百五十七A生目 合流
まあ海に囲われた一国が他国文化との交流のなさを嘆いてもはじまらない。
最終的にクライブはキレイに完食した。
「今更だけど、苦手な食べ物とかないの?」
「基本はないな。必要があれば、石でもかじりついて食う。ただ前に食べた赤い実は恐ろしかったな。見た目にはわからないベリーのようだったが、末恐ろしく苦かった……」
「へぇー、クライブもそんな失敗談があるんだね」
「お前は俺をなんだと思っている……? 誰にでもある程度、俺にもあるさ」
クライブと食事を終え私たちは次の階層へ踏み込む。
51階。
未知なる場所だ。
「こう来たかぁ」
そこは雪降りしきる中。
それだけならただ寒いだけだが……
針葉樹たちが多く立ち並び深い森を形成している。
日差しすら遮られ雪は私達を埋めそうなほどに深い。
いやあ……
「懐かしいなあ……」
私の口から自然にそう漏れるほどどことなくよく似ていた。
私の故郷の森の迷宮に。
「雪が想像以上に動きづらいな」
「コツがあるからね。あの雪山みたいに雪がさらさらしていないし、防寒具ごしに染み込んでくる。自前の毛皮がなければ、ちゃんとかき分けて進もう。あ、この魔法もね」
「なんというか、お前も大概だな……」
何が大概なのだろうか。
火魔法"ヒートストロング"をそれぞれ付与して歩き出す。
溶けた雪が水となりこれはこれで濡らすのでじゃまになるため素早く移動し続ける。
そろそろ時間的にも行動的にも相手の強さ的にもいいだろう。
数を整えて連絡して……と。
数分そのようにやってヨシ。
「クライブ、今から味方喚ぶからね」
「……出来るのか?」
「喚ぶだけなら。ほら、さっきまで10階ごとに転移陣があったよね。それぞれの階で読み取って、ついでにハッキングしてちょちょいと、ね?」
「……何を言っているかまったくわからんが、できるということだろう。ならば、俺は問題ない」
さすがに何割もの仕組みを見たのだ。
だいたいの型というかつくりの妙はわかってきた。
色々いじってあっても成立させるための必須条件というものはある。
例えば……どれだけ複雑な機械であっても出力の穴と電源コードはある。
電源コード引っこ抜けばとまるのだ。
壊れるかもしれないけど。
まあそれは極端な例として。
つまり見続ければわかる部分もあるのだ。
「よーし、みんな! 出てきて!」
私は空魔法"サモンアーリー"を放つ。
空中からキラキラと3匹の影が現実へと落とし込まれていく。
1体目は……
「ローーーズーー!!」
「うわ」
「随分好かれているな」
「ローズ! 私が来たよー!!」
ホルヴィロス(分神体)だ。
本体は自身の迷宮から動けないのでそうなる。
ついに医者が同伴だ。
前までホルヴィロスは自身の戦力は低いと報告していた。
理由は元々地形とのコンボプラス肉体の大きさで圧倒するタイプだから。
そして分神をそこまで使いこなしておらずどうしようもなくレベル不足。
このたびもろもろの問題解決したとしていざ参戦。
というか私のお目付け役……
複雑な気分だしスキンシップが激しい! 邪魔!
「あうん」
ホルヴィロスを退けて次の相手をちゃんと呼び出す。
その姿は……ニンゲン。
男の子であり前見たときよりもだいぶ成長している。
それはニンゲンの成長速度とは違う異様さ。
勇者として歪められた人生を取り戻したその存在。
「グレンくん! 久しぶり!」
「ローズ久しぶりっ!!」
そう元勇者グレンくんだ。
グレンくんは勇者として生まれ使命を実質果たし……その後遺症に苦しんでいた。
それを解決するための旅に出ていたが先日ついに解決したと一報がはいる。
手紙はずっとやりとりしていたしね。
前見た時は幼児といっていいほど退化状態していた。
しかし今は10代少年といえるほど回復している。
それでも手足や雰囲気が歴戦の戦士になっていてただの時間の流れ以上に経験をつんでいるようだ。
「勇者、もうないのに年齢が変わるように?」
「よくわからなかったけれど、多分そうなんだ! 俺、魔王とリンクしていた部分が断ち切れたらしく、自分自身の成長でなっていくみたい。もっと全盛期は先だからこのぐらいみたいだけれど」
「なるほど! グレンくん、改めてよろしく!」
私はグレンくんと握手する。
「お前は……ちゃんと人間か」
「あ、俺、一応人間やらせてもらっています。話は聞いています、俺はグレンといいます。よろしく!」
「……あ、ああ。クライブだ。よろしく」
クライブも圧倒的なキラキラの波動に押され握手させられている。
珍しい絵だ……
あとで脳内再現して写実絵かいて送ってやろうか。
さてもうひとりは……