二百十五生目 繁栄
謎の新しい迷宮を見つけ中に入りこの世界の最新を大きくこえたオーバーテクノロジーの塊にでくわす。
そうしてついに状況についていけず意識が半ばとんで……
どうなったんだっけ。
[初期設定が完了しました]
モニタにそう表示されている。
ええと、何かいきなり現れたパネルにあれこれ叩き込んだのは覚えているんだけれども……
ええと。
[ワールド:地球の迷宮 を始動します]
モニタにそれが表示されると共に細かい振動が地震のように部屋ごと揺れる。
立っていられないほどではない。
ほどなくして振動が収まる。
[この部屋はマスタールームとなり、隔離されました]
[プロデューサーは自由に出入りが可能です]
[今後は自動発展を行います。現在は 1 段階目です]
文字が次々と流れてくる。
ええっと……
基本的には勝手に生態系築いて迷宮が成長すると。
任意的にちょいちょいいじることも出来るが龍脈の力を使うよと。
この部屋では迷宮内全体を管理できるよと。
うーむ……
かなり勢いであれこれ設定したが今どうなっているのか……
迷宮の全体図をとりあえず表示させた。
む、かなり小さい。
まだ全体合わせて体育館や公民館と呼ばれる程度のサイズなのか。
3の部屋に別れていて階段で昇り降りする。
中には何匹かすでにいるようだ。
出来たてなのに誰が……と思ったが私がさっき勢いで設定したものだった。
個体情報は機械で作られた人造生命体。
魔物なのか、これ。
詳細を見てみたら金属で作られたレベル1のヒヨドリたちが跳びはねていた。
さらに奥の部屋には謎の装置。
謎の装置が一定間隔で金属ヒヨドリを生み出している。
なんじゃこりゃ。
ええと……どうすりゃ良いのだろう。
もしやここ、うまくニンゲンから隠せば私達の群れで良い訓練所や戦力になるんじゃあ……
ソレはともかくとして。
九尾には見せてはいけない気がする。
この世界のニンゲンたちにとってはあまりにオーバーテクノロジーの塊だ。
なぜこんなハイテクな迷宮が生まれたのかがわからないが……
ただ九尾が解析したら恐ろしく毒となるか薬となるかわからない。
もちろんこの世界に発生したものなのだから実際は問題ないのかもしれないが……
今はやめておいた方が良いと直感がつげる。
うんやめとこう。
あ、金属ヒヨドリたちがかってに戦いを始めた。
とはいえどちらも違いがないためある程度で耐久力がなくなりどちらも倒れる。
フラフラと必死に起き上がり歩き謎の装置に入った。
しばらくしたら元気になって出てきた。
どちらもレベルが2になっている。
ふーむだとするとああしてこうしてやれば……
こうなってしまったから仕方ないと言うわけではないが色々と思いつくまままに要求していく。
タップタップタップ……
『ローズ? まだ終わらないのかしら?』
『あ! あっとごめんごめん、今帰る』
『……? まあ無事なら良いのだけれど』
あれから何分たったのか。
夢中で作業していたらユウレンから"以心伝心"で念話が飛んできた。
しかも時間切れで"進化"が解けてしまうし。
いつもの四足に戻って何とかいじっていた画面を閉じる。
まあちょうどひと段落したし良いか。
まあよくわからないがとりあえず今はこれどころじゃあないしなあ。
また来られる時にこようと。
自動で色々とぶん回して。
外に向かう扉の先はのぼり階段になっていた。
そのまま外へ向かえば問題なく荒野の迷宮へたどり着けた。
とはいえまだキノコと木が高く生い茂っているけれど。
迷宮のことは気になりつつも心にとどめておこうと決めてユウレンの元へと走った。
たどり着いたら時間がかかり過ぎなことを怒られつつ迷宮以外のことを報告した。
「へぇー、龍脈がかなり集結しているのに安定しているのね……確かにそんな場所はごくまれにあるとは聞くけれど、初めて直接見たわね」
「でしょ? だから念入りに調べたんだけれど、土地の活性化がとてつもないし龍穴から周りにエネルギーがばら撒かれているだけで悪影響はなさそうだった」
「もし、伝承にある話通りだったら、ここはとてつもない繁栄が訪れる……そう約束されているようなものね」
ユウレンが記憶を引き出しながらそう話してくれた。
何とかごまかせたようだ。
問題はこのあとだが……
「まあ、その恩恵に少しでも預かれれば良いんじゃないかしら? 安定してあるのだったらね」
「どうすれば良いんだろう……」
「さあ? 群れの住居をもっとこっち方向に寄せるとかで良いんじゃあないかしら」
適当だ。
まあほとんど例が存在しないみたいだし仕方ないのか。
とりあえずその場は何とか収められて私は次の場所へとワープした。