百六十四A生目 表皮
大量の水弾は弾丸のように海中を進んでいる。
私達は攻撃を仕掛ける前にそれを避けきらなくちゃいけない。
鋭くはなさそうだが当たったら吹き飛びそうだ……
「あぶなっ! ちょっと曲がってくる!」
「余計に斬り込むな。水が圧縮してある」
「地上で言うところの空気砲みたいなものかな? 威力は洒落にならないけれど」
「それって?」
「つまり海の形を持って襲いかかる突風!」
「うわ、それは困るね……」
ホルヴィロスが私の例えに困惑したので言い直した。
確かにこちらをしっかり狙って動いてきている。
速さはそこそこ。引き付けてから大きく回り込むように回避!
移動角度を変えて急速移動すれば振り切れる。
本来水中では取りにくい動きだが……
ゲーミングカラーになって水中推進力を得ているので空を蹴るように移動できる。
みんなもそれをわかっているので弾幕を縫うように飛んでいく。
「これ恐いですね!? もうちょっと道が作れないか、試してみます!」
「わかった!」
たぬ吉はなるべく安全圏に向かう。
ゴーレムを生み出してその肩に花を這わせた。
そしてゴーレム花とたぬ吉それぞれから種のような光が放たれた!
連射されるその弾丸たちは私達より速く進み……
水弾と衝突しあい相殺しだす。
あちこちで光同士の衝突特有のバチバチとしたエネルギーと閃光が輝き……爆ぜる!
「いいぞ!」
「よし、今度こそ俺たちが!」
クライブたちが水中をすっ飛んでいくのを私とホルヴィロスは追う。
良いポジションを確保できた。
「やろうローズ!」
私とホルヴィロスは合わせる。
とはいえ何が通るかもわからない今。
ただひたすらに威力を高めた攻撃を放つ。
私は剣ゼロエネミーを向かわせつつ銃ビーストセージでスナイパーライフルモードでぶっぱなす。
魔法を3つを"二重詠唱"で倍にして濃縮させた後に放つ。
大型相手だし大きい岩とか雷撃とかをね。
ホルヴィロスは同時に毒塊を大量生成した。
ソレはみるものが見れば注射針の形だとわかるだろう。
患部に直接刺すためのものだが……今は相手の体の自由を奪うためのものだ。
大きさはそれほどではなくとも1つ1つが鋭利。
「いけっ!」
私の攻撃たちとともに発射される。
攻撃は飽和させるほうが効果的。
というわけで私達のタイミングはクライブとグレンくんの攻撃タイミングと合わせる。
グレンくんは海中なのに深い踏み込みで刀を抜き1撃が閃く。
クライブはその大きな魚を捌くように両手で剣を持つ。
巨大な剣に威力が乗るよう加速したあと……
体ごと大きく回転した!
「「はあぁっ!!」」
全員の攻撃がカレイに当たり辺りに凄まじい砂煙と光の爆炎が上がる。
もちろん水中だ。だか 爆発エネルギーは全て細かい気泡に変わっていく。
白い景色の中そこには……何もいない。
「消えた!?」
「ということは……また下だ!」
私とホルヴィロスが声をかける。
グレンくんとクライブは察して休息に速度を上げ横に駆ける。
ふたりの間を地面から飛び出す巨体ガ貫いた!
「あぶな〜……うわっ」
グレンくんとクライブは余波の波で吹き飛ばされる。
直撃はなんとか避けられたようだ。
「あまり斬った感覚はなかったが、これは……」
「なんだろう、ヌルヌルしてる、すごくヌルヌルしてる!」
ふたりの斬った剣がヌルヌルしていた。
慌てて水中で振り回すとヌルヌルが剥がれる。
あのヌルヌルが攻撃から離脱した理由か。
「これはゴリ押しは厳しそうだね」
「何か作戦はあるかい? ローズ」
「そうだなぁ〜……あー……」
色々とサーチし"観察"もする。
その間も水弾は来るので仕方なく避けたり撃退したり。
なーるほど……よし。
「あの相手の体表は効果が薄いみたい! ただ、目のところと、口のところ、それにヒレの部分は別! 硬いけれど、攻撃が通りそう。魔法6無意味では無いけれど、その分逃げられやすい。ああ、あと難しいけれど、体裏は弱いよ!」
「む、脳内にイメージが……便利な共有だな」
念話でみんなに拾い集めたデータを図にして投げる。
みんなはそれを参考にバラけた。
集まっていてはタコ殴りにあうからだ。
私はとにかくいい感じに距離を保ちながらヌメヌメしていないところを狙っていく。
魔法は迎撃されやすいがイバラのリーチ範囲は逆に相手の猛攻圏内。
さっきからじみーにダメージが蓄積しているので気をつけるに越したことはない。
蓄積ダメージは全員回復しつつ私は尾側へ回る。
巨大なためかターンはゆっくりだ。
小さい私達でも簡単にとりつける。
「うわっ!」
すると今度は別の攻撃がきた。
鋭いトゲのような物が飛んできたのだ。
範囲が広い乱射だ!
「ああもう!」
なるべく射線をしぼらせないようにゆらゆら回避しつつうごく。