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百七十五A生目 達磨

 グレンくんが見たのは反撃ののろしだった。

 それは私のイバラ。

 人形たちの背後から急接近していて。


「勇者を仕留メルゾ!」


「敵、コノママ致命傷を与エル」


 そこにイバラが伸びる。

 ムチのように音速を超えた。


「ッ緊急!」


 当たる寸前にそのことに気づいた人形たち。

 私のイバラは避けることかなわず。

 振り向いてギリギリ刃や拳をあわせるだけだった。


 当然体勢的にも相手は威力負けを起こす。

 イバラのムチにより体勢を崩された。


「ッ!」


「クッ、何をシテイルンダ、アイツラハ」


 先程からの会話で察していたが互いの状況把握が出来るようなシステムはないらしい。

 言葉と目で組んでいる。

 だから包囲網が突破されたことに気づいていなかったのだ。


 だからこそ……今1つの光が目を輝かせているのにも気付けなかった。

 他の人形の視界にはいっていたがそちらはそちらでそれどころではなかったがゆえに。


「らあああぁぁぁ!!」


「ハッ!?」


 あまりに鋭い突き。

 今度はわざとではない受け。

 人形がそらしきれずにその身に刃を突き立てられていた。


「焦っていた……ペースを乱されて。けれど、ちがう、違うんだ。俺はもう勇者じゃない」


「コイツ……動キが!?」


「俺は、俺だ!」


 そのまま壁まで叩きつけた後蹴って突き刺した刀を剥がす。

 当たり前だがこの程度では人形は倒れやしない。

 さらに背後から人形がもう一体迫る。


 そこでグレンくんが取った行動は……


「ッ」


 納刀。

 人形たちは戸惑った。

 非合理的(データにない)からだ。


「ナ、スキダラケダ!」


「対応出来ナイダロウ!?」


 一瞬の間のあとに人形たちの再突撃。

 なにせスキだらけなのだから。

 武器は表に出ておらずいかにもなスキ。


 もし人形たちが張り詰めた剣気を読み取れたならば取る選択肢は逃げ一択だったかもしれない。


「この俺の足で、未来へ行く!」


 人形たちがグレンくんへ傷つける瞬間。

 光が瞬いた。

 一閃の軌跡だけが人形たちに映る。


 きっと気付いた時には既に壁や床に貼り付けられていただろう。

 あまりに強烈な袈裟斬り。

 何がおそろしいかって前と後ろ両方を斬り飛ばしたということ。


「ナ……!?」


「認知不能! ナニが起コッテイルンダ!」


「浅い、か」


 グレンくんが今までのうごきを動とすると今は静だ。

 動かない。振るわない。刀の力よりも……腕前の技量で迎え撃つ。


「斬るさいになにかで防がれた……? 身にまとう神秘に塞がれた? 俺の勇者としての力があればな……ないものねだりか」


 グレンくんが人形の耐久力を削れなかったのは神の力に阻まれたせいだ。

 神の力こそは絶対的な差異。

 だからこそ……私の力がいる。


 グレンくんをどこから飛んできた輝きが包む……







 同じ頃。


「ひゃああああぁ!!」


「待テ! データにナイヤツ!」


 たぬ吉は穴だらけだった。

 正確にはたぬ吉のゴーレムが。

 中にたぬ吉はいるもののたくさんの太矢を受けまくっている。


 貫通し穴があきまた再生。

 それを繰り返していた。


「攻撃止めてくださいよぉぉ!!」


「対象が活動を停止シタナラバ」


「ヤダーッ!」


 たぬ吉の足……というかゴーレムの足がしまわれてゴロゴロ転がりさらに加速していく。

 たぬ吉も反撃したいのは山々だが今攻撃のセットアップしたら撃ち抜かれるのはわかりきっていた。

 他の面々と違って戦いもそこそこ久々だし何より単独で動くことに慣れていない。


 つまり反撃できずパニック状態になっていた。


「助けてー!」


「コイツ……全然効イテイナイ……」


 しかし同時にチャンスでもあった。

 最近表で活躍して戦っていない……ということ。

 それはデータのなさを表していた。


 1体しかついていないのはデータ収集のためだ。

 同時にたぬ吉が派手に暴れるタイプでもないから。

 今までの行軍でデータを十分集められればよかったがたぬ吉のやったことは固定砲台がほとんど。


 有効打は何でどんな特徴で……とまとめると首をかしげるしかない。

 ディープラーニングはとにかくデータ量がいるのだ。

 ちょっと遠隔でそんなふうの戦闘があった……程度ではあまりに確度の低い情報しかない。


 ふつうのニンゲンあたりならどてっぱらと頭を矢で貫通させてどうもならないなら対策を考えるはずだ。

 それなのにいまだしらみつぶしに撃っているのは人形があくまで人形だということを表していた。


「実測値……効果が見ラレナイ。貫通確認、データ不足、別方法を模索」


 散々矢だるまにして満足したのかやっと別の方法を取るようだ。

 ……物騒な音をたてて変形された腕は大きな穴が空いていた。

 というよりあれは……


 火を噴いていた。


「うわっ!」

 

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