百八十三A生目 一話
美しすぎて怖いとはこのことを言うのだろう。
精神に来たる生物の常識の埒外にある美しさ。
直視しすぎると精神に来たす。
感情がどうこうじゃなくて存在がそういう概念に包まれていて心に打撃与えてくるのやめてくれませんかね……
邪悪すぎて吐き気を催す醜さというのもあるけれど逆で吐き気を催すのはあるんだな……
「……色々聞きたいけれど、私が終末の獣というのは?」
「ふむ、それは……あらたな客と共に聞かせるとしよう。どうせ、ここからは運命の奔流に逆らえん。私も、お前もな」
「それってどういう……」
「……! ……ズ! ローズ!!」
問おうとした瞬間にとおくからの声。
雲の切れ間が晴れてゆき下の遠くが見える。
そこには駆けてくる4名。
「グレンくんたち! よかった、無事だったんだ!」
「今助ける! ローズを離せッ!」
グレンくん、ホルヴィロス、たぬ吉、クライブ全員いる。
よかった……
もし全員こんな大掛かりな装置作られていたら終わっていた。
ただ人形たちが明らかに情報不足で戦っていたのでそれはないとは踏んでいたけれどね。
それでも私がこうなるのメチャクチャ納得いっていないけれど……
「それじゃあ、聞かせてもらうよ。終末の獣とは?」
「やけに落ち着いたな。それだけ信頼があるのか。終末の獣のくせにな……いや、むしろだからこそか」
「おい、なんの話だ! お前が世界を人形に襲わせた犯人か!」
「そうだ、勇者殿」
「っ……!」
「勇者……?」
グレンくんが言い当てられクライブがそれで初めて気づく。
なるべく隠していたからね……
ここでバレるのはあまり想定していなかったのか。
「さて、終末の獣とは、文字通り終末を寄せる災厄の獣のことだ。その者、世界に呼ばれし時、世界に終末が訪れん。終末を乗り越えんとせしものたち、それはあの日の結びを得るもの。雪を超えてゼンと化せ。旧き神の占いだ」
「な!? その言葉は!?」
「知っているのか? いや、どうせ中途半端に、だろうな。でなければ、ここで聞こうとも、そこで驚くのもしないはず」
人形の神の言うとおりだ。
あの時の言葉は……
蒼竜たちは、
『それはあの日の結びを得るもの。雪を超えてゼンと化せ』
それが合言葉のように使われていた。
詳しい意味はあの時わからなかった。
おそらく意図的に伏せていたのだ。
私がそれにうたわれる者だと。
「神の占い……? それがなんだと言うのだ」
「人のやる占いは、神を猿真似したものだ。旧き神のそれは、直接未来を視て、伝えたもの。ただし占いゆえ、そして旧き神ゆえになんとも解釈にわかれる言葉だけどね」
「解釈……」
私がその解釈について考え込む間にも話が進んでいく。
「その終末の獣というのがローズらしいから、捕まえるってことなのか!?」
「ある意味そうだ。しかして、それは私のため……そして、終末の獣だという確信はある。終末の獣は……」
人形神の眼が怪しく光る。
そうして私に指を沿わすと……
「ウッ!?」
「お前!」
指が私の中に入った!
怪しい光がまるで身体など無視するようにズズズと沈み込む。
く……苦しい。なんだこれは!?
すぐに指が引き抜かれる。
それにともない私もみんなも驚きの顔で固まった。
私から傷もなく引き抜かれたもの……それは凄まじいオーラを放つ黒い塊。
まるで燃えているかのようなそれはザラザラとした石のようで同時に生きているように脈打っていた。
「終末の証。持ち主はわからぬだろうが……」
「う、うぐっ……!」「あっ……あ……!」「チッ……!」「マズイな」
「他者ならば、嫌でも理解させられる。おっとっ」
私の中から出てきたその石を見てみんな顔をしかめなんなら吐き気すらもこらえているようだった。
しかも人形の神すら顔をしかめる。
ただ……私だけが不思議となにも感じなかった。
人形の手から振り切られるようにその魂が引き戻される。
「見ただけで嫌でも理解させられる、それがこの終末のあかし……なにより、くっついて離れん。しかも隠蔽までされていた、な。誰かがお前に施したのか……」
隠蔽……あっ。
私の首からかかる竜の鱗のアクセが光を反射する。
そうか……これは神力を隠すためだけだと思っていた。
それに私に合う相手みんな私よりも蒼竜の神力に気をとられていた。
いろんな大神や小神にあったけれど……
あれは私のこのあかしを隠していたのか。
というかこれ何?
終末のあかし……私の中にあった?
いつから……いつの間に?
『今から行く世界は、魔法や魔物のような魔が溢れた不思議で危険な世界』どこの言葉だった?
『そこにキミは転生をします』いつこれを……?
『そんなキミに祝福を!生まれ変わってから確認してね!』そう、あれは……?