百五十一A生目 追跡
次の迷宮階層の姿は洞窟だった。
塔の中に洞窟……
不思議な気分になる。
もう今更言うことではないんだけどね。
それでもなんともなれない。
暗い洞窟であり薄くあかるいとかそういうタイプではない。
周囲を光神術"ライト"で輝き照らしている。
まあなくてもなんとかなるがそれで見落としをしたくない。
別に潜伏して進む気もさらさらないし。
こういうときこそ堂々と進む。
威圧しながら。
ふんす。
ふんすとしたら周囲に空気が吹き飛び地面の砂埃が舞った。
私神力使わずともこのぐらいはできるかあ。
なんとも感慨深い。
そのまま進んでいけばまた見事に誰も出てこない。
先程の圧でビビったようだ。
これは……特に語ることもないな!
迷宮だが迷宮の多くの自然さとは違い不自然な罠も多い。
迷宮は……天然の罠があるけれど……
ここの洞窟では。
「おっと」
ガッツリ槍が天井から振ってきた。
雨が降ろうが槍が降ろうがの槍だ。
ほんものをみると少し感動するよね。
槍が次々降る罠はまあ1回踏めば次は起動しない。
きっとそのうち直っているだろうけれど……
あきらかにそれっぽいものを踏んで跳んで避けて眺めるのはなかなか楽しい。
なにせ他の魔物からんでこないし……
そうこうしつつ私はこのエリアをくぐり抜けた。
30階層。
こんなに高いと昔に苦戦した似たような疑似迷宮を思い出す。
あれは召喚された邪神……月の神が力を発揮していた。
しかし私の感触的にあの波動とは全然違う。
あとダンジョンのつくりも。
あっちはもっと狭っ苦しいところをランダムな地形であるき回された。
今度の場所はより広い。
なんなんだろう……なんて言えば良いのか。
水平線。足元は水面。どこまでも続く世界。
空を映す水面はとても美しく壮大だ。
だけど。
「遮蔽ゼロかあ……」
正直視線が刺さってくる。
あらゆる方向から。
いろんな目印が少ないため方角も迷いやすく厄介な場所だろう。
船乗りならこういう環境でも迷わないはずだけれど……
私もまあ大丈夫。
それよりも。
「うわっ! 来た!」
遠隔から飛んでくる弾丸!
それが通り過ぎる瞬間見たのは……
まさしくツノ。
遠くから光線!
これも避けて。
あっ雷撃。
「ゼロエネミー!」
剣ゼロエネミーが地面に刺さり雷撃をまるごと受ける。
きっとこの雷撃は私の周囲に着弾して広く感電させる狙いだったのだろうけれど……
結果的に吸収した。
よし倒しに行こう。
「ここ、先発隊がちゃんと通れたのかなぁ。集団でニンゲンがいると狙われちゃうけど」
私は高速で駆けると相手の背後に体を移す。
おお魚だったんだ。
頭からツノが生えていてこれはさっきの飛んできたものと同じ。
魚が目で追ったのは分かったけれど反応は遅い。
背後から容赦なく連続蹴り込み!
私は4回蹴るだけで"連重撃"効果で倍の8回入る。
魚が空を舞って光に消える。
さあ次。
……とりあえずここまで先発隊はみていない。
だから先発隊はこの先にいるはずなんだけれど。
においもよくわからないんだよね。
おそらく疑似迷宮ゆえに形や敵が常にかわり続けているからわからないのだろう。
普通の迷宮ではありえない全員敵という状況……
削られてなければいいんだけれど。
幸いなことというべきかまだそこまで強い相手は出てきていない。
攻撃がいやらしいのはいるけれど。
そして先発隊はエリートだ。
屈指の選ばれた数名で行くはず。
もちろん手がすいているとか近くにいるというのが優先されるけれどね。
明らかに危険だし気合を入れて進んでいるはずだ。
さてそうこう言っている間に雷光を放つフラミンゴを倒した。
凶悪なフラミンゴもいたもんだ。
見た目が。
顔がこわいのよこの子。
イカズチマークの刻まれたパンクな顔をしていた。
数十体倒して気づいたものの罠の数がすくない。
床から何かがとびでるタイプの罠がほとんどだ。
走っていったら後から発動しているけれど。
洞窟のほうが罠の悪意は高い。
コンセプトか……あとは出力の問題?
うえのほうにいくほど魔物が強いのは意図的だろう。
塔の構造が上に力が集約される形なのかもしれない。
最上階でロクでもないことをしているのだろう。
だとするとコレラの仕組みはもちろん防衛もあるが……
なによりもエネルギーを集積する装置なのかも。
自己完結循環生態装置と冒険者たちによる時間をかけてのエネルギー集積装置。
もともと表に姿を表す前から住んでエネルギーをためていたのかもしれない。
ご苦労なことだが破壊させてもらおう。
39階。
ここでついに人影を捉えた。
ほんの少し安堵した。