百五十五A生目 魔壁
やがてゆれだす。
「補助は大丈夫だね」
「この強化を受けたあとでは、相手の方に同情するな」
「そっちの自己強化は?」
「済んでいる」
私達は並んで様子を見る。
やがて迷路全体に響くような揺れは目の前まできて。
私達のことを見渡した。
「……大きいね」
それは壁にくくりつけられた歯車。
そして本体もまるで壁である。
壁にライオンかなにかの顔があるそれはうつろな目でこちらを見て……
殺意のこもった目にシフトチェンジした!
「グオオオオオォ!!!」
「来る!」
「なるほど、逃走しながらというわけか」
敵の下側に長い光が走る。
見た雰囲気的にあれも壁の性質。
触れたら猛然としたタックルに吹き飛ばされるだろう。
「逃げるか」
「だね」
三十六計逃げるに如かず。
私達は高速で迫りつつ有るライオンの壁に背を向け……
急いで飛び出した!
なにせアレに押し込まれたら終わりである。
「とにかく直線に誘い込むか!」
「さっきみたいに袋小路になっている道がないみたい! 直線は……こっち!」
私が真横に飛び込むとクライブも続く。
そして……
「グオオオオオォ!!」
壁も急ターンしてまた迫ってきた!
「今だ! 撃ち込め!」
私とクライブは後退しながら思いっきり撃ち込む。
銃ビーストセージのマシンガンモードで連射しつつ。
魔法は時空魔法"スロウド"で相手の鈍化を誘いつつ……!
[サベピーブルッツ 時空を歪ますエネルギービームが放出される]
4窓分作って魔法を時空の裂け目からかっこいいビームを放つ。
"二重詠唱"の効果で1魔法枠2発。
今3枠埋まってて精霊に頼んだ分は埋まってる。
私自身は……!
「こいつも!」
火魔法"レイズフレイム"を放ち炎のビームをこれでもかと浴びせる!
全魔法分ぶつけつつの銃連射はさすがに大きい。
ライオンの壁がうなりながら迫ってくる。
「やはり硬いな」
クライブも連続で剣を振るい剣圧を光で飛ばして斬っている。
全部食らってるのにうなりながらも高速で接近してくるのはもはや恐ろしい。
「おっと反撃も!」
「防げ」
壁から大量のトゲが生えて……
私達の方へ撃ち出してきた!
乱射のほとんどは避けられるものの全部は狭くて無理。
なので剣ゼロエネミーとイバラでなんとか防ぐ。
切り落とし絡めて叩き落とすのだ。
クライブも剣でたたっきっている。
身体に響く重みはあれど直撃よりはとてもマシ。
「っく、もう道が! 曲がるよ!」
私とクライブは直線の道から抜けて再び曲がりくねって動きづらい方へ。
これはなかなか倒させる気がない相手だ……!
「チャンスの時間はわずか10秒あるかないか、か」
「うわっ、向こうから攻撃が!」
高速で逃げていたら雷撃の球とか氷の塊が飛んできた。
雷撃は剣ゼロエネミーが全部吸い取っていく。
剣ゼロエネミーは電撃吸収!
「クライブ! 電気は任せて!」
「氷は、斬る!」
クライブは前に出て氷に剣を振るうと氷が砕け斬れる。
飛散してくる雷撃は剣ゼロエネミーが全て吸った。
これ私達だからなんとかなるけれどしんどい弾幕だ!
土の魔法で岩が飛んできたら今度は私自身が飛んでいく。
イバラを振るうと簡単に打ち砕ける。
土は私に無効だ!
「よし……10秒後、右へ!」
「ああ。っ!」
「回復は!?」
「自前で間に合っている!」
「今曲がって!」
ただ直線時よりも攻撃は苛烈だ。
魔法も様々なものがあって対処しづらい。
私もちょくちょく防ぎきれない氷の破片が当たるしクライブも土石を斬ろうとして囲まれいくつか当たっている。
しかしクライブは自己回復持ちだ。
私は信じてすぐに曲がった。
クライブも遅れずに横並びでついてくる。
また直線に誘い込んだ。
相手は大きくカーブして減速した。
あの壁全体を覆うデカさが小回りに対してマイナスになっているようだ。
だから直線上に並んだ時は加速が間に合っていない。
再び魔法と銃を展開しビーム!
そして私は剣ゼロエネミーに力を開放させた。
吸収した雷撃で青く澄んだ刀身は今やエネルギーで満ち溢れ輝いている。
力を解放すると刀身が一気に伸びて電撃の光ガバチバチと走る。
「もう追いかけ回されるのも、面倒だな」
「ここで決めるには……少し火力が」
「ここまで強化して、本当に硬いな……だが、その剣、良いな。お前はそのまま全力を出せ。俺は、行く!」
「クライブ!?」
クライブが向きを反転させライオンの顔へ突っ込んでいく。
「グオオオオオォ!!」
確かに私の攻撃と相手の石槍のスキマを縫うように飛んでいっている。
全力でやればいいと言っていたけれど本当に大丈夫なのか!?