五十二A生目 本来
「うおっ……うわっ……ぐおお……」
「ジャグナー、別に揺れないでしょ?」
「だがよお、気持ちは分かるだろ!?」
「まあ、それはな」
私達は銃弾の数百倍は危なそうな光線飛び交う中凄まじい速度で飛んでいく。
気分だけはジェットコースターだが宇宙なのでGがかかんないのよね。
景色はめまぐるしく変わる。
なにせかいくぐって移動しているから……
「良く移動できるな……!?」
『安全に目的地まで運ぶッスよ〜それ!』
グルグルと動いていく。
景色の移動は凄まじいが攻撃はかすりもしないしほんと何もせず身を任せるのみだ。
やがて私達は1つの敵側巨大神の近くへやってくる。
あの……ここってさっき重力の分神って聞いたところなんですが?
「え、まさかここに突入するんじゃ……」
『いくッスよー! 目指せ大金星1点狙い! 歩兵が取るのは王ッス!』
「「ええぇー!?」」
私達の是非もきかず……いやここまで1つも聞いてくれないがきかず。
私達は珠にまとわりつく竜の元へと凄まじい速度で突撃させられた。
近づくほどにわかる敵の巨大さと私達のぶっとんだ速度。
もはや向こうは月くらいあるんじゃないの?
地表に近づくにつれ見えなかった構造も少しすまつ明らかになってくる。
生物に例えると平らに見える皮膚が実は毛穴と汗の出る部分と細胞のつなぎ合わせでデコボコしているのと同じだ。
鱗のような質感がある硬質表面と理解の難しい結界じみた膜。
『攻撃や防御をしてたくさんの小型分裂体を生み出す時点で、絶対穴はあるッス。ほうら、見つけたッス!』
私達がバカみたいな速度で突っ込んでいくのに恐れおののいている間に穴を見つけたらしい。
くるりと一瞬別方向に飛んだ後そのまま改めて重力の分神に突っ込む。
そこには巧妙な構造で隠された構築の隙間と隙間。
本来神の戦い同士では全く持って意味のない僅かな隙間だった。
私達はその構造の隙間にこの身を突撃させられていった……
「うおおおっ、ぐっ」
「ゆれ、揺れるっ」
「落ちるーっ!」
『もう少しで到着するッス! 我慢するッスよ!』
その励ましの心はありがたいが運転は速度重視なので荒い。
あちこちの構造物1つ1つスレスレを縫うように飛んでいく。
なんでもない切れ端や柱の1本が私達にとってはそびえ立つ壁にしか感じられない。
当たればメチャクチャ痛いだろう。
さらにGがかかるようになってきた。
空気抵抗はないあたり空気はないものの重力はあるらしい。
やがてフワッといきなりGが緩んだ時特有の感覚が襲う。
一気に減速したので。
「げっ」
「おえっ」
「うっ」
今までは外側のちからに耐えていた。
そして今は口から内臓全部飛び出そうなアノ独特の感覚に耐えるハメになる。
ただこれが来たということは……
『とーちゃくッス! というより、ここからは歩いて向かって貰わないと、抵抗されて危ねえッス』
私達は最後ふわりと着地することが出来た。
なお着地時全員体勢を崩して、一瞬倒れたが。
休ませて欲しい!
ただ全員それどころではないのはわかっていて体を起こす。
遠くから高速で何かが迫る音。
体内に潜入してきたウイルスは……免疫機能が発見してくるわけだ。
「来るッス! 示すルートを通って、中央近道して敵をなぎ倒していって欲しいッス!」
視界に軽く矢印みたいなのが表示された。
あっちかな。
思いっきり敵が来る方だけれど。
「主、ここは我々が!」
「よし、やるか!」
アヅキとジャグナーが前に出る。
そして来た相手はたくさんのドローンじみた球体。
目のところから光線を放とうと構えている。
[グラビラド(分神)(自動迎撃分裂体) Lv.1 比較:練習相手]
[グラビラド(自動迎撃分裂体) グラビラドという神の力のわずか一端を持った]
あっ弱い!
放たれたビームはふたりとも紙一重に避けた。
「おうっ!? はええな攻撃!」
「でも大したことはないようですよ」
『そうそう言い忘れていたんスけど……』
そのままジャグナーが拳を振るい……
アヅキが暗い光を翼に纏い。
「「はあっ!」」
『惑星圏外ッスから、神の力の縛りがとけて真価が発揮されるんで、惑星内で強いだろう者なら、信じられないくらい力出るらしいッスよ?』
……ジャグナーの拳が敵をつき抜け破裂しその背後にいた範囲何匹かが余波で吹き飛んで壁に穴を開けて。
アヅキが放った闇の風が多数の敵が消し飛んだ。
「み、みんな強いね?」
「お、おう? なんだこの力……?」
「これが本来の主から承った力……なんということだ」
私がなんということだだよ。
全然知らない情報舞い込んできちゃったよ。