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九十二A生目 病気

「これは……まさかここまで調べ上げているのか!?」


「私はともかく、みんなは優秀ですから」


 クライブは興味がなさそうに自分の武具を手入れし始めしだした。

 私の情報をキャサリン王女は知っている。

 アノニマルースのこともふわっとだが理解出来ているだろう。


「なるほど……ここまで各地に調査が……それにしても、まるで違うな。この表通りならば、いくつもの渦が生まれているかのようにも見える」


「ええ。だからこそ私も1度王都に来てみたのですが……別のものに引き寄せられていたみたいですね」


「神器か……なるほど」


 渦はいくつも起こっているがそのうち1つは王都付近に向かっている。

 おそらく原因はこの盾だろう。

 さらに立地的な問題で王都自体元々龍脈が集まりやすいし。


「ここまで各地に変動があったのか……普段は見えぬ地の底のことだからな」


「ええ。測定は出来るものの、わざわざやる気は普通は起きませんから。私も、龍脈が枯れた土地がなければわざわざそんな調査頼みませんでしたし」

 

「なるほとこの端だな。農耕地帯なのに……わかった、ここは担当の者に話を回そう。領主は……ああ、確か先日騒動があった。これならば、荒れるのもやむなしか。わかった、こちらは写しをとっても?」


「もちろん。それと、龍脈の流れの変化は人形騒動の元凶に繋がっているかもしれない。それも含めて調査中なんです」


「なるほど……こっちでも、人員を要請してみるよ」


 後は良いようにしておいてくれるだろう。

 王都は余裕がある。

 つまり不足を補う準備があるということだ。


 さてあと1つ気になるところはある。

 この龍脈に関係した話はまだ向こうの調査を待たないと。

 あとは。


「それにしても、あの王様すごかったですね、こう、あったかいパワー全開! という感じで!」


「ああ、国王(ちちうえ)はああ見えて凄まじいやり手なんだ。どのような敵ですら、父上と話したら改心すると言われるほどのな」


 それはそれでちょっとコワイような。

 そしてその国王陛下で気になること1つ。

 私は周囲に目線をくばってから話す。


「……少し、人払いをお願いできますか?」


「ん? ああ、いいが……なんの話だ?」


「王の話です」







 あたりにニンゲンがいなくなる。

 いるのはクライブとキャサリン王女。

 ローズクオーツはゴーレムなので除外。


「じじいの話? なんなんだ」


「いや、杞憂ならばそれでいいんだけれど……」


 私は一拍おいて続ける。


「王は、病に冒されているのですか」


 王様は病人か。

 ただそれを問うためだけの人払い。

 そしてただそれを問いただけで一気に空気が締め上がった。


 冷えてもはやこれ以上圧縮出来ないというかのように。

 一瞬にして息苦しい環境がうまれた。

 それと同じように全員の口からは開くのに言葉が溢れない。


 キャサリン王女は目を見張っているしローズクオーツは手を顔に当てて驚いて。

 クライブは眼光鋭く纏う気配はまるで殺気にも似ていた。


「……香りをたいていましたが、病人のにおいが、そして化粧はしていましたが、くぼみやくまが隠されていたかと。それに、ローブに隠れた身体は……おそらく、かなり細いのではないのでしょうか」


「はぁ……隠しきれないか」


「なんだと……では、じじいは!」


「ああ。国王(ちちうえ)は、重度の病だ」


 キャサリン王女は言って目を閉じる。

 ああ……やはり。

 初見だから比較はできなかったがどうにも隠しきれない何かを見出した。


 逆に見慣れたものは自然に受け入れてしまうかもしれない。

 クライブの動揺をみるとそう感じる。


「やはり、未公開の情報でしたか」


「ああ。人払いしてくれて助かった。もうひとりの男なら絶対そんなことはしないからな……」


「フン、病かどうかで身内を疑う羽目になっているよりよほどいい。それで、治療は?」


「だめだね。年齢もそうだけれど、医者は気力が感じられないと話していた。潔く天に迎えられたがる、古老に多いらしい。特に……心に傷を負った者は」


「生きる気力、と言うやつですか?」


「……なるほど、診察は、しないほうがよさそうですね」


 もしあれなら私がAI魔法で診ようと思ったがちょっと違うらしい。


「そうだな。国王(ちちうえ)は延命を臨んでいない。王妃が先に旅立ち、そしてミルーカ周りのあれそれと……心を痛んでも仕方ない」


 ミルーカの処分周りの話は一応公にはなってはいない。

 ただミルーカがいなくなることでミルーカが旗だった大衆向けの料理屋(レストラン)が混乱している。

 人の口に戸はたてられない。


 ソレはひっそりとどこか真実味をもった噂となって同時に大きな声では言えないこととして国にひろまっている。


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