百六十一A生目 海中
60階のボスはなんというか不運だった。
雪降りしきる中純粋に強い相手というのは映える。
しかしまあ……こっちはメンツが増えたんだよね。
今のメンツは間違いなくギミック系の50階ボスのほうが苦戦する。
今回は剛よく柔を断った形だ。
ちなみに強さ的にはもしあのグレンとともに来ていた冒険者たちなら大苦戦。
さらに一般的な冒険者なら一瞬で全滅もありうる。
そのぐらい強かったのは間違いないんだよ。
おかしいなあ……不憫だ。
さてそこら辺をいちおう書き連ねた後休憩して61階へ。
ここからはまた層の雰囲気が変わることとなる。
「あばばばばばば!!」
「んー! んー!」
そうして私達はひどい目にあった。
あわててその場からのがれる。
死ぬかと思った……
そんな恐怖の場に放り出されたので階段まで必死に戻ったわけだ。
いきなり別世界になるの本当にやめてほしい。
「ハァ、ハァ……危なかった……」
「まさか、水とはな」
「全面水没していましたねー」
華やかにはなしているが私だけは必死である。
本当に心臓に悪いし肺にも悪い。
はあぁ〜。危なかった。
よく見ていないが完全に水没していたのは間違いない。
初見殺しの罠すぎる。
私が必死に訓練したから良いものの冒険者はみんな泳げるわけではない。
むしろ重い武具のせいで古泳法がいる。
クライブとグレンくんは当たり前のように鎧着ながら泳いでたな……
ただし水の中では息ができない。
なので潜入には絶対に下準備がいる。
ほかが何を言おうが絶対いる。
いるったらいる。
「はぁ〜、じゃあ、私で潜水準備するから、ほかは各々よろしく。私は水に対することに全力でやるから。もう水に対しては安心して。もはや水は消し飛ばすつよりでいくから」
「ロ、ローズ?」
「急にどうしたんだこいつ下向いてぶつぶつ言い出して」
グレンくんとクライブが私に対して疑問符をうかべる。
対して……
「ああ……ローズさんおかわりないようで」
「うーん軽度のPTSDかもねえ。まあまあ、少しずつ慣らそう」
他二名のたぬ吉とホルヴィロスは静観の構えだった。
ほんといつも苦労かけますねえ!
私というか私の中のツバイが無理なのだ。
アインスとドライはなんやかんややれているため身体はきっちり動いて水から逃れた。
まったく……ここまで陸上の存在だったのに水中へ行かせるのは悪意というか殺意だよ。
もちろんここが自然物でもテーマパークでもないことは承知している。
これは油断した。
そう水を弾く油を絶っていた。
これはよくない。
あくまでここは敵地なのだ。
確かにあふれる冒険心は大事だ。
何事も楽しまねば超えられない壁は有る。
ただ私がその前に壁を見ていなければぶつかるに決まってる!
くぅ〜。
早く対策仕上げないと。
私がそうこうしている間にみんなは水気をきったり火をたいたりしている。
そう。戻ってきた60階は雪の森。
寒いんだよ!
しかもさっきの水もそうだ。
しょっぱいし海か。
とにかく冷たいのだ。
寒冷コンボで身体が凍える。
物理的に氷が出来て来るので火は急務だった。
ちゃんとした篝火ができてあったかい……
「まあ、ローズさんではないけれど、この寒さと水中、一筋縄ではいかない。どれだけか対策しないと」
「ああ」
「ほわぁ〜あったかいい……ああ、凍えるかと思ったあ……あ、一応いくらか品は持ってきていますよ。こんなこともあろうかと思って」
「あ、これは酸素の種! たぬ吉さん助かります!」
「ローズ、どう? やっぱり濡れたほうが良い感じに私なっていない? あー……聞いてないなこれ」
とにかく重力制御は必須だ。
あの中で武具が重しになるのは論外だ。
もっとちゃんと振れないと攻撃出来ない。
空気供給は当然必須。
宇宙で戦ってわかった経験をサポートに組み込む。
音と視覚はやはり大事だ。
常に探知させて正確に伝える必要がある。
水の伝達速度は早いけれど私達空気在来組からしたらただしく聞こえない。
発音もそうだ。
ここらへんは念話の応用でリアルタイムフィードバックを使う。
立体起動用に高速噴射させる魔法も。
当たり前だが水圧は常時監視させてリアルタイムで安定させる。
あとは…………
「よし!」
「よしじゃないが? なんだこの過重魔法は。逆になんで成り立っているんだ」
「うわあ……そういうローズも素敵だよ。このギチギチにしっかりパズル詰め込んであるような魔法は、きれいな絵になるよね」
私達は虹色に輝いていた。
いやしかたないじゃん。
副作用としてなんかゲームみたいな『ムテキ』の時の色になっちゃうのはさ。
それ消すくらいだったらまだ詰められたんだよ!