百四十九A生目 結界
私はこの日の夜にまた夢を見た。
見なくなったと思ったやらやってくるものなーんだ。
答えは悪夢。
すべてが荒れ果てた場所。
あらゆるものが地獄の火炎に包まれ死と絶望が渦巻く中椅子に座ったそれはいた。
後ろを向いている……ニンゲン? のような?
「なるほど、今きたか。後ろ向きで失礼する」
「……キミが、この悪夢の主?」
「悪夢、か。主ではないが、ここでなければ貴殿と話せないのは事実だ。ただ振り返ったら、貴殿は耐久できない。そこにいてもらおう」
くっ……すごく嫌な予感がして尻尾の毛が全部逆だっているのに。
ここからまったく進めない!
見えない壁があるようだ。
ニンゲンのように見えるだけで雰囲気は神のものだ。
しかも毛皮を焼くようなその場にいるだけで威圧感が凄まじい。
「それで終末の獣よ。なぜいまだにこのようなことをしている? 貴殿の使命を果たせ」
「終末の獣……? 使命……?」
「まだ自覚はないか。まあいい、時などあってないに等しい。いつかはそうなるだけだ。それが終末の獣……貴殿の使命を果たせ」
「だからそれは何……あっ、ちょっと!?」
ふいにその姿が消えていく。
次第に悪夢も輪郭を失っていった。
目が覚める……
おはようございます私です。
意味深なことだけ言って去っていくムーヴをやられてしまった……
一体あの神はなんなんだまったく。
私はアノニマルースから転移して大時空渦の前に来た。
どうやったかは知らないけれど時空渦の中に基地をつくるなんて……
バレないのはわかるけれどどうやればできるのやら。
これも神の御業というものか。
荒野の景色に目を配りながら中へと入る。
今日はみんな後で合流予定だ。
時空の向こう側は特徴的だった。
荒野の鏡写しなのは時空渦の性質上そうだとして。
目の前にそびえ立つは……巨大な塔。
高く。
長く。
渦を巻き。
それは雲すら突き抜けどこまでも伸びている。
頂上観測不能。
時空渦の塔はそんな大きな木にも見える何かだった。
「大きい……これ嫌がらせか?」
私の顔が自然に引きつるのがわかった。
一応事前情報は知っているけれど改めて調べておこう。
その1。塔には扉が1つしかなく空を飛んで行くことはできない。
背中から翼の針を展開し一応飛んでいく。
「あいてっ」
軽く頭に反発された。
高さ50メートルもいかないほどだろうか。
あの天を覆う雲は目測でおよそ5000メートルと聞いている。
つまり全くとどいていないところに世界の壁がある。
結界ではなく本来はここが時空渦の端なのだ。
この先は存在しておらず無理やり突破してもその時は私が元の世界に戻っているだけ。
つまり……かなりむちゃくちゃだが塔にぴったり沿うところだけ時空渦の世界がたかあああぁぁく拡張されている。
空間能力が恐ろしく高い神だなあ……世界各地一斉に人形襲撃させただけある。
その2……塔は破壊不可。
私は肩を回してから思い切って塔の壁を殴りつける。
「えっ!?」
ずぼりと拳の先が入った!
そして私の体ごと吹き飛ばされる。
着地!
「今のは……」
私は今度は小石をイバラで投げる。
すると小石は壁の中に吸い込まれて帰ってこなかった。
私は少しの間考えて解析をかけて……
「空間位相転移の結界か!」
これは少し説明が難しい。
細かい原理はともかく結果だけ簡単にまとめると攻撃するとワープするのだ。
ワープする時に通る異次元の空間……そこに攻撃が不法投棄されている。
なお通す通さないの判定を結界が行っている。
私みたいな生物は通さない。
私の拳という「攻撃」は通して威力をゼロにする。
剣とかでためしてみるのも面白いかもしれないが相手への信用がないからやりたかない。
帰ってこなかったら泣く。
正直この結界は読みきれない。
壊すとしても最終手段のほうが色々とよさそう。
その3。塔の地下にはいけない。
これはその1の逆バージョン。
天と同じ用にこれより下の世界がないのだ。
用があるのは上だし。
その4。転移制限がある。
これは時空渦自体の特性。
直接ここには飛べない。
ただし1度いったことのある階層にはいつでも挑めるらしい。
これは中に転移装置があり乗っているものがどこまで言ったこと有るかで把握しているのだとか。
つまり敵の神は行き来し放題。
毎回1から登り直してくれという願いは届かず。
システムハックを狙うにしてもまずは中に入ってみよう。
というわけでこんにちはー。
扉から攻撃の意思無しで開けばさっきとは裏腹にあっさり入る。
扉は大きくて上が3メートルほど。
大柄のドラーグも分かれた身体なら簡単に入れるだろう。




