百十二A生目 共闘
私とクライブは敵の方へ向く。
その巨体は発光しており何ら隠すことなく部屋中央に鎮座していた。
「なるほど……また不届き者がひとり。我が玉座の間にたどり着いたか」
全身は間違いなく最高品質に造られた木製の建造物。
それはゴーレムというよりは建造物。
旧王都はこれのために建てられた。
そしてこれのために棄てられたのだ。
全身の隙間から溢れる輝きがラインのように走って。
唸るような声がスピーカーじみた設置されたものから響き。
そして吐き出される蒸気。
その全身は間違いなく巨大過ぎて全貌が見えないほどにあった。
地下深くまで体が続いているのがはっきりしている深い穴とともに。
言ってしまえば巨大な筒だ。
複雑であちこち動いて様々なところから構えたロボットアームが生えているが。
「……それで、さっきからとんでもなく補助魔法を俺に投げてないか? どんどんと全能力が増しているんだが」
「そう? まあこのぐらいはしておかないと危ないからね。だって、アレに挑むんだよね」
超巨大魔導機関から悪魔のような気配が漂う。
ただ悪魔ではなさそう。
神力があるけれど……なんなんだろう?
「キミは、誰なの?」
「ワレは魔導機関ンンゥ。我が身、この無限なる力を用いて、我が新たなる、最強の体を造るもの。我が意識を目覚めさせた神に、尽くさんとする!」
「神に意識を? 一体誰が……」
「神はああぁ、我が神でああぁる。全ての邪魔なニンゲンをこわしぃ、魔物を駆逐しぃ、そして! 都市を我が配下にぃぃ」
「ちょっと、それは困るなあ! やめて大人しくしてくれる気は?」
返事はなかった。
元々一方的な会話みたいなものだったが。
かわりの返答としていくつかの砲台が開き大砲のような弾丸が飛来する。
「ちなみに、こいつは初めからこうだったぞ。壊れた機械は叩いて直すしかない」
クライブと私は跳んで避ける。
連続で正確に飛んできたが逆に偏差をよんでないため足を止めねば回避は楽だ。
深くは言わなかったからこちらも振れなかったがクライブの傷はかなり深かった。
致命傷は避けていたが生命力はピンチ。
回復薬を使う隙を見いだせなかったのだろう。
「にしても、体が本当に軽いな……これほど重い補助と回復してお前は……」
「うん? なにか?」
「いや……魔物ならそういった規格外もあるかもな。いい、とにかく目の前のこいつを黙らせるぞ」
ちらりとみんなの顔が見えてしかも全員首を横に振っていたが気にしないことにした。
「我が理想に潰えよ」
全貌はまだ見えないが"観察"!
[王国魔導機関スター Lv.52 比較:少し強い(耐久大) 異常化攻撃:灼熱 危険行動:ヒートアップ]
[王国魔導機関スター 元々は物言わぬ魂なき存在。空に輝く星のような力を地上の民にという願いを込めて異国の言葉の名をつけた。暴走理由不明]
ヒートアップ?
疑問に思っていたらすぐにそれらしい行動が見えた。
スターが眩しく輝いたかと思うと大量の蒸気をあちこちから吐き出したのだ。
「あつっっ!?」
「それには触れるなよ。しかもアレをやるごとに力が増している。おそらく、自分の燃料で強化している」
「うわっ、本当だ!」
私は火に耐性はあるが熱に耐性があるわけではない。
ゆえに蒸気は素直にあつい。
あたりもなんだか茹だるような暑さを少しずつ感じてきている。
クライブもよくみると戦闘の汗にしては発汗が多かった。
熱を冷ますかのように水を体に浴びせている。
そしてスターのレベル。
さっきは52で今は53。
継続戦闘し続けるごとに強くなるとはなんとも理不尽な。
その戦闘限りの効果だとしても厄介すぎる。
「じゃあ早く倒しちゃうよ!」
「問題はあれをどうにかできたらだ!」
「……わあ」
そして大量に生えてくる機械腕に何かしらの兵器口たち。
そしてショートギアまでいる。
これはとんでもなく面倒だぞう……?
「あれはクライブには相性が悪いよね……」
「面倒という意味ではな」
「じゃあ私がまとめて相手するから、本体を頼める?」
「何?」
私は返事も聞かず4足で駆け出す。
魔法はもう唱えている!
たくさんの腕が私に食らいつこうとしてくるのを跳んで屈んでイバラで弾いて剣ゼロエネミーで切り開いて避ける。
ある程度のところでまた闇夜コンボで"グラビティレイテッド"や"プルイン"して抑えつけひきよせたあとに"シャドウトレーディング"の影魔法で逃走阻止。
「走って!」
「なるほど、さっきの魔法……お前だったか」
私は集まったロボットアームやらショートギアやらをまとめて岩魔法で潰し壊していく。
クライブらまだ残っている兵器たちの砲撃を避けながら敵のふもとへと駆けた!




