百七十一A生目 歓迎
AI学習魔法の制限。
それは私自身は1つまでしか習得できないということ。
例えば今私は前に覚えた槍と盾の魔法はもう使えない。
使い勝手のあまりよろしくないビーム系魔法が使えるようになっただけだ。
銀河のドラゴンが使う全身あちこちビームとドラゴンブレス……
魔法で似たのが出来るしドラゴンブレスは1度使うとしばらく撃てないらしい。
まあ最初のふいうちには使えるのかな?
結局おおきいビームは巨体相手じゃないとヒット率が悪いんだよね。
さて今は80階。
次は90階に行くこととなる。
空中に現れた足場と転送装置。
それに次への扉。
私達は陸地にやっと足をつけることができたわけだ。
「おそらく、次は総力戦になると思う」
「それは100階ではないのか?」
「ううん、おそらく100階は彼らの住まうところ。もちろん、敵の神が待ち受けている可能性は大きいけれど……」
「なるほど、最終防衛ラインというやつですね」
「うん。向こうも居住を荒らされたくはないはず。ここが勝負の決め所になるよ」
「このまま大人しくしといてくれればいいか、そんなことしないだろうな」
「話を聞く限り大人しくしているタイプではないだろうね。神のなかでも相当迷惑な相手だから、十分気を引き締めても足りないくらいだと思う」
「ホルヴィロスさんの言うことが本当だとすると……かなり恐ろしいですね」
「大丈夫、罠は仕掛けられているけれど、食い破る前提なら行けるさ!」
最後グレンくんが啖呵を切ったのをきっかけにどんとん話が回っていく。
もはや相手は追い詰められているはず……
それなのにこの悪寒のような直感。
まだまだみえていない悪意がそこにあるかのように。
私だって完璧に勝ち進められるならそっちのほうがいい。
だけれどもそれだけが冒険ではないのも知っている。
最奥に待ち受けるのはどんな悪意なのか。
それを知るものはここにはいない。
さあ待っていろよ……せかいを脅かす敵の神。
「そういえはこの間に逃走した、ってことはないんですかね?」
「大丈夫、ワープの痕跡を調べているけれど、そのようなログはないよ。それと、相手はわざわざ誘っているはずだから、ここで引く選択は元々ないはず」
「向こうへ飛んだらいきなり檻の中、ということには気をつけたいな」
「気をつけようがないのがこまりどころですけれどね……分断はされないのでしょうか?」
「そういう仕組の魔術回路してないか、大丈夫」
直通のエレベーターみたいなものだ。
たぬ吉の不安ももっともだがエレベーターがいきなり割れることはない。
逆に言えば……
「うん、そうだね……向こうもどこに出てくるかわかっているから、罠をしかけるのはあまりに簡単だと思う」
「罠は前提で行くしか無いか」
「誰かが捕まらないようにしないとね。捕まったら、かなり不利を強いられるから」
「ま、もしもの時はワタシがいるからね。いろんな命たちが無事帰れることは、私が保証するよ」
ホルヴィロスはこういうときに限って頼りがいのあることを言う。
普段からこのぐらいならいいのに。
「ほんと助かるよホルヴィロス、命、たくしたよ!」
「ほわぁっ!?」
「えっ」
「突然そんな、大胆な、ちょっとぉ!!」
「もう帰りたくなってきた」
前足で顔を隠して照れているホルヴィロス。
こんな風にならなきゃなぁ……
90階に到着。
そこは異様だった。
今までは散々こちらを苦しめ一方的有利をとりにきていた。
しかし今回はちがう。
安全な室内。
和装の部屋にもみえるが非常に奇っ怪な雰囲気。
木造なようにみえるがあくまでこの塔の床や壁だろう。
そうそう破壊できるとは思わないほうがよさそう。
「今回は虹色に光ってなくてよさそうですね!」
「この屋敷みたいな広間は一体……ん!?」
グレンくんがすぐに刀を引き抜けば何かを弾く。
床に突き刺さったのは太い矢じり。
殺気はなかったけれどこの攻撃が来たということは……
「お待ちしておりました」
「……人形」
「しかも大勢とは、大歓迎だな」
全員静かにそして確かに戦闘態勢をとる。
今のはあくまで不意打ちだった。
しかしあちこちから姿を見せる人形たちに冷や汗が出る。
あの世界をひっくり返しかけた強力な人形たちが……10体。
いくらなんでも多い。
数は力だ。向こうが技量とパワーどちらも備えているから特に。
「あわわわわ」
「想像以上の大歓迎、だね……」
「人形の倒し方は、共有してもらったけれど、これは……」
一応ホルヴィロスの言う通り人形たちのデータは全員に共有してあった。
だけれどもサシでしかやりあったことはない。
「いや、再生怪人は倒されるのが相場なんだよ!」
グレンくんの掛け声で戦局がはじまった!