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百二十七生目 夜分

 グラッシュ魔術学院への道のりはやはり結構変わっていた。

 まっすぐ行くだけで明後日の方向に出される迷いの森。

 異様に暗くニンゲンでは通るのも難しい昼間でも暗黒の洞窟。


 正しい招待か妖精の挑戦をこなさねば抜けられない湖。

 いくつもの試練を超えて私はたどり着いた。

 え? 超え方?


 うんまあ……正面から……

 なんか突破できたよね。

 私が学校への招待状持ちなのは大きかったと思う。


 やがて崖から突き出た地形の一部。

 まるで湖に浮かんでいるかのような大きな城みたいな特殊な形をした……

 それこそいくつもの建物をくっつけて纏めて浮かしてあるような場所にたどり着いた。


 ここがグラッシュ魔術学院……

 巨大な施設だ。

 私はうまいこと崖下に回り込み自力で駆け上がって上の陸地まで行く。


 こういった無茶移動も慣れたものだ。

 慣れてよかったのか?

 ソレは今ではもうわからない。


 到着すると門は静かに閉じているだけだ。

 門番もいない。まあ外敵に襲われる想定はしてないよね。

 あれほどセキュリティはバッチリだったんだから。


 簡単に言えば『邪なる心持つものここに入ること叶わず。知恵なきものここに入ること叶わず。勇気なきものここに入ること叶わず』というやつだ。

 学生はその3つがない前提なので上から列車で来る。

 最後は全部通ることができて自分の力と学びそして心を証明するのだとか。


「ええっと中のニンゲンにたずねるには……あっなるほど」


 今門からさらりと変質した魔力が飛ばされた。

 中身は探知だ。

 詳しいことはわからないもののとりあえず弾いてしまった。


 これは私が意図したものではなくオートである。

 相手の力量……つまり門の仕掛けが弱すぎて私の魔力で弾かれてしまった。

 オートスキル"影の瞼"の出番もなかった。


 しかしこれでは困る。

 騒ぎになってしまうと判断して私は素早く亜空間から手紙を取り出す。

 そうして高々と上げた。


「門さん、もう一回!」


 やれやれというやつなのか。

 探知の魔力がなんとなく遅めにもう一回飛んできた。

 言葉認証機能くんである? じゃあこの門は『門番』なんだな。


「ありがとう、門番さん」


 今度こそ手紙を正しくスキャンした門はゆったりと開いていく。

 見上げるほど大きく巨大で古めかしいのにその音は歓迎するかのようで。

 すんなりと美しく開いた。


 私は中に足を踏み入れる。

 まるで町が巨大な1つの建物にでもなったかのようなここの学校に。


 もちろん姿は2足状態。

 手紙もしまわず手に持ったままだ。

 さあて門をくぐったら城下町みたいなところに着てしまってどうしよう。


 無人の城下町ってなんだか不思議な気分だ。

 いやまあ私が夜ついたのが悪いんだけど。

 歩いていたらしっかり時間がかかってしまった。


 あとここすごいね。

 途中からうまく馴染むように加工され間を曖昧にしてあったけれど……

 一種の人工的な神域だ。


 越殻者(エクシーダー)になることはできるというのは知っていたから神の力を用いる聖域を作るのもできるだろう。

 ただここまで立派な世界を維持出来るのはなかなか。

 人工と言ったが正確にはニンゲンではないかもしれない。


 妖精とかゴーストとかそういった類がずっと保っている可能性もある。

 ただ普通の神が扱う神域とはなんとも言えない違いがあるのは間違いなかった。

 私も普通の神ではないけれど。


 正直観光してもよかったけれどやはり活気ある時にきたい。

 そもそも門の仕掛け的に向こうにも通知行ってるかも。

 ならふらつくのはよろしくないな。


 正面大通りは完全に整備された道だ。

 路面にタイルが敷き詰めてあり歩きやすい。

 あととてもキレイ。多分詳しくわかるには解析がいるけれど自動で艷やかな感じを維持するのかな?


 そのまま城っぽい方へ近づけば近づくほど城ではないとわからされる。

 権力を魅せるような華や旗がなく。

 堅牢そうな壁やつくりがなく。

 ただ無限に必要に応じて増設されたであろう部屋たちが不安定な宙に浮かされていて。


 それらがかろうじて橋で繋がれることにより1つの建物としても形を保っている。

 それがここ魔法学校本体のようだった。

 なるほど独立しているというだけ有る。


 私は学校内のゲートをくぐって敷地内に入る。

 扉はあそこかな。

 正面扉は閉じられているが……


 うん。私が招かれた側なのにいじわるしたりする必要もなし。

 私は扉の前に立って手紙を掲げた。

 

「ご招待に預かりました、ローズオーラ・ツカイワです。夜分遅くに申し訳ありませんが、長旅から到着したゆえ、今晩の宿を貸してくださると幸いです」


 私の着ている服はいつものやつ。

 正装は汚れるからまだなんだよね。

 しかし扉は関係なしといった様子でゆっくり開いた。

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