百二十二生目 特異
大地の傾きを直した。
疲れた……
とはいえ傾ける時とは違って単に元に戻すだけなのでそこまで苦戦はしなかった。
なにせ今私はあれこれ使いまくったせいで筋肉痛みたいに全身バキバキだ。
もう働きたくない。
いやあ……山の方はボコボコで大変なことになっている気がしないでもない。
けれどあれは許してくれ。
直すには大工事なんだ。
私は1番疲れない地上駆けをして旧王都に戻る。
不用意に他のニンゲンを刺激しないように2足歩行に戻って現場監督のいる場所まで帰ってきた。
「戻りました、クライブは?」
「ローズオーラ!? 大丈夫だったのか、なんだか巨大魔導機関から凄まじい爆発じみた振動があったんだが……クライブはまだ戻っていない。脱出は各々したのか? こちらでは見ていない」
「わかりました……ううん、多分無事ではあるんだよなあ」
私は脳裏にあの祈りが届いたのを知っている。
しっかり無事だったはずだ。
ならば私が心配するのはやはり過剰かしら。
「それよりお前は平気なのか? あの巨大ゴーレムは?」
「ノーツは先に帰らせました。私達を助けるために、重傷を負ったので……私は、直接の傷はなんとかなるのですが、その、全力を使い切って立っているのもしんどいですね……」
「ならば存分に安め。全ての敵ゴーレムは稼働停止している。お前たちはよくやってくれた……正直、こっちはそれどころじゃないけどな。さっきの傾き気づいたろう?」
「え? あっはい」
大地の傾けは戻せたはず。
あと彼らニンゲンや建物たちは"銀の神盾"の力で概念から保護していた。
予想以上に被害はなかったはずだけれど。
「雪崩でアレが止まったことも含めて、我々の手の届かない神々の力が働きかけたんじゃないかと、話で持ちきりだ。多数生えた崖によって、今後の雪崩も防げそうなあたりが特にな。特に最後の大地包みは完全に人知を超えていた。あれでどのような影響があるかわからない。もしかしたら、偉大なる神が、このようにコントロールできない力をに対して、警告を与えたのかもな……」
「そ、そうですかね?」
なにか壮大な話になっちゃっている。
「目の前で見ていたら伝わったと思うよ。あれほどまでに圧巻の景色を魅せられたらね、アタチたち職人も、もっとデカいもんつくらなきゃって気にさせるってもんさ!」
キラキラとした眼で語るウッドロフさん。
学生みたいな背丈のせいでもうなんかお菓子に目を輝かせる子どもみたいになっている。
言ったら怒られるので言わないけれど。
「とりあえず休ませてもらいまーす」
「ああ、奥に部屋あるから休んどけ。さっき謎の結界も貼られて、あれだけ大きなことが起こったのにほとんど物が壊れてないんだ。あれを人の手で再現できれば……くぅ、楽しみだ!」
興奮しているウッドロフさんには悪いが本当に限界なので奥に行く。
するとそこには先客がいた。
……クライブだ。
「クライブ……おっと」
規則正しい呼吸をしている。
寝息だ。
よく見れば回復溶液を雑に身体にかけてそのまま寝たのがわかる。
すぐに気体になるけれど医療をかじるとその見分け方はつくのだ。
「失礼して……」
私は近くのベッドを借りる。
仮説のものだが頑丈そうなつくりだ。
「戦いの後は、ただ……おやすみ」
寝て休息し次の冒険へ備える。
きっとそれが冒険者というやつだ。
「……ああ、すまない」
だからこそそのつぶやくようなひとことは聞こえなかったことにした。
そうして私が起きたらアノニマルースの回復ポットベッドで寝ていた。
まーたやっちゃったか……
「ローズクオーツがキミの異常を察知して回収しました」
「はい」
「今回は3日でした」
「はい」
「何か言い訳は?」
「何の申し開きようもありません」
私は主治医……つまりホルヴィロスに詰められていた。
ほんとすみません。
なんか大丈夫って言って毎回すぐ帰ってきてすんません。
「まあ……事情は聞いているよ。都市を守るために無茶したんだよね、医者として、すくわれていい命たちが救われたのはよかったよ」
「はい、そうです」
「けれど! 私としてはローズがボロボロになるほうがつらいんだからね? わかっている? 今回は肉体はともかく、精神と魂がゴリゴリに削れていたよ、これは神でも危ない状態だよ。神力を酷使したせいだよね?」
「はい、ええはい」
「逆に超回復で異様に補強されているようだけれど……これほどの無理はなるべくやめようね。ローズの特異体質がなければまずかったかもしれないよ」
「はい……え? 何? 超回復? 特異体質??」
何かご存知ない単語が並べられたんですけれど!
一体何の話かと思ったら改めて話をしてくれた……