからな」
「な、に……!?」
「万が一、取り返されると厄介だ。どうやるかは私も推測がつかない分、何かでやられるかもしれない。だからこそ、手をうった。終末の獣の拠点を滅ぼして、危険な手を封じさせてもらう。ここから私は、忙しいのでね」
「ふざけるな! 返せっ!! っうわ!」
また震えだしてグレンくんたちの足場が崩壊していく。
それだけじゃない。
空間がうねり黒く光がねじまがっていく。
「さあ、塔の、崩壊だ」