百二十四生目 心力
おはようございます私です。
あの後たくさんの処理を行った。
まずクライブ。ピンピンしていた。
いや心配になったのを返して欲しいくらい。
メシを食べてよく寝るだけであらゆる傷が治ってるのは強い冒険者に必要な素質なんだろう。
「俺はもう少し鍛え方を変えてみる。あの時、ヤツに言われたことを思い出したからな」
「ヤツに言われたって、何を?」
「お前の技量や力量はやがて届きうる。だがそれだけでは届かない高みも有る。心力が足りない、と」
クライブは多くは語らなかった。
私も深くは聞かず背中を見送った。
ウッドロフさんたち含む依頼者にも改めて報告した。
何、私があれやったって気づかれてないべ。
ってタカをくくっていたら……
「聞きましたよ、大地を傾かせたのは貴方のお力だったとか」
「うえっ!?」
バレてた。
防衛省のメガネさんだ。
ただ理由も簡単で……
「先にクライブさんから委細の報告を受けました。他の方なら「信じられない」と言うところでしょうが……」
「あー、私のことご存知ですもんね。それにしてもそうか……口止めとかしなかったからなあ」
「ええ。むしろ、よくぞやってくれた! というか。税金の無駄遣いなんて言わせないぞ! というか。まさしく万が一のために雇って、万が一が起きたので大正解でした」
その後もしばらく絶賛された。
報酬も危険手当マシマシになるそうだ。
何かやたらヨイショされるなあと思っていたら……
――いつの間にやら首都で英傑として祭り上げられていた。
「なんで!?」
未だに思い出して突っ込んでしまう。
お祭りが繰り広げられて主役として私は……
男の姿でそこに座っていた。
まず私は普段の姿では現場のみんなやウッドロフさんもいるし『アレやったやつ』と直接思われるのは今回まずいってことを伝え。
向こう側はなんとしても立役者として舞台に躍り出てほしかった。
折衷案が私の翠竜能力で遺伝子をXYに書き換えてある姿に変更し全身をアーマーで覆うことだった。
普段ならともかく今回やったのは地をひっくり返すこと。
魔物や隣人ができてしまうことにはニンゲンたちは恐怖を覚える。
だから……ひと芝居うった。
ギンギラギンに神力アピールしながら全身を針の変形アーマーで覆ってニンゲン型になり高いところに有る椅子に座って運ばれる!
そして寡黙! 男性体の体格の太さをアピール!
魔力とももに混ぜ込んだ神力を周囲に放てばそれとなく輝いて見えるしそれとなく威圧感がある。
"無敵"も忘れない。
遠くとも敵ではないくらいは伝わる。
遠くからなんだか崇めるような声も聞こえていた気がするけれど……
まあお祭り特有の興奮というやつだろう。
それに私がバレた気配はなかった。
魔物だというのもわからず特別なナニカだと思われただろう。
最後は派手に演出して空を飛び去った。
そのぐらいしないと帰してもらえない雰囲気だったので……
現在あそこでは雪崩を鎮めし超常の存在の銅像を建てる計画があるらしい。
神的には……ありがたい。
しかし心情的には微妙だ。
メチャクチャまつりあげられるじゃん……
さて3つめの小さめの反応ポイントにも向かってみたがエピソードを語るにはちょっとしたことすぎた。
冒険者として冒険したというより向かったらなんか困っていたので助けたら感謝され。
案内された先に反応の原因である神の武器が刺さっていた。
古代神の関わり合いもなければ他の神の話もそんなになく。
田舎らしい寓話……この槍抜けたら勇者みたいな話がある程度だ。
しかもトリックもわかった。
なんてことはなく越殻者にしか抜けないよう神力で台座に固定されていた。
私の武装より劣るし色々見て回って純粋な守護の想いを感じた。
きっと抜いたものがこの地域を守り救う者となる。
私は抜くフリをして「抜けませんねー」で終わらせた。
コレは外から来たものが雑に関わって良いものではない。
きっと抜いたその時その人物の伝説が始まるのだから。
ある意味では勇者グレンくんのような立ち位置がもしものときに発生するだろうという仕組みだ。
今グレンくんはどこで楽しくやっているのか……
無事の頼りはもらっているので大丈夫だろう。
さて私はついに行先を失った。
正確には調査中だ。
今までの探し方では見つからない可能性がある。
そしてまあこうなると私は逆に邪魔だ。
何か私から相手逃げてなーい? って話になったのだ。
今までの騒動アノニマルース調査班によると人為的な工作の跡があったらしい。
もちろん……神懸り的な。
暴れていた毒フワフワだの雪崩の神だのどちらも事前に接触者がいた。