七十四A生目 十字
ローズクオーツにこちらの説明をして今度は向こうの説明を始めてくれた。
「俺たちは、サザンクロスの花。今5人ここにいるけれど、一応メンバーとしては30人ほどかな。そんで俺が一応リーダーをはらせてもらっている」
名前もそれぞれ受け取る。
5人ともくたくたそうだがひとりが特に厳しそう。
「簡易手当しますね」
「どうか、よろしく頼む。こっちも、これ以上粘らずに済むならいろいろ在庫を解放出来るからな」
「帰りは転移で帰りますよー!」
「おお!」
「ありがてえ!」
「やったぁ!」
「はぁ、帰れる……」
口々に『サザンクロスの花』たちが疲労を口にしながらたたむ準備をする。
そっちはローズクオーツに目で任せつつ私自身はキャンプ内で寝ているひとりに向かった。
そのひとりは私がいるのにも気づかず床に伏せている。
「そいつは俺たちを庇って動いていたから、モロに魔物の攻撃をくらっちまってな。手持ちの解毒薬じゃあ、うまく作用しきれなかったらしく、今もこんなんなんだ」
「あの道中にあった、ヘドロ毒の使い手かな」
「ああ。あれだけ強ければ、新たな2つ名がつくだろうな。ここらへんでは見たこともないやつだったし」
「その魔物の情報も、ローズクオーツに詳しく教えておいてもらえますか?」
「もちろんっ」
さてヘドロ毒におかされたわけか……
服が武具なくて簡易なものを着ているのはそのせいか。
多分きれいにするのに苦労したのか毒のぬぐった跡があちこちみられる。
基本的な清浄化させる魔法をためしに使ってみる。
……ああやっぱり弾かれた。
毒のほうが強い。
あくまでこの魔法は一般的な汚れを取る魔法だ。
ホルヴィロスによると雑菌もとれないらしい。
なぜなら使う側が雑菌という汚れへの理解に使う側が不足しているから。
どれが雑菌でどれが必須の菌かわからないもんね目で見て。
少なくとも顕微鏡がいる。
そしてもうひとつ……相手からのダメージ類だ。
浄化の生活魔法はうっかり皮膚ごと剥ぎ取らない優しい魔法だから生活魔法なのであって当然とても弱い魔法になる。
そうなると相手からのダメージは大半強い力が込められていて……
残り香とはいえ対抗するのは困難を極める。
ふむ……いつものようにぱぱっと軽く復調してもいいけれどここは。
例の新魔法使ってみようか。
「医療補助魔法オン」
短い唱え言葉ですぐに発動。
私の周りに淡い輝きが過ぎ去り瞳にきらめきが宿る。
そして視界にざっと初期セットが行われるさまが流れる。
まだ色々剥き出しながらしっかり起動した。
最後にログインコード代わりに私の魔力パターンを認証させログイン。
『正常なアクセスコード承認。おはようございます、基本機能Aを自動実行します』
女性のなんちゃって合成音声が流れる。
実は中身の声はホルヴィロスだ。
ホルヴィロスの声を何パターンか重ね合わせ魔法的に声を変質させたものを扱っている。
ホルヴィロスの声は低いからね。
大型犬ではないけれどそんな感じ。
合成音声は落ち着いた音色で脳内に響く。
『患者の自動診断結果は?』
『検知完了。対象は疲労と毒汚染からなる長期的な悪化で体温38.5度。詳細なデータは医療機関に提出するためにまとめてあります。対処法は、まず患部の観察をします』
私の視界にいくつもの光が発生する。
人体に沿った部分でいくつか輝きを出した。
そこに合わせて服を脱がす。
『患部を適切な手段で拭います。布に、油、解毒剤──』
その場に用意されていたもので必要品を読み上げられちゃちゃっと配合。
それを布に染み込ませてそっと拭う。
結果的に界面活性剤かのような働きをしつつ肌を保護して解毒を行う布が出来た。
最終的にそこを配合した液につけた布をはって浸透させる。
これで少しは対処できた。
『次は肉体の中に残っている毒を解毒します。アンチポイズンでは取り切れず再発の可能性が高いようです。リフレッシュで症状の緩和が期待されます』
『リフレッシュを使用』
『選択承認。リフレッシュを使うさいの補助視野を展開、指示に従って適切に魔法を使ってください。患者の状態に対する適切なイメージングが重要です』
視界に患者の状態が詳細に表示され同時に指示文が羅列される。
難しいことや私ができないことは書いていない。
学習させたからね。
補助を受けながらやっていくと適切だったのか魔力のゴリ押しで光魔法"リフレッシュ"をせずにすんなり通った。
狭い隙間にぬるりと入り込んだかのようだ。
患者の息が落ち着いてきた当たりでフロー完了と表示される。
うん……試作だとこんな感じで無機質だけれど実際はデカデカと表示してそれらしい音も鳴らそうか。
達成感ありそうだし。