二百十二生目 圧縮
処分場に積み上がったゴミに対しホリハリーに"進化"した私が仕上げを行う!
胸の飾りを触れば組み合わせ魔法が発動し岩が地面から持ち上がる。
そのまま積み上がったゴミの上に空間ごと固定されて運ばれていった。
見た目は念力で岩を空に浮かしているようだ。
そして真上にきたらゆっくりと下降していく。
ゴミたちも相当あるが岩もそれ相応に広く取ってある。
そして私の出番!
岩に"ヘヴィズン"をかけて重く。重く!
もうおわかりだろうか。
圧縮機をイメージしているわけだ。
魔物のみんなにはあぶないので下がってもらう。
見上げる程度には山積みしてあったゴミの山が崩れだす。
このままだとうまくプレスできない範囲が出るな……
私は"ヘヴィズン"をかけ終えて手が空いているから対策をしよう。
ええと……
[ライトウォール 光で壁をつくりだす]
よしこいつを使おう。
普通に使えばニンゲン大サイズの少し分厚いガラスのような壁を作る魔法だ。
ちなみに強度もガラス並。
その代わり使い捨ての壁になる。
要はこのままでは見上げるほどあり横幅も何メートルかあるものをカバーできないし圧縮機のパワーにも耐えきれず壊れるだろう。
だけど今の私なら出来る。
今までは単純な1つの強化だけだったが今なら難しい調整も出来る。
まずサイズを合わせて唱える。
"ライトウォール"!
圧縮機に沿うように上下以外を覆った。
出来る、とは思っていたが"森の魔女"で魔法を理解るとここまで違うか。
今やったのは4つのサイズが違うものを同時に出現させた挙句それぞれを融合させたものだ。
前まではこんなのどうやれば唱えられるかわからなかったがあっさりと……
両手を突き出す。
見えない魔法という力を演奏し操るように体ごと動かした。
まだこれだけではない。
『復唱』という技術を使って連続で同じ魔法を使い『重ねがけ』という技術で全く同じ壁に効果だけ追加していく。
普通はもう一度唱えれば2つめが現れるのだが先程出した魔法にそのまま効果だけ重ねたのだ。
当然壁の場合は強度が高まっていく。
『復唱』は私の思考や集中力を割かずに繰り返す技。
『復唱』を『復唱』してさらに復唱してソレを復唱する……
そうして何倍も『重ねがけ』して壁の強度が跳ね上がっていく。
もはや並の鉄筋より硬いだろう。
ただ『重ねがけ』そのものは集中力を要する。
『復唱』したのは集中力を『重ねがけ』に向かせたかったからだ。
暴発したらたぶん壁が膨らんで爆発しちゃうだろう。
そんなギリギリを見極めて完成させる。
トドメに私の魔力で擬似的な結界のように魔法全体を覆って『完結』させた。
『重ねがけ』で安定性を失ったものは私が集中力を割いて調整せねばならないが『完結』技術を使えばその状態で安定させられる。
いやあ、こんなやり方があっただなんてね。
本来はこういうのを1から身につけるのはとても大変な事だと思う。
いつもあれこれ訓練してうまくいかないことばかりだったからよく分かる。
多分普通にやっていたら私の寿命終える頃になんとかなるよ。
だけれどもスキルと"進化"でたまにはこんなズルもありかな?
いや、この世界的にはこういうのはズルとは言わない……?
うーん。
そんなことを悩んでいる間にプレスされ続け逃げ場を塞がれたゴミたちがバキバキ音を立てながら縮んでいく。
周囲から「おおー」と感嘆があがりしばし待てば……
岩はだいぶ下の方で動きが止まった。
これ以上は難しいだろうということで精霊たちに指示し岩をどかす。
私は同時に周囲の光の壁を消した。
そこに残されたのは……
「うん、だいぶ縮んだ!」
かさが数十分の1まで減り圧縮されたゴミだった。
今の魔法は色々と便利に使えそうだ。
『ストックセーブ』しておこう。
いつでも呼び出せるまったく同じように魔法を展開するように流れを記憶し保存しておく技術だ。
普段の魔法のように1発で呼び出せる。
忙しい戦闘時にも安心!
命のやり取りをしている戦闘時って殆ど考える時間がなくてたいていはパッと使えて何とかなるものに頼りがちになる。
それはもちろん動けなかったら最悪で一方的にやられるからだ。
私は"止眼"でごまかしているが限度はある。
新しいやり方でより多くの幅で相手に攻め入れるならばこれほど便利なことはない。
他にもアレとかソレとか『ストックセーブ』しておこう。
「はーい、もう大丈夫だよ、上に乗っけてね」
「はーい!」
みんながさらにゴミをかさねて行く。
また溜まったら圧縮して場所を確保しようかな。
『ローズ? ちょっと来てくれるかしら』
『うん? わかった』
ユウレンから"以心伝心"で念話が来た。
場所を教えてもらって空魔法でワープした。




