百五十四A生目 迷路
40階。
また新たな層へとたどり着いた。
広がる湖の次は……
「空か」
「うわわわーーっ!?」
私達は空を舞っていた。
広がる雲の海と狭い壁。
天井もあるからちょうど床の抜けた迷路のような地形になっている。
「なんで飛べるお前が慌てているんだ」
「こころの準備がまだだった!!」
「はぁ」
クライブは冷静に壁へ剣を突き刺していた。
ここはそういうことができる階層なのか。
私は落下しかけて慌てて翼を展開。
普通の迷宮は少しずつ様子を見られるのにこの疑似迷宮は放り出されるんだよなあ。
先の景色が見えない。
迷宮もかなり下まで落ちなければ下から抜けられなさそう。
そして直感だが……
そこまで降りると39階層へいく。
遠くに見える地面がなんとなく見覚えがあった。
「空か……この兵装だな。新調しておいて助かったな」
クライブは服装を変更して長く二股にわかれたマントをつけた。
マントはピンとはって変化する。
羽ばたき出すのだ。
コウモリの翼にみえるそれはクライブの巨躯を間違いなく飛ばしていた。
「それは?」
「作ってもらった」
答えになっているようななっていないような。
それはある意味いつも通りである。
どうやら調子はすっかり戻ったらしい。
さっさと飛んでいこうとする背に声をかける。
「道、わかるの!?」
「飛んでいけばいずれわかるだろう。お前は?」
「私は、ある程度遠くの範囲も壁越しで把握できるよ。完全に埋めるには、近づかなきゃいけないけれど……」
「ならいい。先へいけ」
道を譲られたので早速先行しようっと。
私達は並んで高速に飛んでいく。
たまに出てくる魔物は私とクライブそして剣ゼロエネミーが囲んですぐ倒していく。
うっかり吹き飛ばされて下まで硬直し落ちていくのは勘弁だ。
「さっきのヒトたちとちゃんとくんでいたんだね」
「当たり前だ。俺はむしろ、普段は組むことのほうが多い」
作業に慣れてくると雑談も入る。
どうせ先は長いのでずっと戦闘声ばっかりでは間がもてない。
「でも、前あったときとかは、全然他人と組める雰囲気ではなかったけれど?」
「お前が特殊なだけだ。色々と、やりづらい」
「えぇー、私は基本的に他者と組むのは慣れてるんだけどねえ」
「俺もそうだ。だが……少し変わったこともある」
クライブは敵のトカゲ魔物を斬り飛ばし迷路から叩き落とす。
その勢いのまま次の相み手へととびかかった。
生命力は高そうな相手でも壁に叩きつけてそのまま落とせばよさそうだ。
「変わったこと?」
「……今まで仲間は、俺の力を伸ばすためのものだと考えていた。今もその考えもある。だが……俺の剣が誰かを生かすためにあってもいい。そのほうが得られることもあると、知ったからな」
「へぇ、それはまた大きな心の変化で」
「まったく……まだまだ修行が足りない」
私達は迷路を飛んでいく。
彼らをたまたま帰せていてよかったかもしれない。
彼らにこの高速空中移動についてこれる気がしない。
敵も強くはなってきていてクライブや私が適切に武技を叩き込むことで落としている。
私の場合角曲がりの前に魔法出爆撃するが。
得意な地面系魔法は使いにくいが闇で重力とか炎で爆発とかやりようはよくある。
とにかく速度重視だ。
「今全体でどのくらいなのかなあ」
「だいぶ進んでいるはずだが、果たして本当に進んでいるかは不明だ。このような世界だからな」
「そうなんだよね。それにも注意したいけれど、中から外を見る方法がないし……」
何より怖いのは本当は塔を登れてなく別のところに飛ばされているだけという説だ。
物理的に空間がメチャクチャだから信用はならない。
ただ内側から塔の外を透かして見られたらわかるのだが……そこはなんとも。
ただ魔術の構成がワープごとになんとなくわかってきた。
全部繋がっているゆえにおそらくは物理的に切り離された空間ではない。
ただ仮説で実証出来ないからいまのとこらはなんとも。
とにかく今は進むだけ!
迷宮迷路の中は面倒な地形なら"ミニワープ"で壁貫通して進む。
あんまりオススメしない攻略法だ。
うっかり変なところにでないよう地形はよく見ておこうね!
そのおかげて長時間かかるかもしれないここの場所で1日もたたず49階までこれた。
次がボス階なるものだ。
「私、ボスとかいうのは初めてなんだけれど、どんな相手?」
「基本巨体だ。あと、その巨体なりの生命力がある。斬り裂いたと思っても消えるまで油断するな。火力はそこまで高くはない」
「それだけわかれば大丈夫」
私とクライブは次の階段を登る。
そこは……通路だった。
広めの通路だがまた入り組んでいそうだ。
もちろん足元の地面はない。