六十A生目 神龍
ノーツに神使の石をもたせた。
さらにノーツは神の依頼の1つを任せることにした。
ぶっちゃけ私向きではないとか私がやらんでもいいってやつは多く有る。
ノーツと私が転移した先でまちうけるのは珍しく神がそのままその場にいた。
それは正面の視界を覆う青緑。
龍鱗にツノそして……うごめく胴体。
蛇のようなそれは長く同時に蛇ではありえないほど巨大で。
威圧さと手足がしっかりありその威厳はまさしく……
「龍……」
「いかにも、小さき神と……ほう、鉄の絡繰りか? いや、この感覚は、鉄の人と呼べばよいかの?」
「わたしはノーツ。当機は制作者ローズオーラの推薦で随伴。こちらがローズオーラ」
「よろしくお願いします」
「うむ、あいわかった」
どうやらノーツに意思があるとすぐ読み切ったらしい。
さすがに立派なひげをなびかせているだけある。
「今日はこちらのノーツが依頼を受けます。よろしかったですか?」
「ああ、勝手に情報をもらさなければ、問題はないのう」
「了解。情報を暗号化処理しシークレット化」
「うむ、なんとなく把握した。助かる。では依頼の方は……書いてあった通り、登竜門の試練の『てすとぷれい』じゃ」
登竜門というのは元々は激しい滝のもとに集うたくさんの鯉たちが遡上してごく一部だけ龍になれるという伝説から来ている。
が……ここでいうそれはそういう話じゃない。
たとえ話というよりはむしろそのまんまである。
「たしか、あなたの出す力量測り的に困難な試練を突破すれば、神に……というかあなたに選ばれて、龍の力の一部を授かる栄光をたまわう、つまるところ神使になれるってわけですよね」
「うむ。ぶっちゃけ話、儂の力背負って、儂の力になれるやつの見極めじゃ。まあ、入信試験じゃの」
入社試験みたいに言っちゃったよ。
まあ事実なんだろうけどさ!
実際私も客員に『入ってくださいお願いします』ってコネ使いまくって入社させる会社立ち上げ時のベンチャーと同じ動きだけどさ!
誰が零細ベンチャー社長じゃい。
「それでなぜ今更試験の見直しを?」
「試験は、外の季節が5つ巡るころに毎度行っておる。だが年々達成者が少なくなっていてな……ついには前回、達成者がゼロを記録したのじゃ。さすがにマズイと思っての、おそらく試験の内容が過酷すぎるか、強者の興味を引けなかったのだろうと」
「えっ、参加者が極端に減っているとかではなく!?」
「うーむ、ニンゲンたちによると、国技の側面もあるそうじゃから、たしかに緩やかに下降はしているが、極端な減少はしておらんのう」
「え、国技なんだ……試練が……」
「うむ、参加するのはニンゲンだかではないが、成人の儀などと称して多くのものが参加するな。とはいえ、参加者の年齢は幅広いがのう。あ、ほかの国からも人を募っているんだったかの? どうも国なるものは多く変わりすぎて、儂にはよくわからん」
うんそれもしかして数年に1回の世界的スポーツ選手権の原型なんじゃあ……
だとしたらもしかしたら歴史が数十世紀あるかもなぁ。
しかし聞いていた試練とイメージが一致しないなあ。
「細かいことはともかくとして、試験そのものは戦闘と過酷な運動なんですよね? 確かそう記載がありました」
「そうじゃな。最初は様々な分野から様々な力を示してもらう。それ自体は儂は見守るだけで、主導はしないのう。そこでふるい落しを行った後、儂の前まで来る、登竜門への旅路を駆けることとなる。じゃが……まさか、最終関門にすら誰もたどり着かないとは思わなかったのじゃ。さすがに儂も時代の『にぃず』というものを読み違え、現代のものが得意とする方向でないことはわかった。儂、最終試練御前試合を楽しみにしとるのに……」
「そうだったんですね……その、前回の1回だけ特殊とかでは?」
「いやそれがのう、もはやここ数回、ここまで来るメンツはほとんど同じで、それまではそんなことはなかったから悩んではおったんじゃよ。そいつらすら、やがて数を減らし……そう、老化というやつで、みないなくなってしもうた。最も優秀な者たちは、すでに儂の神使として各地を修行の旅に回っておるしのう」
「ああ、あ〜……」
そ、それはどうしようもない……
10回開けば50年だ。
ニンゲンはこの世界なら初出場から数えて寿命がきてもおかしくない年齢となる。
むしろそんな生涯現役みたいなメンツが貼り続けてたんだなあ……愛されているなあ。
ソレだけ愛されても選ばれなかったのかわいそうだなあ……
だのと考えていたら思っていたことを読まれたらしい。
「儂も嫌がらせで力を渡してないわけではないんじゃよ? ただちょっと熱狂的すぎて怖いやつはのう……儂の力を傘に来て何するかわからんし……」
至極真っ当な話だった。