百六七A生目 銀河
かなり危険な呪物を読み解いた。
少なくとも友達にはなれないね。
一般人は読み解かないよう警告を出してもらおう。
まあとにもかくにも。
「出来た……」
「あ、転移できるようになったの? ローズも休みなよ」
「え? 水に囲まれた状態で休むなんて嫌だけど」
「えぇ……」
「出来たのなら、乗り込むまでだ」
「ローズは私が診る」
こういうお医者様は頼りになる。
ホルヴィロスが私の体を一気にメンテナンスしていく。
もはや手慣れたものだ。
まるでレースカーがピットインして修復を受けるときのように。
流れるようにしっかりとネジを締め回していく。
体を治すという治療のネジを。
まあ比喩表現である。
実際は私の体に傷一つなくなりピカピカになった。
なんで? ピカピカになる理由はわからない……
「よし、こんな感じかな? どう? 調子は」
「あ、結構集中していたのがリラックスできたかも」
「それはなにより! ローズの体、大事にしなきゃね!」
「う、うん」
ホルヴィロスがウインクで星を飛ばしてくる。
それを避けつつ私は魔法記述を起動する。
えーっと……バイパス確保して……私達の属性を隠蔽し……偽装パスを通して……
「とおった! いけたいけたよ」
「いきなりボスってことなんだよね?」
「そうだねえ、かなりの激戦になるんじゃないかな。ここまでのことを考えると、楽な戦いにはならないと思う」
「ついでに言えば、環境も不安視されるな。いきなり水場はもう無いだろうが、似たような極地に放り込まれる可能性は高い。だが、対策は取りづらいな」
「危ない場所の対策をしながら、ボスを警戒しなくちゃいけない、そういうわけだね?」
「これまで、ボスエリアに入ってからボスがでてくるまで、少し時間変ありました! あのときに環境を整えられると思いますよ!」
「わかった、ローズ、作戦を組んでいこう。それで、優先される対策は各々、ローズがそこをカバーするようにしよう」
「分かった、じゃあ細かく立てていこう……」
私達はボス攻略について作戦をたてる。
これまでの傾向から見えてきたものと見えない地形。
だいたい何かが来るのは確定なのですぐその場で考えるよりスムーズになる。
まあ何がきても海よりはマシでしょ。
「……まあ、こんな感じでやろう!」
いつの間にやらグレンくんが仕切っていた。
こういうところにグレンくんの勇者らしさを感じる。
きっともって生まれた選ばれしものという以上にこのカリスマ性が大事なのだ。
私達は余計なものを片付けすぐに武装を整える。
もうすぐにでも戦えるようにだ。
突入即カバー。
私達に補助を欠け直して……
ワープ装置起動。
私達の姿はそこからかき消えた。
空は生物の住まう場所では無い。
それは宇宙よりも低く。
鳥が飛ぶには高すぎる。
あまりに薄い空気に毒の大気。
降り注ぐ宇宙光。
「くっ"クリアウェザー"!」
宙に放り出された私達の体。
すぐに魔法を使い辺りにオーロラのような光がおりる。
これで危険な『天気』を封じられる。
「ここは……?」
「水ではないけれど、空気もないよね。また虹色に体が輝いていて助かったよ」
グレンくんが冷静に語る。
ただ大半は知識すら及んでいない空間だ。
ただひたすら困惑が広がるばかり。
身体は軽いが重力がないわけではない。
下側の謎の淡い世界に引っ張られようとしている。
青い星なんてものはない。
おのおのすぐに飛行展開。
ホルヴィロスは頭の上に花が咲いて回りだした。
たぬ吉はゴーレムに乗り込むとゴーレムの背中からエネルギーが噴射しだす。
クライブは背中のマントが翼に。
グレンくんはグレンくんの周囲がキラキラと輝きだしてコントロールしだした。
まるで御伽話の妖精のダンスだ。
「間に合った、来るよ!」
星の向こうから飛んでくる影。
私達は慌てて速度を上げる。
そうして避けたところに突っ切ってくる巨大な姿。
大気が震えている。
根源的な存在の格が違うと押し付けられている。
存在の絶対王者。
「ドラゴン!」
「グウオオオオオオォォォ!!」
咆哮。体を食い破るほどの圧力。
その身体はまるで銀河のように輝いていた。
ヒラメの後にこれ……!?
巨大で腕と足そして翼。
強大なドラゴンたちの姿だ。
鱗は光を常に跳ね返していて地は黒いのに銀色だ。
さっきのカレイも普通に考えればメチャクチャ強かったからこのドラゴンも油断ならない。
「みんな集まって! 各個撃破を避けて!」
銀河の竜からまたたく光線が放たれたのはその直後だった。
口からとかではなくほぼノーモーションで全身のあちこちから。
細い光線たちが大量にあたりへ撒き散らされる!