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九十六A生目 首都

 木造の工場が立ち並び蒸気があがって雪を溶かさんとする勢いの都市。

 人々が長年暮らしてきたような都市とはまるで違いデザインを美しく設計されている。

 歴史と侘び寂びを感じる王都ともどっちにも良さがあるので甲乙はつけがたい。


 遠くから見ると熱気が都市を赤く包んで雪から守っているようだ。

 実際ただ暮らすニンゲンたちはこんな寒い場所ある程度熱を活かさないと難しいだろう。

 とはいえここまでやるのは言うのはやすいがやるのは困難だが。


 私は手頃な木の板を用意して足にくくりつける。

 2足でね。

 そうして片足を蹴り出して……


「ゴー!」


 雪の上を……滑る!


「ヤッホーー!」


 なかなかやれないからねこういうの!

 私は雪の独特な感覚に足を慣らしながら道なき道を進む。

 ボードが雪を蹴って蛇行しながらも加速し降りていく。


 降りていく速度でいえば私が駆けたほうが速いだろう。

 しかし雪の中全身を使って板で滑っていくというのはとても楽しい。

 エッジをきかせターンしたあとでっぱりを利用してジャンプ。


 くるりと回って着地しそのまままた坂を下った。

 ゴリゴリ雪を削るように滑ると足裏から伝わる衝撃が気持ちいい。

 だれも滑らぬ道をかける。


 ちなみに当然整備されていないので普通に危ない。

 鍛えた冒険者以外真似しないでください。

 膝を使い腕を揺らしバランスをとって雪を蹴散らす。


 そうしていればやがて首都近くのエリアまで降りてくる。

 さすがにここまできたら山なりではなく平らな空間になってきた。

 こうなれば雪を滑るのは限度がある。


 無理をすればとんでもなく加速して進めるだろうが今はそんなことする意味はない。

 素直に降りて雪に足を埋もれさせた。

 これだけ降っているなら街道もさぞかし大変なのではないだろうか?


 その疑問はすぐに解消された。

 街道近くに来ると響く低い駆動音が聞こえて近くにいけば雪の壁。

 壁を乗り越えるとそこには……


「車!? じゃない、ゴーレム!」


 熱気と蒸気を発しながらその道を走るのは巨大なゴーレム。

 全面に曲面のような板があり8本脚をガタガタと踏み込みながら雪を片付けている。

 まるで除雪車だ。


 蒸気で動いているゴーレムたちは壁に雪を硬め少し溶かしてから再度凍てつかせている。

 すると氷雪の壁が出来上がるわけだ。

 終わった後はまた別の積もりだした所に向かう。


「なるほど、これで除雪していたんだ。よっと」


 着地!

 するとわかるのは足元の熱気。

 後で知ったのだがこの下は熱い蒸気やら湯が駆け巡っているらしい。


 これで少しでも雪を積もるのを遅らせるのだとか。

 でもまあ限度はある。

 雪が酷い日はこうやってゴーレムたちが働くのだ。


 私は街道沿いを雪に手を滑らせつつ首都へ進んだ。





 首都でまず真っ先に目につくのはなんといっても壁なしだということだろう。

 大きな都市はほぼ壁があるこの世界。

 首都は結界が強めにはられているもののソレ以外は壁がない。


 衛兵たちは街道からの道には立っているが普通の仕事をするだけで他は特に変化はない。


「この街、壁がないんですね」


 私は冒険者証を見せて通行許可をもらい話しかける。

 相手は寒そうに軽く頷いた。

 ちなみにこういう土地に住むものはニンゲンでも毛皮に覆われたトランスしたものが多く衛兵さんもご多分に漏れない。


「雪が深く、地形もけわしい。壁をたてても、雪の重みで逆に危険を招く。だから壁は諦めたのだ」


「そうなんですねえ」


「建築当時はともかく、今では逆に良かったと考えられている。これからの時代、壁を造るより大事なことはあるからな」


 まあそれはそうだろうなあ。

 もっと国境を気にするほうが利点が出るようになりそうだ。

 魔物よけの結界もそんな何百も前の年数よりだいぶ良い品物ができているし。


「ニンゲンの出入りも、だいぶ制限出来そうですしね」


「そうだ。街道以外から無理やり来れば、それはそれでとても目立つからな」


 私は衛兵さんにお別れをつげて街中へ。

 街の上から見ても思ったが街中は更に不思議だ。

 家屋たちは豪雪にも耐えられるように屋根が斜めになっていて同時に熱を通しているらしく降っても溶けている。


 あまり低い建造物はなく入り口が1階と2階のふたつあるのがデフォルト。

 あとは全体的にカラフルな家屋が多い気がする。


「ああ、全部雪対策なんだ」


 今はまるでそんな様子はないが歴史的に雪と戦い続けているのだろう。

 各地にそういう跡がある。

 現代であっても蒸気に包まれていようがゴーレムいようが駄目なときは駄目なんだろう。


 それと単なる家らしきものが目につく限り少ない。

 店舗もそうだがまさしく工場のようなつくりがあちらこちらに見られるのだ。

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