百五十三A生目 合流
先発隊のメンバーは5人が冒険者てして。
ふたりは記録員としてきていた。
つまり2チームだったわけだ。
そして冒険者5人は記録員2人を護衛してここまできたけれど……
「まあ、見ての通り、先程までは壊滅に近くてな……ここがセーフティゾーンだとわかるまで、非常に苦労したよ」
「やはり、遠隔から撃たれまくりました?」
「ああ、あれは数がまとまっていればまとまっているほど厄介な相手だったな……」
そこからは口々にここまでの苦戦を教えてくれた。
どうやら洞窟では搦手を使う相手が多かったらしく備蓄も削られたのだとか。
私……戦ってないからなあ……
あと階層のキリのいいところでは毎回ボスのような相手が居座っているらしい。
私はいなかったむねを伝えると復帰まで時間がかかるかもしれないと考察していた。
記録班がしっかりとデータを取っているらしく筆を走らせている。
「それで、気になっていたんですけれど……なぜひとり欠けているのですか?」
「ああ、そのことだけれど……俺等の中でとびっきりつよい一人がいてな。ここらへんの魔物も鎧袖一触、まさしく桁違いの強さなんだ」
「今その人は、私達急造チームをまとめるリーダーとして、この先の階層ボスに一人、挑んでいるの。階層ボスからは直通で帰る手段があるからね」
「なるほど、たしかに1度態勢を立て直したほうがいいですものね」
「ああ、迷宮の条件が細かくかわるせいで、どうも準備で荷物を圧迫してしまう。この時間や距離、頻繁に変わる環境は準備殺しだな……」
同じ迷宮ならば基本的に1つの傾向に固まりやすい。
だからそれなりの装備で身を固めれば済む。
たとえば凍土ならば防寒具や不凍液それに滑らないようにするための道具など。
しかしこの迷宮その次にはいきなり灼熱の砂漠になっていてもおかしくない。
10階層ごとに帰って整えるのがちょうどいいくらいだ。
先発隊がどういう感じか見るために相当ファイトしたのがよくわかる。
「実際、今回は危なかったな……回復術師の装備が、たまたま雷撃に弱かったらしくってな……」
「あと、今回のメンツで遠隔ができるのがひとりしかいなかった。洞窟とかではむしろ良かったんだがなあ」
「わかります。だからこそ私も瞬時着替えを身に着けたようなものですから」
「やっぱあると便利な能力よなあ、それ」
「見るからにものすごい高度なのがね……」
わいのわいの話し合う4人と私。
ただ私はそのもうひとりが気になっていた。
もしかしたら知っている影かもしれない。
思案顔だったのか私を見て先程の女性が声をかけてきた。
「その、良かったらもうひとりの仲間の様子、見てきてくれませんか?」
私は言われた通りの場所に足を運ぶ。
階段はそこまで遠くはなかった。
地形に隠れて透明な階段はずるかったけれど……
私が階段を登り切ると似たような景色ながら戦闘の音が響いていた。
きっとここは他よりも世界が狭い。
その戦う姿はすぐに見えた。
巨体なのは魚竜。
ドラゴンではなく昔の爬虫類だ。
巨大で魚のようだが手足がありなんとも不可思議な見た目。
魚竜が身構えたあと口から大量の水を放つ。
それはもはや激流。
飲まれればどんな生物も圧力で無事では済まない。
しかして受け立つ側も並の生物ではない。
首元に見えるすべすべした鱗。
身の丈よりも大きな巨剣。
そしてまとうオーラは力強く。
人のそれをこえて神の領域へアクセスしていた。
片手で持っていたその刃を……両手で構える。
「堕ちろ、魚!」
刃がさらに光を覆って巨大な刃が振られる。
激流が刃を飲み込み……
飲み込んだ水が内側から割かれる。
踏み込んで振り抜かれた刃。
しかしまだ終わらない。
斬撃が光となって突き進んでいくからだ。
水流は面白いように割かれていきやがて本体へ。
魚竜の体へ大きく斬り裂き迫って……
その口ごと大きく斬り叩く!
水流むなしく散り魚竜は勢いなく揺れて空に舞う。
そして……悲鳴のような声とともに光の粒子となって消えていった……
残心。してから剣の主は振り返り私を見る。
「クライブ!」
「なんだ、ローズオーラか。ここへも来ていたとはな」
巨躯を誇るその男はクライブだった。
「ここから先は任せておけ」
「ああ、先に戻ってギルドに報告する。厄介な迷宮だってな」
私とクライブは魔術転送装置に転送される6人を見送った。
なるほどこうやって帰れるのか。
親切設計の理由が気になるなあ……
まあ設計の制限があるのかもしれない。
つまりは建物の柱だ。
なんとなくそういう設計思想が見える。
「俺たちだけでも行くぞ、40階層へ」