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九十九A生目 壊死

「話は聞いていたな、俺は先に行くぞ」


「ああ、うん」


 領主にさせられているクライブくんと目の前にいる2メートルのクライブ。

 男性名として普通だからとはいえここまで違うふたりが同じ名だとは今更なかなかどうして。

 もしかして領主のほうのクライブくんも未来はこうなるのだろうか……?


 だなんて考えていたらクライブに置いていかれた。


 ふーむ気合を入れ直さないと。

 まあやることは決まっている。

 クライブは超巨大魔導機関の暴走を討伐。


 私は旧王都自体の奪還だ。

 やることは似ているが私はまず後方支援だね。

 まあ私がトンテンカンと何か建てるわけじゃなくて警備し安全を確保して防衛ラインを引き上げる役目だが。


 もちろんかこれは個人では不可能。

 既にアノニマルース側に発注済み。

 一応話は通してあるがクライブと現場のニンゲンたち驚きそうだ……





 作戦自体は後の時間。

 というより受けてからすぐにやらなくちゃいけないタイプのものじゃないから準備期間のほうが大事なのだ。

 クライブも先に現地入りして詳細を見て詰めるつもりだろう。


 なので私はアノニマルースに戻り時間の合った魔王フォウのところに行く。

 もろもろあって魔王がとんでもなく弱体化し我がアノニマルースに転がり込んで来ている。

 名前はフォウ=フォウ。


[おまたせ]


 フォウは口がないため発音がないけれどかわりに文書を魔物たちみんなが脳内に持つログというところに文字を送れる。

 ようはチャットみたいなものだ。


 相変わらず球体の身体に三角帽子。

 とってつけたようなスライム顔に体から離れた手袋と靴。

 そんなフォウはまたごちゃっとした荷物を頭のつばやら手やらにたくさん持っていた。


「またたくさん貰い物しているね……」


[いろんなことが出来ない自分だがなぜかたくさん助けてもらえている。アノニマルースが良い環境だからだろう]


 フォウの文面はクセがあり文面だけ見ていると淡々としているがそれを語る顔は表情豊かに喜びはしゃいでいる。

 別に本人に何か特別な感覚があるわけでもなくそれがふつうという市井だった。


「じゃ、早速」


 ここはカフェなので各々注文して席につく。

 ちなみにフォウは口がないので食事しない。

 ただし提供されたものを受け取ることでエネルギーを得るそうだ。


 まあ分かりづらいけれど口を通さないし何も見た目減らないだけで飲み食いできるわけだ。

 自然にあるものを自分でとるんじゃなくて誰かを介さないとだいたいは駄目らしいので行為が信仰となり貰い物が供物になるのだろうか。


「これが、例のやつね」


[確かに。鱗だ]


 やはりフォウは1発で見抜いた。

 私が机の上に出した盾は大人しくしている。

 盾に『大人しくしている』っていう言い回し使うとは思っていなかったなあ……


「やっぱり知り合いの?」


[どれどれ。確かに。古代の神だ。直接の知り合いではないが知っている。他の者との折り合いは悪かった気もするがこれがあるということは]


 どこか遠くを思うように。

 そして祈るように目をすぼめたあと。

 そっと笑顔になる。


[きっとこの世界が好きだった]


「うん、きっとこの神も、それを託していったんだよ」


[過去の想いを少しだけ共有しよう。手品みたいなものだ]


 優しい手付きでフォウは盾を触る。

 フォウの時代。

 世界創造の時の神たちの遺物。


 盾から淡い光が溢れ私達の視界を覆った……





 そこは何もかもを覆い尽くす水の中。

 泳ぐ姿はなめらかな魚のようで。

 しかし大きくまたただの魚というよりまるで蛇のように。


 しかし蛇と言うには手足があり大きな角があって目が開かれている。

 それは今の者が見れば龍と呼ぶものの1つだった。


 彼の通った後は腐っていく。

 水がにごり土が溶け生き物たちはその過剰すぎた命をばらまく。

 過剰すぎて……もはやぎゅうぎゅうにあらゆる死を招いていたものたちが解けていく。


 物理的に。酸素的に。誤飲的に。過剰エネルギー的に。

 与えられすぎて壊れていた環境がどんどんとまともになっていく。


 積もった死体たちが毒に触れて溶けていく。

 土がえぐれ場所が広くなり。

 死体たちは新たな土となって豊穣を促していく。


 溶けて混ざり合う命だったものたち。

 そこから新たな生命が増えていく。

 神々のお気に入りたちはこうしてあるべき姿になっていった。


 終わりのその先をこの神は作り他の神たちも初めは気に入らなかったが徐々に気に入られ……

 そうして世界に毒という薬が撒かれた。

 そんな壮大な創生の物語の一端が私の脳裏に確かに響いた。


 彼の心は常に世界に向いていた。

 それは自分の身を削る行為だとして何のためらいもなく行うほどに。

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