表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2198/2401

百六A生目 爆弾

「…………」


 敵たちが顔のないため無言で飛んではねてノーツへ突っ込んでいく。

 やはり見えていなくても明確に狙いに来ている。

 多少は目隠しにはなるようで近距離にしか反応しないが。


 そしてノーツは。


「発射」


 ゴツい銃の大きな口から炎を吐く。

 その炎は赤や青ではなく緑や紫といった不可思議なケミカルカラー。

 毒の炎である。


「……グァ……」


「命中」


 敵に付着すると途端に敵たちが苦しみ倒れ込む。

 さすがに生体のように転げ回ったり怯えたりはしないものの炎が触れたという反応とはまた違う。

 熱いのは熱いので火傷のようなものもみえるが。


 なにがえげつないかっめその制圧力。

 毒火炎放射を向けた方向は物理的に動きを止められてしまうのに軽々向きを変えつつ移動するし。

 ニンゲンサイズより遥かに大きいため面を全部抑さえるのが容易。


 毒火炎放射は当たった敵を溶かしていく。

 溶けた足裏と地面は歩めなくなるほどだし何よりこの毒が高温なのが効いている。

 この毒は火になるほどであるとてすぐ無害化するのだ。


 溶かして揮発したあとすぐに毒としての残りがなくなる。

 自然に優しい以上に……地形や身体が一瞬だけ溶けてすぐ固まるのだ。

 顔のない敵相手は容赦しなくていいとはいえ怖いよ!


 ただそのおかげでひとりで足止めからのトドメを完遂している。

 逆にほかが近づくと危ないまである。

 まあノーツが誤射なんてするはずはないが邪魔になるかどうかはまた別の話なのだ。


「ひゃー、えげつねえ。片っ端から溶けていきやがる」


「もし、倒した後光になって消える相手じゃなければ……ブルル」


「ん、おいしいお肉量産」


 溶解毒を『肉が分解されていてやわらかくなっていそう』と考えるのはなかなかのツワモノな気がする。

 記憶がなくとも昔の下等奴隷扱いがどこか今の人格形成しているのだろうか。

 今やご飯は毎日山のように食べてるらしいのに……


 端に追い詰められた顔なしたちがまとめてドラゴンブレスで光に還っている間に私は巣たちの切り分け作業を進めていた。

 見極めが済めば剣ゼロエネミーくんが土地ごと剥がしてくれる。

 感覚的にはベロンとだが規模的には重機入れての建物工事だよ。


 魔法をこまかく使い背後からの虫を避けて計算しながら剥がしとんできた毒液をイバラで受けて弾き。

 巣を破壊しないようにかつ迅速に剥がし終えたさきから転移させていく。

 結界でしばった分はしばらく大丈夫だろう。


 さて山程焼却したはずの顔なしたちはあっさりとまた境界穴から続々出現する。

 みんなも嫌な顔をしていた。

 物量で質を圧倒するのがいやらしいのだ。


「うー、突撃しちゃあだめですかねえ、あの穴に」


「それはだめだ。中の危険度はここより跳ね上がる。全ての準備を整えてからでなければ、やらない方がいい」


「パパ……どうどう」


「戦力評価、戦線維持可能時間はあと4日」


 当然4日も戦わせる訳にはいかない。

 というかそんなに長く虫の巣剥がしにかからない。

 もうだいぶ剥がし終えている。


 慎重な作業を求められているのでそこまで急きはしないもののやっぱり戦いの場でやることではない。

 それでも強行したのは彼らのすみかと命を奪いたくなかったから。

 私のワガママみたいなものなので必死にこなす。


 そして最後の1つを剥がし終えて……


「転移! 成功! よぉーし! いいよぉ!」


「終わったかローズ! ようし、やるぞお前たち!」


「強化かけ直すからね! さすがに30個の巣は多かったなあ……」


 剥がした巣の跡がえげつなく残っている。

 土ごと壁ごととやっていったし変なところにも掬っていたため見た目空間が何かでえぐれたかのようだ。

 えぐったのは私なんだけどね!


 表に出ている顔なしたちを各自で一層しつつ境界穴に押し込むよう前進する。


「おーい! なんだ、もう行くのか!?」


「ウッドロフさん! はい、行ってまいります」


「あぶねぇ……おまえたちの仕事があまりに早すぎて、渡しそびれるところだった」


 ウッドロフが夜闇に紛れ駆けてきた。

 何事かと思ったらわざわざ何か運んできてくれたらしい。

 ……後ろについてきている部下まちが。


「お、おもいっ……!」


「ひぃー! これ本当に大丈夫なんですか!?」


「うっさい! 話を聞いた限り行ける! というかむしろないと危ないかもだろ!」


 それはおとなふたり係で引っ張ってきたもの。

 台車の上に置かれたそれはこの大陸での木材で組まれた箱。

 ただ……近くにあるだけでなんとなくヒンヤリとさせる雰囲気の。


「こ、これは?」


「ああ! 最新式の、爆弾さ! 採掘用だからでっかい岩盤を粉々にする威力だぞ!」


 わあ……

 とんでもないものもらっちゃった!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ