百十三A生目 加熱
2023/06/07 重なっていた部分を修正しました
私の方はとにかく逃さないことに気を配る。
新たに得た毒の力も使おうか。
"溶解毒の真髄"をご覧あれ。
向こうが越殻者として能力をぶつけてくるなら容赦はしない。
岩魔法ではげしく潰したところに猛毒をぶつける。
これは木材に通りやすくした毒だ。
木を溶かす!
私の尾がイバラとなり尾先の赤い花が毒を吐く。
前よりも射出が容易だ。
昔はだいたい刺していたし。
毒液をまさしくぶちまけるなんて荒業を使えた。
広範囲にばらまいた毒はあっという間にあちこちの木製パーツを溶かしていく。
ショートギアの腕がロボットアームの手先にくっついて振り回されたり。
砲台の口がロボットアームと引っ付いて自爆していたり。
ひどい有様だ。
やったのは私です!
そしてクライブのほうは奥へと駆けていく。
上位の冒険者たちが行う戦うは一般人からすると目で追うのすら難しい瞬きのような速度と比喩される。
クライブの駆け足はそれに匹敵するようなものだ。
「なんだか無駄に速いな……」
そんな愚痴かなんなのか区別のつかない言葉をつぶやきつつクライブは本体の方へ。
本体はさらなる地下へと続いている。
クライブはとりあえずそこらへんに剣を振るうがどうも浅い。
「む……」
「我が肉体は大量のエネルギーを処理し生み出すためのもの、そのような攻めどころか、破壊兵器による1撃にも万が一はないわ!」
「つまり、メンテナンス用のハッチがあるんじゃない!?」
「……なるほど」
「む!?」
私の提案にクライブは剣をしまって駆けていく。
さらに蒸気ビームとか工具斬撃が振られているようだが大半は私が惹きつけている。
大した妨害になっていないようだ。
そのまま地下へ地下へとおりていく。
当然気の利いた足場なんてないのでそこらの突起や腕それに壁の隙間を縫う。
やがて1つの引き出し口を見つけたらしく覆っていた邪魔な木板を切り裂いて捨ててから扉を開く。
ニンゲンひとり余裕で入れるほどの大きな穴。
クライブは重い蓋を片腕で開けて中へと入った。
「うおおぉぉ!!」
「これだな!」
クライブの前には発光している不思議なショートギア。
"鷹目"あたりで見ているけれど型がなんだか違う。
明らかに機敏かつ力強い動きでクライブに迫る。
クライブはギリギリのところでしっかり刃をさばき続けて撃ってくる銃弾を剣を盾にし防ぐ。
多少の被弾はほとんど効かない。
踏み込んでザクザクと斬っている。
片手で袈裟斬りしそのまま横薙ぎしたあとに背後に跳んで反撃を避ける。
隙を突いて炎を魔法で放ち踏み込んで両腕で斬り飛ばし吹き飛ばした。
「グヌウウウゥゥゥ!?」
「クライブ、何か危ない!」
「ああ」
そして叫ぶスター。
いきなり輝き出すショートバグ。
クライブも見切りをつけ後ろに跳ぶように撤退し扉から抜けて再度蓋をした。
低い爆発音と共にあちこちから黒煙が上がった!
「何ぃ!?」
「一気に耐久値が減った! 効いているよ!」
「メンテナンス通路を1つずつ爆破すれば、致命傷を与えられそうだな」
外側が強いものでも中はまた別ということは多い。
すぐに黒煙が蒸気に変わっていく。
「許さんんんんぅ!!」
またヒートアップしたらしくレベルが54へ上がった。
それと同時に先程より激しく多くなったロボットアームたち。
さらにはあちこちから蒸気の上がるラインが増えた。
いきなり場所が変わって厄介だ。
「あの蒸気、当たると火傷じゃ済まないかも……!」
「とにかく暑いな……」
「魔法で体温を落ち着かせるから、水だけ忘れずに!」
火魔法"クールダウン"で私とクライブの体温を平常へ下げる。
あっついんだよね。
今体温を下げたけれどそもそも空気が暑い。
まさしくサウナみたいだ。
こんなところで戦うのは正直しんどいがどんどん蒸気が出て空気を温める。
こちらの魔法であちこちに関与するのも限度がある。
「たったふたりで我が身を抑えようなどと……無駄なあがき!」
うなりを上げると今度は各地の天井が割れていく。
そこから覗かせる複雑な配列と木の配列。
まだあったのかスターのからだ!
最悪全部崩壊させてしまおうと考えていたがどうやら無駄っぽい。
なぜなら中でしっかりスターに連なるアレコレが見えているから。
あれじゃあスターを倒さない限り崩せない。
「さっきと同じように引き寄せて……うわっぷ!?」
「なんだ、この波動は?」
「もうさせぬ! 我が無限のエネルギーで封じる!」
いきなり場に波動が多数放たれる。
周囲にエネルギーが満ちて乱れて……
魔法が使えない!
「ち、力押しで魔法を封じた……!? こんなの想定できないって!」
無限のエネルギー自慢するあいつしか取れないような戦法だよ!