百十四A生目 狙撃
エネルギーに溺れるといえばいいのか。
普段はある程度の濃度の魔力が私の内外にあることで成り立っている。
隙間があるから魔法を出せるのだ。
簡単に言うなら浅瀬だ。
いけてもプールくらい。
しかし今はとんでもなく多数のエネルギーをメチャクチャにぶちこんでかき乱している。
私の中のエネルギーも影響を受けるし外の部分に干渉がうまく出来ず発現も難しい。
これは言ってしまえば深海だ。
弱いものがいればそれだけで無遠慮に潰すような圧力。
「クライブ、大丈夫!?」
「魔法が使えなくなっているな……」
「最悪……! また来るよ!」
剣ゼロエネミーはやる気をなくしたかのようにへにゃり。
銃ビーストセージはまるで弾でも詰まったかのようにくしゃみしている。
こうなると敵の猛攻はまずい。
たくさんのロボットアームたちが一斉に降り注いできたのを必死に避ける。
かなりの力で突き刺してくるのはさっきのクライブが鍔迫り合いしたのでよくわかる。
あの巨大な剣で押されるのなら筋力がとんでもないだろう。
まあ筋肉じゃなくて人工パワーだからなあ。
工業プレスなんて何トン出るんだといえ話で。
今はロボットアームが結構数で推してきているからなんとかなる。
「くっ、まともに打ち合うには多い!」
「なんとかあの波動の中心を封じないと!」
私の目の前に数本ものロボットアームが立ちふさがる。
瞬く間に迫って機械的に刺してくる。
予備動作が生物的なものが一切なくメチャクチャやりづらい。
ただしあくまで機械的だ。
くればまっすぐ攻めてくるのでその点を把握していれば少し下がるだけでも当たらない。
(けど攻めないと進めないぜ!)
ドライの言葉は最もだが現実はそううまくいかない。
私の体を削るように前へ踏み込んでも対して前へ行けない。
横にそれて弾丸を回避。
イバラの数で対抗し相手を縛り上げる。
しかしその間にまた数が増えた!
ちょっとキリがない!
「絶望しろぉぉっ」
そしてまた強烈に吹き出すスチーム。
赤熱しだすスター。
レベルが55に!
「ぬぅっ!?」
クライブが弾き飛ばされ受け身を取り追撃をギリギリ回避している。
私も蒸気を避けようとして何発か弾丸がねじ込まれてしまった。
イバラである程度跳ねているものの全方位はキツイ……!
レベルが段階的に上がるということはいきなり動きや強さが変わるということ。
それに対応しきれず前と同じ防ぎ方では対処できずに被弾したわけだ。
さすがに銃弾何発程度では何か危ないことはないものの……
これが繰り返されるこの先の未来がきつい。
回復魔法も当然使えない。
ジリ貧である。
「このままじゃあ……!」
その時に。
突如敵の腕が一部爆発。
それどころか波動を放っていたスターの持つエネルギーの塊が撃ち抜かれ爆発。
いや今のは!
「標的破壊完了」
「ノーツ! なぜここに?」
「なっ、でかいな!? 味方か?」
「当機は創造者ローズオーラのゲートキーパー。ここへは、現場監督ウッドロフ・リリィの指示」
「なるほど……とにかく助かったよ、ノーツ!」
そこには惜しみなく巨体を晒すノーツが多数の銃口を体から開いて構えていた。
すぐに閉口し次の攻撃へ備えている。
一気にエネルギーの波が引いて力が使えるようになった。
魔法さえ使えればなんとかなる!
私は精霊たちの魔法スロットも全部フルで使い再詠唱。
ノーツは前へ出てロボットアームたちをまとめて焼き払っている。
クライブは暑い環境対策でどんどん水を使っていた。
私は亜空間から水を出して全員にばらまいていく。
あと魔法で岩を吹き飛ばして城壁の一部を崩した。
多少とはいえ空気がマシになる。
外の雪が舞い込んですぐに溶け消えた。
「小癪なぁぁ!!」
私は再度魔法で縛り上げて寄せて潰すがロボットアームたちをまともに相手にするのはやめだ。
キリがない。
ショートギアたちは何か対策したらしく引っ張りに抵抗したので剣ゼロエネミーと銃ビーストセージを使う。
しゃきっとした剣ゼロエネミーはショートギアもロボットアームもまとめて回転しどんどん切り裂いていく。
1度や2度ではなく往復し破壊するまで何度も。
銃ビーストセージは2つの銃身をくっつけて1つのカタチに。
長いこの形はスナイパーモード。
こんなとんだり跳ねたりした環境でやるものでもないけれど。
でも訓練したからやるんだよーっ!
ロボットアームを避けて腕を蹴り飛ばした空中。
ちょうど向こう側にショートギアが一体撃ってきている。
スコープを覗くと大きな顔が。
距離的に余裕だ。
銃に込められた魔力が今……その頭に火を吹いた。
雷鳴が轟き一瞬で着弾と共に頭部が爆散した!