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百七十六A生目 多勢

 火をふく腕。

 それは物理的貫通がきかないがゆえにたまたま選ばれたのだろう。

 たぬ吉にとってはたまったものじゃないが。


「物騒なもの出さないでくださいよー!」


「脅威判定認知、攻撃開始」


「しまった逆効果でした!!」


 たぬ吉のゴーレムがたぬ吉ごと燃やされようと炎を向けられる。

 ゴロゴロ転がって逃げるたぬ吉はわりかし相性がいいかもしれない。

 ただし搭乗者は熱い。


 文字通り尻に火をつけながらの高速デッドヒートを室内で繰り広げる。

 狭いとは言わないが高速戦闘するほどじゃない。

 特にたぬ吉のゴーレムはそこそこサイズがある。


 転がる音は大きく驚異的だが実際は転がって火を消して逃げ回っているだけだ。

 人形側もかなり慎重にデータを集めている。

 どうやれば本体にダメージがいくのか……たしかにわからないからね。


「な、なにか手は……」


 たぬ吉は周囲をみまわすものの一発逆転の手などそんなにはない。

 リスクが高すぎるのはあるけれど……

 そうこうしている間にふとたぬ吉は気づいたらしい。


「そうだ……みんなだ」


 たぬ吉は慌てていた。

 だからこそ気づかなかったというか思い出せなかっな。

 私達が実質スキルで同期し繋がっていることに。


 意思や場所がほぼリアルタイムで伝わってくる。

 たぬ吉自身があちこち跳ね回ったおかげて地形も多く把握できるようになった。

 あとは……やるだけ。


 たぬ吉が炎に炙られながらゴーレムで転がる。

 ゴーレムの回転により着火部分が地面に押し付けられ消化されていく。

 それでも中は地獄のような暑さになっていくが。


 たぬ吉の植物は生きていて水分と油分が多く通っている。

 この状態ではそれなりにしか燃えない。

 だが暑いものは暑いのだ。


 たぬ吉は自身の足裏や口からとんでもない量の熱を常に出しながら駆ける。

 熱を逃がすにはそうするしかない。

 とろけるような顔つきで必死に駆けていた。


 そうして……


「ここだ、ついた!」


「何をシテイル、サラニ延焼サセッ」


 人形が……吹き飛んだ。

 それは別の人形が飛んできたからだ。

 しかもそれは吹き飛ばされた人形。


 私が弾き飛ばした人形だった。

 たぬ吉がやったのは全体の把握。

 そしてタイミングをあわせてみんなの場所に飛び出すこと。


 ただ闇雲に逃げ回るのではなくタイミングをあわせた行動。

 向こうからしたら偶然にみえるだろうが綿密に念話のスキルで互いの把握していたからだ。


「離れていても、協力はできる……!」


 たぬ吉は一気に反転し姿勢を変える。

 両腕と型とついでに地面に種を巻いて。

 花咲くと一気に光線を放った!


「今までためにためた分、お返しです!」


 たぬ吉はにげながら最大の反撃をためていた。

 たぬ吉が操作できる魔法の量は3つまで。

 それ以上はたぬ吉が耐えられない……『普段使いならば』。


 かわりにチャージしてひたすらただ1撃だけ制御するならば。

 それならば3つまででなくてもいい。

 制御しきれず撃ったあと花が壊れてもいいのなら。


 私を超える5つの砲台で発射できた!


「「ヌアーーッ!!」」


 たっぷりと植物のビームを浴びせられたら人形たちは悲鳴を上げるしか無い。

 凄まじい爆発と共に壁まで押し込まれる。

 たぬ吉は枯れた花たちを切り離してそのまま再度転がる。


 今度は前進。

 人形たちが復活しようとするさなかたぬ吉はついに反撃のときを迎えていた。

 神の力で大ダメージを与えられていなくとも前に突っ込んで殴れば手数が稼げる。


「今度はこっちの番です!!」


「クッ、反撃!!」


 2体の人形は大きなブレードを腕から生やして受けながらきりさこうとする。

 しかし。

 たぬ吉のゴーレムは植物のツルなどの塊。


 果たしてそれがどこまで意味があるのか。


「はあっ!!」


 ドグシャ!

 それは殴る音にしては重すぎる、まさしくゴーレムの1撃。

 容赦のない拳が人形たちの刃ごと押しつぶしていた。


 もちろんその腕をひいたらもう片側も。

 人形たちは痛みにひるまない。

 対抗しようとすぐに腕を伸ばすが質量といきおいで潰される。


 たぬ吉は弱くない。

 むしろ私のサポート魔法系と常に重ねた経験でレベル的にはかなり高い。

 戦い慣れしていないだけで。


「みんなが! いるんだ! ボクだけじゃない、みんながいるなら、戦える!」


 ……たぬ吉の元へ覆うように淡い輝きが飛んでいく。





 クライブは2体相手に剣を振るっていた。


「スキを作ラセルナ! 絶エ間ナク攻メテヤラセルナ!」


「面倒だな……」


「息を上ゲサセロ!」


 クライブはその巨大な剣で的確に相手の打撃を防いでいる。

 ただし攻め返せるわけではない。

 なんどか攻めてはいたがどうも手応えが浅いことが気になっていたらしい。

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