四十七A生目 酒乱
腹がたまりパイロンジュースをよく飲めば。
あと何が出来上がるかというと。
「「いえーい!」」
ダンス集団である。
私と弟のハックとインカ兄さんで踊る。
適当にその場でステップ踏み荒らしているだけでテンション上がるもんだ!
受信機から流れる試聴用のアップテンポな音楽に身を任せる。
「攻撃するときにさあ、同時に防御も完璧にしろっていわれるけれど、あれ無理じゃない? 踊りながら止まるぐらい無理だろ」
「旅の途中でもっと快適なライフを送れる一式とか揃えてもね、結局あんまり使わないんだよねぇ。まあたくさんあれこれ煮込む材料や鍋はともかく、結構現地調達が楽しみになっちゃうよね」
「今度さあ、本を出すことになったんだけれど、それが創作本で、つまるところ物語を文字に書き記したものなんだけれど、こういうとき難しいよねえ。絵にするとわかりやすい部分も文字だとなんとも、あと全部書いてもなんだかなあって」
なんかみんなそれぞれ別のこと話してない?
まあいいか!
「攻撃は確かにスキが大きくなるからね、ただスキ自体を敵を誘う釣りに使えるから、そのことを意識するのはだいじだよ。あと、防御は最大の攻撃。相手の攻撃を完全に弾くように防ぎつつその勢いで殴ったり、方向性はいろいろあるよ。魔法を交えてガードを固めて放つとかもいいよね」
「お姉ちゃんはいいけれど、やっぱり他のみんなには出してあげたほうがいいかも? それに、町で家みたいな生活より、外で家みたいな生活が出来たほうがぜいたくだからね、自重しないでいいときは、それで周りを喜ばそう!」
「小説ってやつか? 小説ではないが俺は立場上口伝書とか技術書は読むんだが、実用的な能力を伝えるために、セットで物語が……つまり何がどうなってここに繋がったか、ってのが書かれているんだ。よかったら今度見せるよ」
三人はそれでも会話が行える。
だてに三つ子のさんきょうだいではない。
意思疎通は間違いない。
そんなこんなで謎のだべりをしながら踊り明かして疲れたらまた肉を食べる。
うまいし平和だし……がんばってよかったなあ。
あそうだ。
「私って1つのことにあまり集中出来ないのが困ってるんだよねぇ……」
「同時にやれることが多すぎるんだよ妹は……」
「お姉ちゃん、なんでもやれるよねえ……冒険者らしいよ」
「そうかな? そうかもふふふ」
みんなで笑いあい言葉を重ねる。
私達3匹は今後もずっと笑いあえる。
そう信じられた。
あとなんかふたりからなんとなく神の気配を感じる……
いや神そのものじゃないんだけど。
もしかして今のパーティーで何かが変わった? わかんないや。
「ただいまー」
「おかえりローズ!」
私は自宅へ戻る。
どうやらホルヴィロスはホルヴィロスでほどよく月光を楽しみながら花の蜜を楽しんでいたらしい。
それを肴にアルコールを飲んでいた。
ホルヴィロスの肉体は植物で構成された小神だ。
さらに猛毒を本来持ちあらゆる毒を制している。
ぐでんぐでんに酔っ払うなど万に一つもなかった。
「ここで夜酒を?」
「うん。ローズは……ああ、今日は外で飲む日だっけ。施設内なら飲んでもいいもんね」
「そうだね、アノニマルースの自治法ではそうなっている」
さて私はずずいとホルヴィロスの側に座る。
ホルヴィロスは一瞬気をよくして。
そのあとに怪訝な尾のゆれをする。
「おや? え、な、なに?」
「ねえ、どうする? まだまだ夜は長いよ、酒がねたくさん飲むとさ、いい感じになるよねフフフ」
「な、何!?」
「ねぇねぇ、いい匂いしない? するよね、いいよね?」
私が迫るとホルヴィロスは目が素早く動き空を仰ぎ見る。
「……メチャクチャ酔ってる!」
ホルヴィロスが後ずさる。
私はそれにほぼノータイムで合わせた。
イタ吉に比べれば遅い。
「最近おとなしいと思っていたのに、まさか今日モードに入るだなんて心の準備がっ、噂には聞いていたけれど……!」
「ん? なんの話? ほーら、毛並みが乱れているよ? 丁寧に丁寧にていねいに……整えてあげないとねー!」
「ちょ、私は毒がっ、あ、分神の今とローズの耐性だとローズのほうが強い……いやそういう問題じゃなくて!」
「さあ……グルーミングさせろ!!」
私は勢いよくホルヴィロスに飛びかかる。
今日は1日楽しかったんだ!
このまま楽しみ切ってやるぞー!!
「ローズの、酔いグセ……グルーミング魔!! 思っていた私の理想の展開と違っ、わああぁぁぁーー!!」
部屋に響く1匹の悲鳴。
それを聞き届けるものはまさしく誰としていなかった。
これが休みの時間のフル活用というやつだー! わははははーー!!