百三十七生目 研究
平和な授業の日。
エミーリア学院長が出かけてしまったのがきになるが何も起こらず。
私は与えられた仮の研究室にてAI系魔法の発展を続けていた。
「やっぱり、道具として扱えるのがAMDに最適だから……」
AMDはいつどこでだれでも使えるのが理想。
魔法を使いにくいニンゲンなどどれだけでもいる。
小さく持ち運びしやすくて安価なのが良い。
そのためには前提としてまずやって見なくては。
物へ移植し魔術道具に出来るのが最適だ。
そのためにはまずでっかいものから組んでいく。
こういう作業は魔術というよりかは工業系ぽくて面白い。
考えている材料は手に入る環境。 つくっていってみよう。
「うーん、魔法を組み込むか……あまりやったこと無いからなあ」
私はとりあえずサンプルとして手に入れた火を出す魔術道具をバラす。
既にバラシた魔術道具はいくつか。
あとそれに関する本も目をいくつか通してある。
そこで気づいてことが有る。
みんな自己流が規格がある程度一定のところにない……!
魔法自体が各々個性があるせいで魔術道具も作り方がかなり個性的になってしまっている。
あとみんな秘匿気味になっている。
本当にいいものは自分で見つけろというスタイル。
そしてそれは利権や自身と魔法の価値の保護でも有る。
一応特許はあるもののまだまだ古来からの主義に則っているようだ。
それに……もっといえば全員が使えることにそこに価値を感じていないということもある。
コレは仕方ないことだが出来るものたちが『できないこと』への理解はたいがいにして浅いのだ。
それらを覆してきたのが歴史。
そして突飛な発想とカタチにする積み重ね。
魔術学院はそれを成すためのハワ所でも有る。
「やっぱりそうか。車輪の再発明をしているけれど、収束進化を起こしている」
ただしものごとはなにごとも本質をわからねば先の発展はない。
先人が踏みしめた道筋の意味を私なんかは理解しないといけないのだ。
じゃないとこの先へはたどり着けない。
さてざっくり概要は把握した。
この先作っていくわけだが……
最初から本格的にやるのは難しそう。
私の中の本流を見定めないと。
それにこのAI系魔法。
元は私のスキルである経験の集約と受け渡しによる相互増殖だ。
スキルを解析して魔法に組み込んだわけだけれど……
かなり特殊だから同じように魔術道具にえいやっとくっつけるのは難しいのも判明。
さてどうしたものか……
「あ、ローズオーラ先生! ここにいた!」
「あれ、ゾフィアさん、こんにちは」
「はい、こんにちは……じゃなくて! お呼ばれしてますよ。私は呼びに来たんです」
「おや? 何か予約入っていたっけ……」
「いえ、唐突ですが、次の授業に付き合ってほしいとベン先生が」
「あー、実技系かな? わかりました、すぐ行きます」
私はローブをはためかせゾフィアと共に部屋を出た。
ちなみに研究室は施錠できる。
魔法的に保護してくれるので安心だぞ。
「やあ、ローズオーラさん。突然着てくれてありがとうございます」
「こんにちはベン先生。ぜひぜひ、授業のやり方をみれる機会は希少ですから」
ベン先生は見上げるほどに背が高く同時に筋肉もものすごい。
ローブの上から分かる筋肉量と言えばわかるか。
だがしかしそこは教職。
そして研究者だ。
紳士的な態度と控えめな声量。
見た目と違って学校一の大人しい性格と言われている。
鐘が鳴り授業がはじまる。
ここの場所は教室ではない。
実技場と言われる体育館みたいな場所。
しかし体育館と違って球技をするようなものじゃない。
靴で踏み込みたっているカカシに魔法をぶつける。
本当に実技的な場所だ。
「ここにおわすのはすでに知っている者も多いだろう、この学院で臨時特別講師となったローズオーラ先生だ! 現役冒険者であり、この可憐な花のような御仁だが、その実冒険者としての棘を併せ持っている! 現場のものは、特に動きが違う。それをしっかり見せてもらい、見てもらうように!」
「あ、あはは、お褒めに預かり光栄です……」
そして……声を張ることもできる。
実技ということでテンションが上がり切っている一部の生徒にはこの声圧が抜群らしく言葉を聞くモードに入った。
さて魔術学院での実技とは少しタイプがいろいろある。
まず純魔として魔法をしっかり立って放つこととか。
実践的に誰かと組んで魔法稽古を組んだりとか。
現実魔法がどのように働きどのように動くのかを実感して役立てるのがこの授業でもある。
案外やってる時の座学も多く授業中はずっと魔術や魔法についての話をベン先生はしていた。