八十五A生目 溶解
私達は戦利品確認しつつ"小神罪"解除して傷のチェック。
冒険者は戦っている間も何かとれないかよく見ているので割りとポッケに入っている。
しかし今回はそんな多少の利益はどうでも良くなるほどの古代神の一部が転がっているのだが。
「やりましたー! 勝ちましたよ本当に! 何度も駄目かと思いましたよ! 最後キレイに決まりました!」
「ああ……まったく、まさかあんな面倒な力を持っているとはな」
「あ、肋骨折れてるよ!?」
「ええっ!?」
「1、2本折れただけだ……これなら戦える」
試しに医療AI魔法つかったけどみんなボロッボロでひどいな!
とりあえず治療する。
さて目下の問題はこの盾だ。
[溶壊神の鱗 溶解を司った神の持つ鱗が概念として形成され1つの盾のようになった。本物は既に全て溶解している。
熔壊神はあらゆるものがくっつかず壊れぬことに不便さを覚えた。ソレはゴミの山を生み出すのと同じだからだ。死があるのならその死は壊れ溶け合いなくならねば、世界は死で埋まる。もう一度再生をするために、溶壊させる概念を振るい世界に毒をもたらした。毒とはすなわち、世界の薬なのだ。
盾としての機能のほか相手に溶壊毒を押し付ける。持ち手に毒への耐性が必要]
毒を生み出す盾……か。
自分達のものになったおかげで詳細がわかった。
後たまに出てくるこの語りなんなんだろう。
もちろん私がこれを看破したということなんだろうけれど。
おそらくは物語がある物に対して看破すると読めるものなのだろう。
私のスキルなのになんだか不思議だなあ。
……ああいや今考えてわかった。
私のスキル同士が繋がって教えてくれた。
"言葉を超える教師"が音無き声を翻訳し。
"獣の賢者"が語り紡がれた過去を整えているのだ。
つまるところ真実であると見ていいだろう。
「ほう、治るのか。金は?」
「いや、今回は戦闘中の被弾って扱いだから良いよ」
「チームでもないのによくやる……足元を掬われるなよ」
「意外と優しい?」
嫌〜そうな顔をされてしまった。
まあからかうのは軽くにしておこう。
なにせ盾のほうがだいじだから。
「この盾なんだけど……どうしようか?」
「立派でキレイですねえ……裏はちょっと見たくないですけれど」
「盾か。俺は使い道がないな。そもそも明らかに厄物だろうそれは。俺はもう既に厄物抱えているのに、さらに爆弾はいらん」
「ああもしかきて、あの途中で掲げていた指輪? 指輪にしては大きかったけれど」
クライブはまたマントの裏から指輪を取り出す。
うんやっぱでかい。
腕輪って言われたほうが納得するが構造は明らかに指輪だ。
「巨人神の指輪だ。扱うものに力を与えるか……耐えきれず死ぬかと言われている」
はいはい"観察"。
[旧き王の指輪 人間の物より大きな指輪。使用者の力を限界を超えて引き出し、魂の力をまとわせるため、どのような相手にも攻撃が当たる。
元々は人の身の者が身につけていた小さな指輪。人の身でありながら神を狩り神となったその者は1つの王となる。王は人の時間を遥かに超えて過ごし成長が止まらず、また指輪も変質して共に成長した。王と指輪はとある時に別れたが、指輪はいまだ再びつけてもらえる事を望んでいる]
なんとも物悲しい雰囲気にさせる。
多分元々はただの物だったのに成長して自我が出ちゃったのかな。
あとなんで死ぬかは力を引き出しすぎているからなのか。
付与ではなかったらしい。
「その指輪、少し意思あるみたいだよ。指をハメてくれるニンゲンをまだ探しているみたい。それと、力を与えるんじゃなくて引き出しているから、本人がその引き出す力が限界超えちゃうと死んじゃうみたい」
「……知りたくない情報が増えたな」
クライブはすごく渋そうな顔をした。
まあ知りたくなくとも知るべきことではある。
「盾はお前たちが持てよ。俺はもう厄物は結構だからな」
「やっぱりそうなるかあ……」
「そもそも俺は盾は使わん。剣で切り払ったほうが早い」
「すごい豪胆ですねえ……剣を片手で扱っていましたし、そのぐらいできるのはわかりますが」
「それじゃあ遠慮なく。ちょっとツテはあるし」
魔王フォウに渡そう。
彼ならば何か知っているだろう。
さてあとは……
「後で王城に集合だ。正装はするなよ、冒険者として来い」
「……え?」
「当たり前だろうが。あんなもの、簡単にエリアや、王都民を危険に晒せる力があった。報告をあげるぞ。冒険者ギルドだけに任せていたら、こういう件の動きは鈍くなる。権力者どの尻を叩いて、危機感を煽りに行く。行くぞ」
「ええっ……!?」
なんだか嫌な感覚が!
大丈夫なのかこれは!?