八十三A生目 神器
毒の奔流が収まり代わりに蠢くように毒が蒸発していく。
それが生きているかのように進みまとまっていった。
「何が起こっているんだ……?」
「よくわからないけれど、とっても危険なことだけはわかりますよ……!」
「うわっ、見て!」
私が思わず唸ったのは相手の生命力を見てしまったから。
治った……!
今までは治らなかったのになぜ!
そうして収まったところで私達は息を飲み見上げるはめになる。
「まさか、この土壇場で、力のつかいこなし方を……覚えた!?」
私たちはその明るい赤で出来上がった新生ムゲンドクを見上げていた。
全回復したあげく全身の姿は異様だった。
私のような頭にクライブのような腕。
ローズクオーツのような身体をもっている。
その他にも似たことのないことがあった……
「キメラの化物か? なんとも悪趣味な姿になったな」
「なんだか最初より大きくなっていませんか!?」
「気をつけて、なぜか生命力が全回復している!」
「何?」「えっ!?」
ふたりとも私の方を振り向いてから敵を改めて見る。
まさしく元気なままだ。
これは……私もやることやったほうがいいかもしれない。
さらにムゲンドクの中から何かが湧き出る。
それはまるで小さな盾。
しかし表面は見たことのないほどに美しく磨き抜かれ……
くるりと回った裏側は脈をうつように毒々しい赤色をしていた。
ムゲンドクはその盾を胸の位置に配置する。
さて……"観察"!
[溶壊神の鱗 溶壊神と呼ばれた古代神が持っていた鱗が、朽ちぬ想いが概念となり盾のようになっている。詳細不明]
「何かが出てきたが、どうみても危険だな」
「うーん、厄いっぽい」
私達は跳んで相手の8つくらいある拳を避けながら盾を見る。
どうみても厄い。
「仕掛けます!」
「俺に合わせろ」
ローズクオーツとクライブがタイミングをあわせ一気に前に出る。
そうして炎タックルや剣を振るおうとして……
そのまますり抜けた!
「えっ!?」
「なんだ? まるで霧のように……」
「わっ!」
そして霧のようになった部位がふたたび集まり当然のようにローズクオーツを殴り飛ばした。
直撃していないから大したダメージではないもののえげつない。
向こうの攻撃だけ当たるじゃん!
「ずるですよずる!」
「普通にやっていてはラチがあかないな……」
「生命力も全回復したし……私もちょっと対策を!」
"小神罪"だ!
神が神を撃つための法。
対召喚悪魔戦で私に相手が駆けてきた様々な法則。
あれを神相手には条件次第でやれる。
今回は……!
「無限快活への罪を! 回復、禁止!」
空間がまるで開くかのような不思議な感覚に襲われた後……
全員にふわりと光が一瞬のった。
「何をした!?」
「相手の回復を封じました! まあ、こっちも少ししか回復できなくなりましたが!」
「なるほど、短期決戦だな」
これで双方の回復を封じた。
かなり危険だとは思うが同時に向こうも追い詰められている。
さっきみたいに分離しないのならあとは明確な部分を殴るだけだが……
クライブはマントの内側から1つの指輪を出す。
いや指輪……?
メチャクチャ大きいんだけど。
形は確かに指輪だがニンゲンの腕が入るかもしれない。
それを掲げクライブは宝石部分を輝かせる。
クライブはその光に身を浴びさせると全身から凄まじいオーラを発しだした。
空気が揺れるような錯覚。
「この姿なら、斬れないものも斬れる。ただ、時間は短いがな」
今のが神器か……!
そしてローズクオーツが攻撃を防ぎながら材料を取り出す。
錬金か!
「錬金学的に相手に攻撃を当てれるようにします! ええと足りないピースは……」
ローズクオーツは目線を彷徨わせて。
そこらへんにあったローズクオーツを貫いたつのトゲを見つける。
「これだっ! 相手は攻撃するときにこちらにダメージを与えてきました。だから、実質同位体のもので識別共鳴すれば……!」
錬金が終わりローズクオーツが炎だったのが今度は毒々しい姿となる。
とは言え頭の炎が毒のギザギザになって。
体の色が紫カラーになった程度だが。
「ローズオーラさま、これを受け取って!」
「えっ、あっ、はい?」
ローズクオーツから一見して毒々しい力がとんでくる。
素直に受け取ると私の体を一種淡い輝きと共に包んで。
不思議と嫌な気のしないかおりを残して消えた。
「今のは?」
「これでこの敵に攻撃があたります! やってやりましょうー!」
「おお、ナイス!」
私は早速目の前に迫る拳を避けたあとイバラで叩く。
剣ゼロエネミーも盾のところに向かわせた。
それぞれの1発が……たしかに当たった感触!