六十七A生目 理屈
「ぬおおおー! 逃げるなー!」
「逃げるよ当然!」
「何!? 話せたのか!? というか待てっ! くっ! このっ!」
追いかけっこは森の中。
私は彼に追いつかれればまた能力付与で痛み分けに寄る一方的なダメージを負う。
文字にすると理不尽すぎるな……
だから私は葉を蹴りツタを掴んで遠くへ自分の身を吹き飛ばす。
相手は燃えているツタを使いどんどん先回りしてこようとしていた。
やっぱ地の利そのものは向こうにあるか……
「はあぁっ!」
「なんだ!? さっきの刃か!?」
剣ゼロエネミーが猛烈に回転しながら飛んでいきアチャカリを切り裂く。
だが浅い! かったいなこいつ!
知ってた! 木は剣ではやりにくいよね。
剣ゼロエネミーの形を変えながらその隙間を魔法爆撃で埋める。
土魔法"アースレイン"で砂利を大量に降らして妨害。
"ストーンフォール"により真上から突如岩を降らして着地の瞬間を狩る。
「おわあっ!? 危なっ!?」
悲鳴が響く。
ただ動きは止まっていない。
時間を稼げただけだ。
ただゼロエネミーは今や肉厚の刃と化した。
言うなれば……
斧ゼロエネミーだ!
斧ゼロエネミーは溜めるようしてから思いっきり振りかぶる。
その動きは空気抵抗による鈍重さはあるが。
「させるかっ」
アチャカリは燃えるツルで絡め取ってしまおうとする。
――それを斧ゼロエネミーは意に介さずちぎり飛ばした!
「なっ!? ぐわっ!?」
そのまま鋭くアチャカリの胴へスイングされる。
強烈無慈悲な1撃。
しかし痛み分けの効果は働いていない。
アチャカリが吹き飛んだのを目視したあと私は距離を遠くにおきつつさらにタメていた魔法を用意する。
火魔法"エクスプロージF"と"フレイムバード"!
相手の周囲に大爆発が起きて炎に包まれ……
火で出来た鳥たちが青い炎の羽根を落としながらどんどん強く大きくなっていく。
ちょうど最大級の熱量がこもり小鳥が猛禽に育った時。
アチャカリをくらい尽くすかのように襲い燃えた!
「うぐわああおぁ!?」
よしきいた。
相手の組み合わせ技的に火自体には普通かまたはよく効くはずだと踏んだのだ。
しっかり一瞬の業火に包まれそのあとプスプス言いながら黒煙を上げ立ち尽くしている。
火も消えてしまっているがすぐに復活するなありゃ。
だがさらに距離は稼げる。
「くそっ! 逃さねえぞ! どこにいるかはわかってるんだ!」
どうやら向こうは探知系もしっかりしているらしく振り切れていない。
多分視界依存じゃないんだろうなあ。
生体感知かな。
もちろんさらに斧ゼロエネミーが追撃をかけるが。
「おっと! 良ければいいんだろう!?」
横薙ぎをなんと身軽にツタを使ってジャンプし回避。
アチャカリは連撃を避けつつこちらに迫ってきていた。
慣れが早いな……
どうしても速度が落としにくい。
さすがに慣れてるなあ。
私は全力で逃げ回りアチャカリは妨害を無理やり突破していく。
ただ1連の行動で3割ほど削れたからこのまま行けるんじゃないかな?
「おらぁっ! 追いつくぞ!」
なんて考えていたのがよくなかったらしい。
アチャカリは炎をジェット噴射シながら一気にこちらへ飛び込んてきた。
はっや!
「一瞬でこの距離を!?」
「もう逃さねえ!」
もはやツルすら伸ばしてこない。
私の目の前にやってきたアチャカリは自身から光を強く発して……
これはまずい!
「自爆だああああぁぁ!!」
「自爆わーっ!?」
距離が狭まった時自動的に痛み分けのリンクが入る。
そして近距離での大爆発。
瞬時に空魔法"ミニワープ"で逃げはしたが……
「カハッ、うぐ」
くっ、今自爆分は痛みわけが入った……!
直接喰らうよりもダメージが大きいかもしれない。
血がはくわかではないが気持ちだけは同じように内臓から息が絞り出された。
再度痛み分けのラインは途切れた。
私はゴリっと半分になった生命力を回復させつつアチャカリの様子をうかがう。
どうやら向こうも大技で反動大きく吹き飛んだようだ。
私は怯んではないからドンドン攻めさせねば。
斧ゼロエネミーで"回転斬り"を振り抜いたり。
何度も魔法で爆破させる。
「くっ、ぬおおおぅ、まさかまだ倒せてないか! この自爆魂、敗北するわけには!」
「迷惑すぎる魂じゃん!」
「オレを侮辱するなっ、オレは最強になる……!」
謎の信念をかかげながらまたロケットのように噴出しながら飛んだ。
おかしいさっきは見逃すほどに早かったのに……
つまり早さに理屈がある。
こやつがロマンと強敵を求めるタイプなのはよくわかる。
こんなにピンチになっても引く気がゼロだもんな。